第15章「愛の形」3
汚れた身体を拭いて、しばらく脱力した時を過ごし、身体が落ち着いてからシャワーを浴びて再び晶子はベッドに戻った。
「ちょっとは落ち着いた? まだ痛む?」
心配そうな視線を隆之介は向けた。
シャワーに向かうときに、ベッドシーツに付着していた赤いシミを見てしまったのだから尚更だった。
いつも通りの呼吸に戻った晶子は軽く頷きながら、もうその表情はいつもの笑顔だった。
その言葉に安心したのか。Tシャツに下着だけを着た二人はベッドの中で手を握った。
「ねぇ、エッチの最中、少しだけど、声がちゃんと出てなかった?」
晶子は聞かれていたことに恥ずかしさを覚えながら、言われたことに驚いている様子を浮かべた。
晶子自身、自分でもあまり実感がなかったのだ、それが声なのか何なのか。
「―――――僕、びっくりしたよ、何だか嬉しくて、余計に舞い上がって激しくしちゃってたと思う。―――ごめんね、晶ちゃんから零れる声が、少しでも聴けて、たまらなく嬉しかったから」
隆之介の心からの言葉に、晶子は思わず涙ぐんだ。
隆之介にとっては4年ぶりで、晶子にとっては震災後、初めてのことで、そのことに感傷を覚えないはずがなかったのだ。
切なさが込み上げて握る手により力が籠って、段々と実感を持って嬉しい気持ちが伝染して心に沁み行くような熱い感覚を覚えた。
「今日のことは、幻なんかじゃないって思いたいな……、晶ちゃんの身体のことは自分の事のように大切に想ってるから」
隆之介が愛おしそうに晶子の黒髪を撫でる。
こそばゆい感触を晶子は感じながら、自分のしたことは間違っていなかったと思えたのだった。




