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”小説”震災のピアニスト  作者: shiori


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第15章「愛の形」2

”愛欲と祝祭の夜”

 

 電気の付いていない、真っ暗なホテルの客室にあるベッドで、もぞもぞと二つの影が惹かれ合うように触れ合っていた。

 布の擦れる音と、唇押し付け合い、吸い付き合いながら発生する粘っこい水温と、艶めかしい男性の声。


 この状況だけで、まともな人間であれば何をしているか、どんな行為に夢中になっているのか容易に想像のいくものだった。


 最初は初体験の二人らしくたどたどしく確かめるように触れ合うが、徐々に慣れていくと、激しく熱を帯びた行為に変貌していく。


 生物として、人間として積み上げられた本能的欲求に導かれるように、その身を押し付け合って愛を確かめようとする営みを、二人もまた若くして重ねていた。



 晶子は声を出せないというハンデの中で、慣れていくと意思表示をするように自分から身体を求めていくようになった。

 強引に求めてしまうのには抵抗ありながらも、今日この時まで焦らされた時間を埋めるように、唇を押し付け、最愛の隆之介とのキスの味を深く刻み込むため唇に吸い付いていく。


 そんな晶子の積極的に求める欲情に対して、隆之介は抵抗することなく、自らも晶子の美貌に惹かれながら自制してきた欲望を受け入れていく。甘美までに刺激的な行為に没頭していく二人は、晶子の意思に委ねるまま舌を絡め、愛しいその身体の隅々まで欲するように求めていった。


「んっ……あふっ、うぅっんっっ……あぁん、ちゅ……ちゅ……んんっ……はぁ……あふっっ、ああんっ!」


 自制を続けて来たことへの反発か、我慢の限界とばかりに大胆なキスを交わした。

 静寂な部屋に隆之介の喘ぎ声が響き渡り、より興奮が高まっていく。


 待ちに待った時間の訪れに、過ぎ去る時の流れも忘れ無我夢中で耳たぶや首筋にも口づけする。

 自然と身体が反応にしていく驚きに負けじと、両者ともにさらなる快楽を欲しがって、強く舌と舌を絡ませ、熱い吐息を溢しながら唾液音がちゅぱちゅぱと鳴り響いた。


「んっ……はふっ、うぅっん、んんんっっ……ちゅ、あぁん! ちゅ……ちゅ……んんっ……、はぁ……あふっっああんっ!」


 止まらないキスの雨の中、晶子は隆之介のシャツのボタンを外していき、服を脱がして貪欲に素肌の感触を求めていった。

 直接肌に触れた欲求は隆之介にも伝染し、恥ずかしがる晶子の服も脱がしていき、下着姿を露にさせて、息を呑むほどに想像を超えた艶めかしい晶子の姿を晒させた。

 薄ピンク色のブラに包まれた成長期の乳房に手をやると晶子の表情がより劣情を滾らせるものへと変わる。


 声を出せないながらも、熱い吐息は隆之介まで届き、ブラのホックを外し開けて、直接膨らんだ胸に手をやる。その手指から伝わる新鮮な感触を確かめると、さらにその柔らかく確かな膨らみを通して、晶子の成長を隆之介は実感するのだった。



”私たち、ちょっとは大人に近づけたかな?”



 無邪気に微笑みかけてくれる昨日までの懐かしくも愛おしい晶子の言葉が隆之介の頭の中に流れた。



 眩しい光に包まれた晶子の笑顔が一緒に映し出され、罪を重ねていくような揺れ動く心情が脳内を震わせる。



 この先に行けば、その自然で純粋な晶子の笑顔も、幼さの残った部分も変わってしまうのでは……そんな予感に恐れる感情が沸々と湧き上がってくる。

 それでも、隆之介は男であろうと覚悟を決めて、胸の奥にやってくる喪失感を乗り越えようと、晶子の望むままに晶子を愛した。



「晶ちゃん! 晶ちゃん!!!!」



 昨日までの純粋そのものだった晶子の姿を忘れるために、いろんな晶子の姿を受け入れようと大きく声を上げながら、隆之介は晶子の身体を舐めるように触れていった。


 服も脱ぎ捨て、呼吸の乱れたまま、刺激的な部位を探しては、淫らな行為は続けられた。


「綺麗だよ、晶ちゃん。本当に……綺麗になった」


 敏感なところを触れるたびに身体を震わせて抵抗する晶子に愛おしさを覚えながら、ほとんど淫毛の生えそろっていない秘部に手を付けた。


「もう、濡れてる……ずっと期待してくれたんだね」


 一方的な言葉責めに晶子は屈しないように、口を抑えつけようと頭を上げて自分の口で隆之介の口を塞いだ。



 ”うん、好きでいてくれなきゃやだよ。

 私の事、忘れたりなんかしたら、もっとやだよ。

 だから、もっとキスしてっ!”



 一瞬、壊れていく感覚の中で別れの日にしたキスがフラッシュバックした気がした。

 まだ未成熟な少女そのものだったあの頃の姿と、成長し色気の含んだ現在の晶子とが重なって映った。


 こうして記憶していた言葉を、声を思い出すことで、無意識に隆之介は晶子の心情を理解しようとしていた。


「んんんんんっっっ……。はぅ……ちゅ、ちゅっ……んんっ、んんんっ、ぁつつぅぅーーー」


 キスで身体に力が入る中、隆之介は人差し指を晶子の中に入れた。

 

 狭い中に指が入るとギュッと圧迫してくるように締め付けられるが、さらにそのまま奥を目指して進むと、晶子は口を放して、異物感に顔を歪めた。


「―――――――っっっ」


 中から締め付けてくる圧迫感の続くが、そのまま指の抜き差しを続けた。徐々にその挿入が粘っこい粘液で容易なものになっていくほどに、ヌルヌルとした粘液に人差し指が濡れていくと、息が荒くなった晶子から快感が宿ったと分かる喘ぎ声が僅かに漏れ始めた。


「晶ちゃんのそういう顔も可愛いよ」


 遠慮のない隆之介の恥ずかしい言葉に、晶子は顔を真っ赤にして首をブルブル振りながら、快感に震える身体にぐっと堪えようと我慢した。


 まるで恥ずかしくて声を上げるのを堪えるような晶子の仕草に隆之介は興奮を覚え、抜き差しを続ける指が止まるどころか、激しさを増していった。

 くちゅくちゅと水温が零れるベッドの上で、そのまま意識が真っ白になるほどに晶子は快感に上り昇り詰めていった。


「――――――――っっっっっ!!!!!!!!」


 声にならない声を震わせながら、ビクンビクンと身体を震わせながら晶子の身体が脱力していった。


「……大丈夫?」


 行為に夢中になっていた隆之介は、落ち着きを取り戻しながら聞いた。


 晶子は息も絶え絶えに慌てながら頷いた。


 少し小休止してから、晶子が隆之介の乳首に口を付け吸い付きながら、下腹部に手を伸ばして、すでに勃起した生殖器を扱いていた。


 晶子にされるがままに快楽に導かれていく隆之介を一度、満足させた後、隆之介は晶子の足を開いて、呼吸を整えながら身体を密着させた。


「……本当にいいんだよね?」


 すでに覚悟を決めた隆之介の言葉に晶子は頷いた。


「力を抜いて、痛かったらやめてくれていいから。―――いくよ」


 若い二人は緊張しながらも、大人の階段を昇ろうと、濡れた秘部に向けて股間から未だ勃起したものを押し入れていった。


 想像以上に乱れる晶子の姿に抑えられない興奮を覚えながら、真っ直ぐに突き入れていく。


「―――――――っっっぁぁっっ!!!!!!!」


 メリメリと身体を引き裂くような衝撃と痛みを覚えながら、ギュッとシーツを握りしめて、晶子は必死に隆之介を受け入れようと堪えた。


 強烈な異物感に悲痛な表情を浮かべる晶子、隆之介は晶子を見つめながら、”彼女を自分は愛していると”強く念じた。そうしなければ、声も出せない少女に酷いことをしているような罪悪感に押しつぶされてしまいそうだった。


 行為が激しくなり、痛みだけではない、内からやってくる違和感のような快感を、晶子は少しずつ感じながら、喉奥から喘ぎ声が、音を僅かに奏でていく。


「晶ちゃん!!! 晶ちゃん!!! 気持ちいいよ!! 感じてるよね? 本当に僕たち、一つになれてるよね? 痛くしてゴメン!! でも、最後までするって一緒に決めたからっ!! あとちょっとだからっっ! 我慢してっっ!!」


 身体が繋がったまま、少しでも晶子の痛みが和らぐようにと隆之介は必死に言葉を掛けながら、抜いては挿入してを幾度も繰り返し、感じたことのない快感に酔いしれていく。


「―――――――っっっぁぁんんんんっっ!!!!!」


「好きだっ!! 晶ちゃんっっ!! 大好きだよっっ!! こんな僕をずっと待っていてくれて嬉しかったよっ!! もう一度、キスをが出来て幸せだよっ!! 昔よりもずっと大人っぽくなって、綺麗になった晶ちゃんに再会できて、こんなに幸せな事なんてなかったよっ!!!」


 切なさが込み上げてくるような甘美な言葉を浴びて、晶子は懸命に隆之介の身体を受け入れようと痛みと快感に堪えた。


 自然と涙が込み上げてくる激情の中、電流が走るかのように、言葉一つ一つが痛みを快感に変えて、確かな愛情へと激しい性行為を美化させていく。


「あああぁぁ!!! はぁぁっはぁっ!! もうっ、また来るよっっ!! 晶ちゃんっっ!! ありがとうっっ!! 抱いてほしいって言ってくれてっっ!! 本当に、嬉しいんだよっ!!! だから、いっぱいこのまま感じてっ!!!」


 電流が身体を包むように、ひと際大きく身体が震えて、限界への訪れを告げた。


 暗い室内の中で、白い白濁液が勢いよく吐き出され、汗ばんだ晶子の白い肌を汚していった。



「――――――――っっっっぁぁあぁあぁんん、んっっっ!!!!!!!!」



 口を大きく開いて、晶子の身体がビクンビクンと大きく震えた。


「んんんんんっっ!! んぅぅ……、ぁぁうううぅ……ぅぅぅ……、ぅぅ……あぅぅっ」


 絶頂に震え、夢か現か、その境界が曖昧になる中、晶子のその口からは、喉の奥深くから発せられた”確かな声が音と”なって零れていた。


 何もかも初めて尽くしの二人の行為は確かな余韻を残しながら、一つの終わりを迎えた。

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