第10章「色褪せた思い出の続きへ」2
それから一か月、来る日も来る日も腕が疲労を訴えかけるまで練習の日々が続いた。
私は自分で決めた通り、学校にも通った。
大変な震災を経験しながら、私も含め、人々は少しずつ日常へと戻っていっていた。
学校に通い始めた人、県外で暮らす人、仮設住宅に暮らす人、不安を抱えながら修繕した自宅に暮らす人、仕事を見つけて働きに出る人、その暮らしはさまざまでありながらも、復興を望む気持ちはだれもが同じだった。
帰らぬ人となった人の分も生きることは大変で、余震のたびにあの日の恐怖が蘇ってきたり、亡くなってしまった大切な人のことを想って心が張り裂けそうな不安に襲われながらも、人は前へ進もうと足掻くことを止めなかった。
私もまた、足搔き続けることにした。誰かの為という以上に、自分のために。
ピアノから逃げることなく、両親の死からも逃げることなく、ただ、今自分に出来ることを見つけ、歩いていくことにした。
声を出して自分の気持ちを伝えられない私がクラスに溶け込むのは容易ではなかったけど、懐かしいクラスメイトとの再会を果たしたり、少しずつコミュニケーションを取れる相手も出来ていった。
中には中学や高校が一緒だった子もいたから、その子には親切にしてもらい、なんとか不安なく暮らしていけそうだった。
昼間は学校、放課後はピアノレッスンとピアノコンクールに向けての計画と練習。
ピアノコンクールに向けた準備を始めるのが遅かった私にはやらねばならないことが山ほどあって、ブランクを埋めるだけでも毎日を忙殺されるままに過ごしていると、自信がついて確かな感覚を掴み始める頃には、あっという間にピアノコンクール予選が間近に近づいていた。
そして、再び音楽と学園生活を取り戻した一か月間の時を充実した中で過ごし、いよいよピアノコンクール予選当日を迎えた。




