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媚薬の恋 一途な恋  作者: 万実
17/40

帰り道

帰途についた私たち。


アレクは鼻歌を口ずさみ、今にもスキップをしそうな程、陽気で上機嫌だ。

何がそんなに楽しいのだろう?


「アレク、ご機嫌だね」


「そうだよ。君と一緒だし、君の分身は胸にあるし、言うことないよね」


そう言ってアレクは微笑むと私の頭をワシャワシャと撫でた。


うわわ!私は犬かなにかですか?


髪を片手で整えながら、アレクを見上げると、少し眉を上げた彼はパチっとウインクをした。


うーん、ホントに変われば変わるもんだよね。まさか、アレクが鼻歌歌ってウインクするとか、誰が想像できるだろうか。


「アレク、この後の予定は?」


「学園内デート」


「ええっ!?」


「って言いたいところだけど、生徒会の仕事がまだ残っていてね。今日は生徒会室に缶詰めになりそうだ。ティアも手伝ってくれる?」


「もちろん、いいよ」


私は苦笑交じりに返事をした。


そういえば、朝からずっとデートしていたみたいなものだなと思ったから。


こうして手を繋ぎながら、話しをしたり笑ったり。

私は凄く楽しかった。


アレクも楽しかったのかな?


「ねえティア、今日のお昼は学園のカフェに行かない?」


「いいね!」


おお、学園のカフェかあ。

メニューが豊富でとても美味しい。


友達のジュリアとよくランチをしに行くんだ。

私は魚介パスタのペスカトーレが好きで良く注文するんだけどね。


「アレクは何が好きなの?」


「ペスカトーレかな」


「えっ、私もペスカトーレ大好きなの。好みがおんなじね」


「ん、知ってる」


あれ、まただ。

なぜ私の好みを知っている?


私は訝しげにアレクの顔を覗き込んだ。


「ねえアレク、あなたはなんで私の好みを知っているの?」


アレクは一瞬驚き、そして非常に真面目な顔をして答えた。


「ティア、再三言っているけど、僕を誰だと思ってるの?」


そして「君の事は全てお見通し」とか言ってケタケタと笑ってる。


ああ、真面目に答えるつもりがないようだ。


ダメだなこれは。


突っ込んで聞いても濁されるだけな気がする。


私はため息をふっと吐いて諦め、アレクの手を引っ張った。


「ほらアレク、あと少しで学園に着くよ」


「ティア、そんなに急がなくても学園は逃げないから」


伝わってくる手の温もりが心地よい。


アレクは私の歩調に合わせて歩いてくれる。


穏やかな陽射しの中でニコニコと微笑む彼を見上げ、私も嬉しくて笑う。


あれ?徐々に歩調が緩やかになってきた。


不思議に思った私は「アレク、どうしたの?」と、声をかける。


返事がない。


どうしたんだろう?


アレクは立ち止まり、学園を真っ直ぐに見据えている。

その顔からは笑みが消え去り、そして繋いでいた手をするりと離された。


離した手が冷たく感じられる。


「アレク?」


私の声だけが響き、その静寂の広がりは無情に私を包み込んだ。


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