シフォンのお味は?
「アレクはここ最近ずっと笑顔を見せなくなっていたので心配してたんです。でも今日は久々にあんなに楽しそうなアレクを見られました」
私も笑顔のアレクを今日初めて見ました。
なんて言えるわけがない。
「一緒にいるあなたのお陰としか思えません」
「いえいえ、そんなことはないんですよ」
これは全く謙遜ではない。
そして【媚薬】の効果のため笑顔なんですなんて、口が裂けても言えないよ······。
大変心苦しい。
泣きそうである。
でも、やっぱりアレクは笑顔でいる方が素なんだ。
それがわかって良かった。
「アレクを元気にしてくれた、そのお礼なんです。これは試作品なので、感想を聞かせてもらえると嬉しいんですけど」
そう言ってはにかんだケヴィンさんは「失礼します」と、私の隣の席に座りケーキの解説を始めた。
とても熱心な説明で「さあ感想をヨロシク」と言われたら、食べないわけにはいかなくなった。
私はシフォンケーキを一口頂いた。
「ん~~美味しい〜」
ああ、幸せだ。
ほわっほわのシフォンは少し洋酒の風味がきき、甘すぎない生クリームと甘酸っぱいいちごが絶妙なパランスで、お互いの美味しさを引き立てている。
ほっぺが落ちそうである。
この感動をそのまま伝えたら、ケヴィンさんは頷きながらメモをとっていた。
「食べながら聞いてください」
「はい、なんでしょう?」
「ティアさん、アレクのどこが好きですか?」
「ええっ?!」
私、今すごく顔赤いと思う。
なんて質問をするんだ!ケヴィンさんは。
ケーキを食べるどころではないじゃないか!
「えーと、優しくて、可愛くて······うーん」
「はは、わかりました。ありがとう」
ん、今ので何がわかったのか?
しっかり答えられなかったけど、いいのかな?
「ティアさん、···気を付けて···」
「えっ?」
「いえ、あの、何でもありません」
今、気を付けてって言ったよね。
ケヴィンさんは、失言したというように視線を泳がせているけど···。
なんだろう?
凄く気になる·······。
「アレクの事、よく見ていてやって下さい。アイツはとても危なっかしいから」
「はい」
笑顔のアレクと冷酷なアレク。
なぜ二つの顔を持つのか、今は理由はわからない。
可能ならば、私はアレクの力になりたい。
そう思った。