はい、あ~ん
ストロベリーやブルーベリー、ラズベリーにクランベリーとたくさんのベリーが載ったタルトに目を奪われる。
ベリーとタルト生地の間にはバニラビーンズがたっぷり入ったカスタードクリームと生クリームが美しいバランスで層になっており、食欲をそそる。
「わあ!綺麗。凄く美味しそうなんだけど、食べるのがもったいない気がする」
「はは、そうだね」
苦笑しながらアレクはチョコレートケーキを一口食べている。
感動が顔に出ている。
美味しいらしい。
では、私も一口。いただきます。
うわ、なにこれ!!
めっちゃ美味しい。幸せすぎる!
ベリーの酸味とクリームの甘み、それにタルト生地のサクサクがハーモニーを奏でる。
これは感動ものだ。
「ティア、これも美味しいよ。食べる?」
「わあ!ありがとう」
早速アレクのお皿にフォークを伸ばすと、アレクは首を横に振る。
ん、どういう事?
「はい、あ~ん」
「ええっ?!」
アレクはいい笑顔でチョコレートケーキをカットして、フォークを私の口元まで持ってきた。
はい、あ~んって。
私は驚いて思わず赤面してしまった。
で、でも。
ここでいらないなんて言えないし。
仕方ない。
私は目を瞑って口を開けた。
「あむむ···美味しい〜」
口に放り込まれたオペラはほろ苦いコーヒーの風味と、濃厚なチョコレートの甘さがとろけるよう。
恥ずかいんだけど、凄く美味。
「ティア、ホント君って可愛いよね。はい、もっと食べて」
そして、次々に私の口に運ばれてくるチョコレートケーキ。
あう、美味しすぎてやめられないよ。
気が付けば、アレクのケーキはほとんど私が食べてしまっていた。
なんだか、ゴメンなさい。
でも、アレクは嬉しそうに笑ってる。
「あの、アレク。ベリーのタルト食べる?」
「君の好物をもらってもいいの?」
「もちろんいいよ」
私がお皿を差し出すと、アレクはまたしても首を横に振る。
そして、私のフォークを指差し自分の口へと誘う。
もしかして、先程の逆をやれと言うのか!?
ひええ、恥ずかしい。
アレクはキラキラと期待を込めた眼差しで、こちらを見ている。
わかりましたよ。
私は観念して、タルトを切り分けアレクの口元へと運んだ。
アレクは目を輝かせパクっと食べる。
その姿は幸せそうでとても可愛くて、思わず私は見とれてしまった。