甘いもの
手を繋いで歩く道のり。
アレクの大きくて温かい手。優しくて、安心する。
手を繋ぐのも、なんだか慣れてきたような気がするな。
さて、どこに行くのだろう?
学園から南に街道を行くと、その通りには色んな商店が軒を連ねる。
マルシェやブティック、貴金属のお店なんかを横目に見ながら歩き、その先にある白い漆喰のオシャレな建物の前に立った。
うわ、甘い匂いが立ち籠める。
ここは洋菓子のお店。
菓子店エリーゼっていうんだけど、実は行列ができる程人気のあるお店だ。
ここは菓子類の販売だけでなく、カフェにもなっており、その場で好きなケーキを楽しめるのが魅力だ。
アレクは予約を入れていたようで、行列を追い越してお店に入ることができた。
でもこれって、生徒会のお仕事なんだろうか?
「仕事の前にちょっと休憩。ティアは甘いもの好き?」
「大好き!」
アレクはやっぱりねっていう顔でニコッと笑う。
ショーケースに並ぶのはケーキやチョコレート、焼き菓子など。
ケーキだけでも三十種類はあるみたい。
どれもキラキラ光っていてとても美味しそう。
「うわあ!キレイだね。どれも美味しそうで迷うよ」
「食べたいのは決まった?」
「えーとね····」
「僕が当てようか?」
「ん?」
あれ?
アレクに私の好みがわかるのか?
種類がたくさんあるお菓子の中で、私が選んだのはベリーのタルト。
ベリーが大好きだからね。これは外せないでしょう!
まさか、当てられまい。
私は上目遣いにアレクを見ると、彼は眉を下げて言った。
「ベリーのタルト。どう、当たった?」
「えっ?!当たり」
どうしてわかったんだろう?
こんなにたくさんお菓子の種類があるのに?!
わからないだろうと思っていたのに、見事に言い当てられてかなり驚いた。
「アレク、何でわかったの?」
「ティア、僕を誰だと思ってるの?」
「······」
何そのドヤ顔は?
真面目に答える気はなさそうだ。
人の心を読める魔法とかあるのかな?
いやいや、まさかこんな人目のある所で魔法を使うというのは考えにくいし。
偶然か、もともと知っていたのか···。
そういえば、時計塔の図書室。
あれも見せたかったと言っていたけど、私が本好きなのを知っていたのだろうか?
でもなぜ?
なんのために?
······
考えても答えなんか出ない。
止めよう。
私達はケーキと飲み物を注文し、窓際の席へ移動した。
私はベリーのタルトと紅茶を注文した。
アレクの選んだのはオペラというコーヒー風味のチョコレートのケーキとカフェラテ。
アレクも甘党なんだね。
一緒に食べられて嬉しいなあ。
向かい合わせに席に座ると、程なくして注文の品が運ばれてきた。