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4.ノーム


「むぴ」


 諦めかけた時、ふと可愛らしい声が足元から聞こえて来ました。

 見下ろすと土で作られた小さい人形が見えました。


「むぴぴ」


 気づいてくれたと嬉しそうに両手をふる手のひらサイズの土人形。よく見ると葉っぱや木の実で目や口が作られていて可愛らしいですわね。


「こ、こ、これは……!?」


 土人形に向けスライディングしながら近づく先生。

 先程、名前を呼ばれた先生でたしか学年主任だったはずですわ。

 スライディングと共に頭の上についているバーコードが寂しげにゆらゆらと揺れました。


「つ、土の精霊、ノームではないかっ!!」


 ちっちっちっと土人形に向けて手を差し伸べる主任はなんだかとても奇妙でしたし私の足元でやらないで欲しいですわ。


「め、珍しい……魔力がないと成功しない上にこんな可憐なノームなんて滅多に存在しない!! まさに奇跡の産物!!」


 目を血走らせている姿は、女学生の足元で四つん這いになっている変態にしか見えないのでいい加減離れて欲しいですわ。

 ノームも怖がって私の足に隠れてますし。


「ちょ、ちょっとでいいんだ。触らせてくれないかっ! 痛くしないから、ちょっと! その指先だけでいいから!」


 ちょ、本当にやめて。


「せめて! せめて香りだけでも! ノームの!! 香りゴホッ!!!」


 主任は地面から突如現れた太い蔦に殴られ数メートル吹き飛ばされました。


 どうやら怖いメーターが振り切れたノームが魔法でやったらしいですわ、ナイスヒット。


「ぐふ……ぐふふふふ」


 不気味な声が聞こえてきました。どうやらあのハゲが笑っている様です。


「いいよ、ノームちゃあん。いいパンチだった……どうだい? もういっぱ、ほげっ」


 足を蔦で引っ張り上げられ、宙吊りになる禿げたおじさん、おっと失礼、禿げた変態でした。


 足元を見るとノームが苛立ちと不気味さで顔を青ざめながら蔦に手を伸ばし、その手をぐいっと横に降りました。

 すると、蔦も同じ方向に勢いよく振られてハゲは嬉しそうな悲鳴をあげます。


 どんどんとノームの腕に容赦がなくなり、次第に残像でハゲが何人にも見える地獄絵図に学生達はみなドン引きしていました。


「いいよ!!! もっと! もっとだ!! ノームちゃあああああああああああ!!!」

「むぴぃいいいいい」


 その掛け声と共に、勢いよく蔦からハゲが解き放たれてそのまま的へ飛んでいきます。


「ふげ! ひぐっ! あだっ!!」


 そして三つの的全てにハゲが当たり、そのままハゲは地面へ落ちて動かなくなりました。

 なんということでしょう。よりにもよって学年主任をボコボコにしてしまいましたわ。これでは王子攻略どころか学園退学もありえます。


「メ、アリ、ハド、ソン……」


 辛うじてハゲは口を開きます。


「は、はい」


 恐る恐る私は返事をします。


「……ごう、かくだ……」


ーーガクッ


 そのまま息絶える、ハゲ。


「が、学年主任んんんんんん!!!!???」


 呆然としていた他の先生達がようやくハゲの元へ集まり始めました。


 私は黙って、深くお辞儀をするとその場を立ち去りました。


 亡くなってしまった彼のために、彼の死を無駄にしないために私は進まなければならないのです。

 ふ、いいハゲでしたわ。

学年主任はしにましぇぇぇん

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