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2.作戦会議


「さて、いよいよ明日から学校が始まるにゃ」


 モルペウスは毛繕いしながら私にそう言いました。


 今は夏休みで明日から新学期、魔法学園の二年生になりますの。

 前世の記憶が戻ったのが1ヶ月前で夏休み入っですぐのことだったので、前世の記憶がある状態で学校へ行くのは初めてですわね。


 回想が終わった私は立っているのもなんなので腰をかけました。夢の中だと私が座りたいと思うの椅子がどこからともなく出てくれるのは便利な機能ですわね。


「何も知らずにゲームが始まってしまうのはあまりにも可哀想だから攻略相手ぐらい教えてやるにゃ」


 たしかに一応メアリ・ハドソンとしての記憶は多少あるものの、この娘はどうやら農作物にしか興味がなかったらしく知識がかなり偏っているのです。


 クラスメイトの名前は辛うじてわかる程度の付き合いしてしてこなかったメアリには学校一のお金持ちも、イケメンの記憶も微塵もないのです。

 どうやら恋愛のれの字も知らないような子でしたのね。


「じゃあ、まずは一人目にゃ」


 突然目の前に映像が浮かび上がります。

 映し出されなのは青色の髪と目元の黒子(ほくろ)が印象的なイケメンですわ。


「クリス・マーヴィン・クゥーオン、二年生。クゥーオン伯爵家の長男だにゃ。成績優秀で魔力も強く、すでに将来有望視されている期待株にゃ」

「あらそう、お次は?」


 私の興味の無さそうな返事にモルペウスはやれやれと首を振ります。

 響としては玉の輿候補で良いのですが、まあ伯爵は地位としては少し低いかしら。何が偉いのかよくわかりませんが。

 キープといった評価が妥当でしょう。


「レオン・クリストファー・オルバトム、二年生。こいつはメアリ、あ」


 メアリと呼ばれた事に私は無自覚に猫を睨んでしまいました。どうもまだ呼ばれ慣れていないので仕方のない事ですわ。


「マ、マリアと似たような家族構成にゃ。親が有名デザイナーでオルバトム&バートンというブランドを立ち上げているにゃ。主にパーティー用ドレスを仕立ててるブランドにゃ」


 二年生ということは同い年なのですが、それにしては幼い印象を受ける顔ですわね。

 薄茶色の髪と中性的に長いまつ毛の奥にある明るい緑の眼。なんだかハムスターを連想しますわ。


 まあ、可愛い系の男は私趣味じゃないので次。


「ジョゼフ・エルバート・M・アルステミア、三年生。魔法学園の理事長の息子にゃ。そのためかやや学園で問題を起こしたとしてもある程度の融通を利かせて揉み消しているようだにゃ」


 ジョゼフの見た目に私は思わずはっとしました。

 何故って、私の婚約者ーー元婚約者ですわねーーに似てるのですから。

 黒い髪と獰猛に赤く光る瞳。綺麗な鼻筋と薄い唇から覗く鋭い歯。まるで狼のような見た目にやはり女って弱いものですわね。


 しかし性格に難ありなようですわね。たぶんこの男は結婚してから女を殴るわ。よし、次。


「ネフ・サン」

「ちっ」


 おっと、失礼。記憶にある名前に思わず舌打ちしてしまいました。まさか彼も攻略対象だったとは。


 ネフ・サンの名前はメアリとしての記憶で覚えています。彼女の数少ない友達のうちの一人、しかも幼い頃からの唯一無二といっても過言ではない存在ーー幼馴染みというやつですわ。


 たしかに犬のような可愛らしさと凛々しさを持ち合わせていますが、彼の家もたしか農家だったので私は興味なしですわ。メアリも彼のこと恋愛対象としては見ていなかったですし。


「ネフが一番攻略簡単にゃし、農家といっても国内一の大農場で金持ち度合いで言ったらクリスと変わらにゃ」「次」


 ぴしゃりと言い放つとモルペウスは諦めたようですわ。金持ちだろうが農家という肩書きが私にあっていいわけがないでしょう。


「アドルフ・フォン・レットビア、三年生。我が国、カスチューア国第一王子にゃ。婚約者が学園にいるがまあ、そこはヒロインの魅力でなんとかするにゃ」


 まさに誰もが思い描くような金髪碧眼の美男ですわね。先程の狼男とは違い、どこか儚さを兼ね備えつつ優雅な美しさがありますわ。


 ふむ、王子、悪くないですわね。

 いつの時代でも、王家の制度がなくなった世の中でさえ少女は王子というものに憧れるものです。


「決めましたわ。ここはやはり、王道の第一王子、アドルフを攻略しますわ!」

「他にも何人か攻略対象がいるけどいいのかにゃ?」


 首を傾げてきく猫に私は高らかに宣言致しますの。


「ふふふ、ここは腐っても転生後の世界。きっと前世よりももっと楽に勝ち組になれるはずですわ。ならば目標は高く! 私はこの世界で女王になってみせるわ!!」


 おほほほと高らかに笑う私、やはりどの世界に行っても私が一番になる運命なのですわ。


「いやだから、発想が悪役……まあいいにゃ。どうせ明日学園に行けば、そんな上手くいかないこともすぐわかるにゃ」


 ため息を吐きながら猫が何か言っていますが、私は咳き込むまで高らかに笑い続けます。


 ふふ、明日が楽しみで仕方ないわ。

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