表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/9

プロローグ 転生


 キラキラと反射するシャンデリアが眩しい。

 出されたシャンパンの匂いにくらくらする。

 この会場にいる全ての人間からの熱い羨望の眼差しにマリアは微笑みで返す。


 煌びやかな社交会の中でも高嶺の花であるマリアは自分の婚約パーティーで何よりも人の目を惹きながら優雅に会場を歩いていく。


 ここに用意された全てのものは(わたくし)の物ですわ。


 全ては主役である(わたくし)を際立たせる為にありますの。


 当たり前ですわ。

 誰も(わたくし)に敵いませんし、誰も(わたくし)を嫌えない。

 全部(わたくし)の思い通り。

 笑ってしまいますわ。

 この世の全てが、(わたくし)の思うがままなんですから。


 なんて楽勝で幸せな人生なんですの。


 そう、(わたくし)は勝ち組なんですの。


 そう思っていましたわ。



          ▼



「それでは、参りますわ」


 私がそう呟くと、後ろで見守る弟のテトと父上がこくりと頷くのが見えました。


「水の精霊、ウンディーネの名の下に私に力をお与えくださいーー〈天の恵み(レイニー)〉」


 呪文を唱え終わると冷気が頬を撫でたかと思えば、どこからともなく雲が空を覆い優しい雨音が聞こえてきま、


「……頑張れ、ねぇちゃん」

「そうだ、メアリ、お前ならできる、頑張れ」


 優しい雨音が聞こえて、


「来てるッ! 俺にはわかるよッ! 大丈夫、落ち着いて深呼吸だよ! はいッ! ヒッヒッフー! ヒッヒッフー! セイッ!!」

「父さんも応援してるぞ、ほら! ヒッヒッフー! ヒッヒッフー! セイッ!!」


 雨音が、


「「ヒッヒッフー! ハイッ!! ヒッヒッフー! YO!!」」


 あま、おとがーー


「hey! YO! おいらのねぇちゃん、魔法使い! 世界で一番、魔力強い! 今のねえちゃんは集中したい! ならおいらのラップでgo to high! YO!」

 

「ぅううるせぇええええええええええ!」


 ピカッと当たりに閃光が走ったかと思えば、地面が揺れるほどの轟音がティナの下手なラップをかき消した。

 雨ではなく雷が目の前に広がる畑に落ちた。


「「よし! 今だ!!」」


 後ろで騒がしく応援していたバカ親子がカゴを持って雷に打たれた作物に向けて走り出し満面の笑顔でそれを空へと掲げた。


「高級食材の雷のクロウキュカ、ゲットだぜ!」

「さすが魔法音痴のねぇちゃん! 雨降らそうとして上位魔法の雷落とすなんて天才の極み!」


 こんのクソ弟が……ゴホン。失礼、お下品な言葉を使ってしまいましたわ。


 私はメアリ・ハドソン。前の世界ではマリア・クリスタ・山田、あのかの有名な華のマリアと呼ばれていましたわ。


 ……え? 華のマリアをご存知ないのですか?

 仕方ありません、教えてあげますわ。


 マリア・クリスタ・山田、年齢23歳。

 父親が日本人、母親がアメリカ人のハーフでしたわ。

 母のアメリアは有名ブランド「 Rich stick」を立ち上げたデザイナーの一人で、父は有名なファッション誌「clash」を有する出版社の社長でしたの。


 まあ、自分で言うのもなんですけれども、お金持ちでしたわ。


 幼い頃から優秀な家庭教師をつけていただいて、文武両道なのはもちろん。社交界でも私の優雅な立ち振る舞いと、輝かしい美貌についた通称が「華のマリア」と言うわけですの。


「ねえ、ねぇちゃんも見てないで収穫手伝ってよ!」


 テトの声に私はもちろんこう答えさせていただくわ。


「嫌よ」


 頬を膨らませて怒るテトは愛らしいですわ。私ほどではないですが。


 さて、なぜ私が転生したかの説明がまだでしたわね。実の所、私も何が起きたのかよく覚えてないのですわ。

 たしか、私の婚約パーティーを開いていたのは覚えているのですが、気がついたらあの騒がしい弟の隣で目を覚ましましたの。


 私もまだ納得していないのですが、どうやら日本で流行りの「異世界転生」したらしいのです。先程も披露した通りこの世界には魔法があって、それを使ってみな生活をしている。まさに前世とは全く違う世界、異世界に来てしまいました。


 そして本当に納得がいかないのですが農民の娘、メアリ・ハドソン(17歳)に転生しましたの。本当に全く納得がいきませんが。


 なにせ、私は前世では華のマリア。土いじりなどしたことありませんの。

 土の臭いがじめじめしてて陰湿な気持ちになって嫌いですし、何よりあのどこからともなく湧いてくる虫がだいっっきらいですの。


「ねぇちゃん!」


 ああ、もうしつこいですわね。私はそういうことなので絶対に畑仕事なんてしなああああああaaaaa


「みて! サルダガ虫の幼虫! これ揚げて食べるのねぇちゃん好きだったよね、ってあれ、ねえちゃん?」


 目の前に手のひらサイズのカブトムシの幼虫に十本の蜘蛛の足を生やした虫を持ち出されて私は白目を剥いて泡を吐き出しながらそのまま意識を手放した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ