恋バナ好きの友達って手強いですよね?
“くるりんぱ”の解説絵、やっとできました(^◇^;)後書きに載せてあります。
「うふふ。ありがとー、チナ」
サッカー部の試合……というより八木君を堪能して上機嫌の咲姫ちゃん。
私たちは今、駅前にあるショッピングセンターに来ている。先月、インスタ映えするスイーツが食べ放題のフェアリーフォレスト・カフェがオープンして、早速行ってみよう、となったわけだ。
「一人だと行きにくかったから。八木君の最後の練習見られてよかったよ」
まあ、実際行ってみたら、彼目当ての女子はたくさんいたんだけど。後輩かな、三年生じゃない子たちもいたね。
「ところで」
ガトーショコラを飾る白黒螺旋の巻チョコをフォークで掬い上げて、咲姫ちゃんがニンマリ笑う。
「チナって好きな人、いないの?」
もう。物欲しそうな顔したって、何にも出ないよ?
「今は勉強ばっかりだし」
お決まりの言い訳を口にニコリと笑う。そういうのとは無縁だよ。
「伊藤君とは何もないの?」
「うん」
あ。このショートケーキ美味し
「昨日、手を繫いで登校したんだよね?」
「ゴホッ! ゴホゴホ!!」
ど……どうしてそれをッ?!
「ほほーう。手、繫いだんだ?」
カマをかけられた?!
な、なんて言い逃れしたら……
「ねぇ見て、咲姫ちゃん。このショートケーキ、クリームが縦縞だよ! これってホールだと同心円だよ! どうやって作ったのかな!」
頬に集まる熱に焦りまくりながら、私が「見て見て」とケーキの断面を示すも、
「へぇ~、へぇ~、伊藤君とそんなことが……。チナも捨ておけないなぁ」
ダメだわ。これ、どんな言い訳も通じない顔だ。こんな時取れるのは……。
「あ! イチゴのスパイラルロールケーキだって! 私、取りに行ってくるね!」
逃げる一択!
お腹いっぱいになっちゃった……。
ケーキを堪能した後、やってきたのは同じビルの雑貨屋。プチプラのアクセサリーや小物が充実していて、かつ可愛いデザイン揃い。女子高生御用達のお店なの。
「チナ、チナ、これカワイイー!」
両サイドに黒いリボンがあしらわれた太めシルエットのカチューシャを、「似合う?」とニコニコする咲姫ちゃん。うん、似合う似合う。
私もなにか買おっかなぁ……。
髪が短くて地味顔の私には、咲姫ちゃんがつけているような『カワイイ系』は似合わないんだよね。あんまり派手なデザインに冒険するのも、ちょっと勇気がない。
普段つけているのって、校則に違反しない黒のアメピンだもんなぁ……。
高校生活最後の文化祭となると、オシャレに気合い入れてくる子も多い。具体的にはヘアスタイル――校則違反になる大きなバレッタは無理でも、アップにした髪をポップな色付きの三角ピンで飾ったり、黒っぽいリボンをさり気なくつけていたり。
いくら地味な私だって、可愛いアクセサリーを前にすると心が浮きたつというか………。べ、別に伊藤君を意識しているわけじゃないから……。
ヘアアクセサリー売場の一角には、タブレットが設置してあり、アクセサリーを使ったまとめ髪の手順動画が流れている。むうぅ……髪が短いから、こういうアレンジもしたことないんだよねぇ。
「チナくらいの長さがあれば、まとめ髪じゃなくても~」
咲姫ちゃんが、手持ちの髪ゴムを使って手際よく私の短い髪を結う。
「耳より前側の髪を上から三つに分けてぇ……結んで上から順番にくるりんぱッと」
結んだゴムの少し上の毛束を割って、そこに結んだ毛先をゴムごと上から通して。すると……?
「後はテキトーに髪を引きだしてボリューム出したら、ほら!編みこみみたいでしょ?」
鏡に映る自分にびっくり。編みこみとはちょっと違うけど、顔の横にふんわりしたスパイラルが向きあって三段。
「ムフフ。それでこちらにご注目」
びっくり顔の私に、得意げな咲姫ちゃんが取り出したのは、シンプルなパール付のピン。変わっているのは、ピンの部分が螺旋状になっていること。スクリューピンって言うんだって。
「飾りなんだけどね。これを時計回りで髪に捻じ込むと」
髪のスパイラルの上に、ポツンとパールが光る。へぇ……、こんなピンもあるんだ。
同じタイプの飾りピンは、売り場にも何種類か置いてある。私は少し迷って、シンプルなパール付きのスクリューピンを手に取った。




