7.
結果だけお伝えすれば、魚はいたし、火も起こせた。
脂の乗った魚は美味だった。
「...絶対おかしいよねー」
パチパチと爆ぜる炎をつつきながら、つぶやく。
お腹が少し満たされて、幸せな気分だ。
人間、お腹が空いていると、ろくな事を考えない。
それにしても、おかしい。
アウトドア知識がマイナスに振りきれている私が、魚を素手で捕り、火を起こし、絶妙な火加減で焼いて美味しく頂いたのだ。
川を泳ぐ魚を見ていたら、どこにどのタイミングで手を入れればいいかが分かった。
焚き火には何が必要で、どのような手順を踏めばいいか分かる。
美味しい果実がなる木を見分けることもできる。
さっき発見した短剣も大いに役立った。
木の枝を落としたり、魚を捌いたり、果物を切ったり。
まるで、サバイバルの達人だ。
どうしてそんな事が出来るのか。
分からない。
私はただ、頭に浮かんだことを実行しただけ。
私が知らないはずのことを、私から教わる。という奇妙なことが起こり続けている。
おかしいけれど、それが事実。
そうでなければ、日本でぬくぬく育った21歳の小娘が、何の準備もなく森の中で生き延びられるわけがない。
ラッキー、で済ませて良いものか。
まぁでも、深く考えても仕方ないよね。
できるだけ早くこの森を抜けて、人を探す。
自分の現状を把握するための情報が、足りなすぎる。
じーちゃん、ばーちゃん。
私、これからどうなるんだろうか。
――その時、
背筋に緊張が走った。