6.
すん、と鼻を鳴らす。
水の匂いだ。
耳を澄ますと、水が流れる音も聞こえる。
マグボトルの中はすでに空だった。歩き続けて喉はからから。凹凸のある地面を歩き続けるのも、目的地が見えないまま歩き続けるのも、想像以上に体力を奪われた。
足をもつれさせながら辿り着いた先には、川が流れていた。
「...助かった」
膝をついて、水をすくう。ひんやり冷たい。口の中を満たして、喉を落ちていく感覚。指先や足の先まで潤っていく気がした。
川幅はそれほど広くない。流れも緩やかだ。
水がある。その安心感たるや。
今日はこの近くで休もう。
辺りを回ってみると、思わぬ拾い物をした。
落ち葉に埋もれていた、それは。
「ナイフだ...」
刃渡り15cmくらい。料理に使う包丁とは違う。なんていうか、アニメやゲームにでも出てきそうな形だ。短剣っていうのだろうか。
恐る恐る持ち上げて、握ってみる。
なめらかに光る刀身。傷も刃こぼれも無し。切れ味が良さそう。持ち手もシンプルで飾り気がない。有能そう。かっこいい。
こういう物があるってことは、
「いつかは分からないけど...ここに人が居たってことだよね」
少し探したけれど、短剣の鞘は見つからなかった。
この持ち主は、どうなったんだろう...
嫌な想像が広がる直前で、思考を霧散させる。
川に魚はいるだろうか。
火を起こせる自信は無いけど、空腹が限界だった。