4.
瞼に陽の光を感じて、目が覚めた。
ぼんやりした頭で、土と緑の匂いを感じた。
起きて数秒、軽く落胆した。
眠る前と同じく、私はまだ森の中にいるみたいだ。
木にもたれていた体を起こして、ぐぐっと伸びをする。肩や背中、首が凝り固まっている。大きく深呼吸。
清々しい、朝の空気だ。
「...きれい」
まだ薄暗い森の中に、朝日が差し込んでいる。何本もの光の筋。思わず目を奪われるほどに美しい光景だった。その柔らかくて温かく優しい光は、まるで生命の息吹のようだ。
この幻想的な光景が、森の奥深くまで広がっているんだろうか。昨日は暗くて分からなかったけど、こんなにも美しい森だったんだ。
しばらくの間、呆然と朝の森を眺めた。
こんな風景は、知らない。
家の近所では絶対にないし、キャンプやハイキングでも訪れたことがない。
これは、本物の自然だ。
作られたものじゃない。人の手が入っていない。
初めて、少し怖いと思った。
その圧倒的な生命力と、反して生き物の気配がしない静けさに。
ここは、どこなんだろう...。
ふいに不安が込み上げてきて、にじみそうになった涙をぐっとこらえる。
泣いてる場合じゃない。
明るいうちに移動して、助けを求めなくちゃ。
立ち上がり、360度ぐるりと見渡す。
どこへ進めばいい。
何を目指せばいい。
こういう時に直感が鋭い人はいい。頼りになる。
私はというと、
「...」
なんの直感も働かなかったので、落ちていた木の棒を立てて、倒れた方向へ進むことにした。
やけくそだった。