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プロローグ
地味に生きてきた。
人様より前に出ることなく、静かに雑用に徹し、波風の立たない位置で生きてきた。
学生時代も社会人になってからも、それが私の処世術。
不満はなかったし、少し離れた場所から見る世界は気楽でいい。
人から注目され、煌めいた世界で笑う人達は、文字通り別世界の住人だ。手の届かない存在。
美しい人。
才能に溢れた人。
周囲を魅了して止まない人。
そういう人たちを横目に、わたしはひっそりと息をする。悪目立ちすることなく、質素に慎ましく。
ずっとそうやって、独りで生きていくんだと思ってた。
上野 悠希、21歳。
神様...あの、ここはどこですか?