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【続編連載中】Wolfhound(ウルフハウンド) ー神話に殺された狼のやりなおし  作者: 灰皮 (Haigawa Lobo)
第6章 ー古き神々への拘束編
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211. ヴァフズルーズニルの歌 7

いつもFenrirの話に付き合って下さり、ありがとうございます。

今回のお話ですが、PCからお読みになることをお勧めいたします。

理由は読み進めていくとお分かりいただけるかと思いますが、

スマートフォン版の一行に表示される文字数が、PC版と異なることに起因します。

読者の皆様には、大変申し訳ございませんが、挿絵を参照しつつ、上手く行間を読んでくださいますと幸いです。


211. Vafthruthnir’s Sayings 7 


予言。


その言葉が肌に張り付く。

確かに、Fenrirが導き出した解答は、鳥肌の立つような切り口だった。


「…念のため断っておくが、狼の直感に、そのような力の類は含まれていないことを強調しておこう。」


だが、今はそれどころではない。


彼の言葉以上に俺の度肝を抜いたのは、狼たちが徐に書物の間に鼻を突っ込み、本棚を弄り始めたことだった。


前兆は無かった。

にも拘らず、明らかに何らかの意図を持って、動いている。


彼らは統合された意思の構成員である。

そんな天啓を得たのは、目に留まった一匹の所作が不自然に映ったからだ。

本棚の本を一度咥えてから、尻尾をゆっさゆっさと揺らしての小考があった後、

また元の位置に戻している。


だがその戻された本は、’何か’ が先までと変わっていた。


俺が吹き込んだように、背表紙が棚の奥に隠されている訳では無い。

几帳面なことに、上下が逆さになっている訳でも無い。


/|


こんな感じだ。

隣の本に、寄りかかるようにして、傾いているだけ。


それは、取るに足らない変化。

些細で神経質な図書委員が、溜め息を吐く程度の無礼。


しかしそれが、酷く俺の興味を惹きつけた。


目の前の状況を整理するために、メモを取る必要がある。

このノートには記せない。Odinに読み取られる。

行儀が悪いが、テーブルの上に印すしかない。


垂直に立てられた本、それに寄りかかって、斜めになっている本。

左、右…縦、縦、右…


僅かな指の動きだけで、悟られぬように、本の傾きを記録していく。


そうして得られた、開架下の羅列は、このようなものだった。


|\ || |\/| || |/ || /|\ || |\/| || |\ || |\/| || /|\ || \/ || \ || |\/| || |\/|


なんだ、これ…?

意味が分からない。


「Ska……?」


マントの中に頭を突っ込み、膝枕を享受していたSkaに助け舟を求めるも、眠ってしまったのか、反応を示さない。

すうすうと寝息と共に膨らんで萎む毛皮を撫でながら、もう一度の模様背表紙が織り成す模様を眺める。


彼が司令塔だとばかり思っていたのだけど。

考え過ぎか…?


書き記している間に高鳴っていた心臓も、すぐに平静を取り戻していく。


「…然るに、月の軌道が単に太陽の光を遮るだけでは、皆既日食とはならない。」


Fenrirは何やら得意げに、皆既日食が起きる原理を説明しているらしかったが、もうついて行けそうにない。

元来、俺に速記なんて無理だったのだ。

普通に聞き取った内容を書き記すだけでも精一杯なのに、訳の分からない単語を並べ立てられては、理解できないまま、耳を素通りしてしまう。


気付けば、徐に行動を起こした狼達も、再び床に身体を広げて物憂げに寛いでいる。


狼達からの、何かのメッセージでは無いかと思ったのだけれど。

ただの気のせいだったのかな。


そう頭の中では片付けつつも、フードで遮られた画面の端から目を離せない。

何か、何か惹きつけられる。


「視直径と呼ばれるものだな。この世界から見た月と太陽の大きさは、常に変化している。前者が後者を越えた時に初めて、日食は完全なものとなるのだ。」


「そのためには、幾つかの幸運が重なる必要がある。」


「Teus、視野を広げろ。」


「お前が皆既日食だと恍惚な表情で見上げているのは、月なのだ。分かるか?」


「月…?」


Fenrir…ひょっとして、俺が狼達のメッセージに視線を向けていたことに、気が付いていた?

てっきり、自分の論証に酔って、一度喋り始めたら止まらないのかと思っていた。


「そうだ。その全てが、関わっていると心得よ。」


彼は、俺に狼の言葉を解する助言を与えてくれている。

そして、そのことを悟られてはならない様子だった。


「アースガルズ…月、太陽。」


そう呟きながら、もう一度、先まで眺めていた段と、その上下の本棚に目をやる。


     ||/||                  /\ /||

|\|||\/||||/||/|\|||\/|||  |\|||\/|||/|\||\/||\|||\/||||\/|

|  |||    ||||  ||  |  |||    |||\|  |||    |||  |  ||/\||/|||    ||||    |



もう、メモを取る必要はなかった。


「↑」


‘T’、

その一文字を識字できた途端に、全ての文字が浮き上がって来たのだ。




     |/                   /\ /

|\ |\/| |/ /|\ |\/|  |\ |\/| /|\ \/ \ |\/| |\/|

|  |    | |   |  | | \|   | |   |   /\ / |    | |    |





L  E  F  T  E  Y  E  T  O  S  E  E


挿絵(By みてみん)

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