152. 媒介者
152. The Channeler
そ、それじゃあ……
「俺は、生き返らせたい狼の名前を、間違えた、ということ?」
「あの大狼の名は……じゃない、のか…?」
「それって、あの狼が、そう言っていたのですか?」
「あ、ああ……」
……?
「そう、か…」
「あいつも、知らなかったんだ……」
記憶を呼び起こしてみると、そうだった。
彼が崇めるままに、
俺もずっと、勘違いしていたんだ。
「つまり、この奇跡は、失敗に終わってしまったということ、か……。」
だからこうして、いるのだね?
俺の覚悟は、最も根本で足を掬われて。
君の膝元で惚けて、目を醒ました。
「半分は、そうなりますね。」
「……?」
ですがテュールさん。
貴方は確かに、書いたのですよ?
「あの狼の名前。」
……?
「貴方は、二匹の狼の命を、やはり救われたのです。」
知っていたの?
あの狼の名前が……だったって…
「少なくとも、私は。」
「でもそれだけ、です。」
「叔父上が、そう名付けたから、そう呼んでいただけ。」
「ですが…もし、別の誰かが。彼のことを、また違う名で、呼んでいたとしたら?」
「……!?」
そして同じ奇跡を、
貴方ではない別の誰かが望んで、泣きついていたとしたなら?
あの狼は、引き裂かれるでしょう。
それは最早、奇跡ではなくなるのです。