144. 独白
144. Monologue
出口は、とうに閉ざされている。
ならば、籠城と行こうではないか。
こんな嵐のような生も、いつか終わりが来る。
抵抗など、もう無用であるのだ。
ただの愚かで、恐れを知らぬ二匹の大狼よ。
この胸に銃弾を撃ち込むように。
逃れる道は、一つしかないのだ。
主の心に仕掛けられた時限爆弾。
それは今ここで、爆破される定めだ。
そしてもし、主をそんな向こう見ずな死に方から救わなくてはならないのなら。
もう、我は其方を離しはせぬ。
我らは、木っ端微塵に引き裂かれる。
全てを失い、塵となる。
ここで死ぬことを定められた、時限爆弾でしかないのだ。
それ以外の何者でもない。
けれど、抱えておかなくては、ならなかったのだ。
我の心を、どうか其方の胸に。
どうだろう、我に仕掛けられた爆弾が、脈打っておるのが、聞こえるであろうか?
今、解き放ってくれよう。
もう一度、初めからやり直すのだ。
壊れて、また生まれ変わる。
主の心を、どうか我の胸に。
聞こえるとも。其方に仕掛けられた爆弾が、脈を打つ音。
こんなことを、して良いはずが無い。
もっと賢く、狼らしくありたかったのであろうな。
けれど。
もう、放してなるものか。
“さあ、もう一度、聞かせておくれ。”
それで、手筈の通り、盛大に火を灯すが良い。
“今度ばかりは、我だけが、耳を傾けてやろうでは無いか。”
喩え、天に星が見えずとも
主の遠吠えは、
必ず奇跡を呼ぶのだ。