116. 見つけて
116. Find Me
「きゃあーーーーっ!!」
…?
今の、声は…?
「もう見つかってしまったのね。今度こそ、上手に隠れたつもりだったのに!」
「でも。もうすぐ見つけてくれるんじゃないかって。きっと私、そう思っていたんだわ。」
少女は言葉面では悔しそうにしつつも、彼の方から会いに来てくれた喜びにはしゃぎ声を上げる。
隠れん坊のつもりだろうか。心から見つけてくれと願っていたのだろう。
その仔は鬼の口に首元の衣服を咥えられ、ゆっさゆっさと運ばれることに慣れていた。
「それじゃあ、今度は貴方が隠れてくれる番かしら?」
子供の遊びに延々と付き合わされていたらしいそいつは、何も答えない。
ただ、俺の追いつけない速度を余裕で保ちながら。黙って彼女の命に耳を傾けるだけだ。
「ふうん…いいわ。」
少女は言葉の端に、僅かに不満を滲ませる。
思い通りにならなくもないと知っている物言いだ。
そして実際、敢えてそうしないことが面白いと。
「見ていて!ちゃーんと100まで数えられるんだから!」
だが次の瞬間には、自分が永遠に遊び続けられる体力と、友達を持ち合わせていると信じて疑わないだけの、純真な娘に戻っていた。
無垢な驕りに満ち溢れ、声を溌溂とさせて笑う。
「ええ、きっとよ…」
少し頼りないな。
分からなくもない。10を超えて両手に余る数は、気付けば堂々巡りをしがちだから。
いつになったら、探しに行けるのだろうな。
「だからそれまで、さようならよ。」