5. side/麞
通知されたクエストの詳細を見て、俺はニヤけ顔が止まらなかった。
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解放クエスト【解放者達への手向け】 《達成済》
達成者:レイ (順不同、1名)
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レイ……、コレ、零なんだろ?
アイツならやりかねない、こんなバカみたいな話。
順も不同も無いって、一人なんだから。
椅子に腰掛けて、さっきから前屈みになりながら文字をなぞり続けていた。
目線はもうディスプレイに釘付け。
「ぷッ、くくく──」
「麞さん……どうしたんすか? 急に笑い出したりして……」
ここは、クランハウスの歓談室内。
同じサブリーダーのネミンが声を掛けてくる。
近くで他の寛ぐ仲間達は、怪訝な顔付きでこっちを見ていた。
ちょっと、恥ずかしい──
「いやぁ……ね、昔からの知り合いが、とんでもないバカげた事やってそうだからさ」
「それって……まさか、さっきの解放クエストのヤツですか? 知り合いなんすか?」
「多分……ね。大方、弓で撃ち落としたんだと思うよ」
「──はあ? 相手は、黒竜っすよ? しかも、弓って」
「そういうヤツなんだよ、零は──」
別に規格外な訳じゃない。
見た目も至って普通の高校生。
だけど──
「なんか……カッコいいんだよな」
「そ、そっすか……」
今まで散々断られ続けて、やっと今回は俺の誘いに乗ってくれたんだ。
ここはゲームの世界。
リアルとは別だ。
「さて──と。遅れてきたヒーローを、迎えに行ってやろうかな」
「まさかソイツ、ウチのクランに──入れないっすよね?」
「多分……ね? クラン規約的に、普通には入れないし。しかもアイツ、変態だし」
「──え?」
「弓の……、だけど。βからやってるどの弓術士のヤツらよりも、最初の時点から既に強いと思うよ。文字通りレベルが違うから」
「ああ、そういうヤツですか……」
椅子から立ち上がろうとして──、不意に入口の扉が勢いよく開け放たれた。
姿を現したのは、クランリーダーのアリー。
息を切らして室内に駆け込んで──
「クジやん、ネーみんっ!」
「あ、リーダー」
「よう、アリー」
「ねえねえ、聞いてよ聞いてよっ! レイって子さぁ、ウチに入れようよっ!」
「えッ!? どうしたんだよ、いきなり──」
何か、凄く嫌な予感がする──
《スキルレベルがアップしました》
「私、見ちゃったのっ! ビューン、ビューンって! 解放クエのレイドボスを、弓で四発だよ? カッコよかったぁ……」
「リ、リーダー、落ち着いて──どういう事っすか?」
「わたし、特例使うねっ! 絶対逃がさないぞっ! 天涯っちとかウリたん辺りも動くだろうから。ほら、二人とも行くよっ!」
アリーの言葉に、サーっ、と血の気が引いたのが分かった。
「────」
何で?
どうして?
よりにもよって、ウチのクランリーダーが──
「ちょっ、ちょっと、リーダー、分かったから。麞さん──」
私の事を無理やり立たせて、アリーの両脇にはネミンと私、腕を掴まれながら歩き出した──
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クランネーム:【戦姫】 在籍:53名
リーダー:アリー
サブリーダー:麞
アサハキット・ネミングウェイ
茉莉亞
『新規参加は誰でも大歓迎☆ ただし、リアル女子限定◎ ワイワイ攻略、楽しくお話しましょう♪ ※1人につき1回だけ、男の子の勧誘もok! (無事に2人がくっついたら、まとめてクランを追い出してあげちゃう♡)』
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。゜゜(つД≦。)°゜。 ニゲテーーー