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38. 迷える羊達の、狂詩曲 5

いつもお読みになって頂き、ありがとうございます。

ブクマ、評価、感想お待ちしております!

本日PM11:00に掲示板回を投下するので、よかったら併せてご覧下さい。

「『ヘヴィショット』」


 殺られる前に、殺る。

 勝負の鉄則だ。

 紫色のエフェクトをまとった矢が、一直線にヤギへと向かう。


 ヤギは翼を仰々しくはためかせて抵抗を図っているが──、残念、矢の周囲は無風だ。

 そのまま止まる事なく、矢は瞳孔の横長い奇妙な右の瞳に突き立った。


「効カンナァ!」


 矢が刺さったままのヤギは事も無げに翼を羽ばたき、地面へと降り立とうとしている。

 俺も蟲を蹴散らしながら敵陣中央を一気に突破し、落下地点へと急ぐ。



=======================


 Rayの攻撃。クリティカル!急所判定!

 →Baphometに、1,050ダメージ。

 →Baphometに、ヘヴィの効果。


=======================



 いや、しっかり効いてるしな。


「小癪ナ、糞餓鬼風情ガァーーーッ!!」


 いつの間にか大鎌の数も二つに増え、上から横から縦横無尽に振るってくる。

 だが、所詮は大振り。

 繊細さを逸した攻撃なんて怖くはない。

 半身になり、一本下がってかわしつつ、握る指先を狙い斬り付ける。

 刃が石突に当たりギィンと跳ね返され、ヤギの指は宙を舞った。

 三本か……


「死ネエェーーーッ!!」


 指が減った事実を物ともせず、ヤギは振り回す大鎌を天高く掲げた。

 そして発生した、濃密な瘴気。


 放たれる殺気が色濃くなったのを咄嗟に感じ取り、後ろに飛び退きながら風の力で更に後押しをする。

 瞬間──、どす黒いナニカが目の前を通り過ぎた。

 それは……大口を開けた朽ち果てた生首のような異物。


 とてもじゃないが、絶対に食らいたくない攻撃だった。


「喰ラエェーーーッ!!」


 再び大鎌を振り回すヤギ。

 ……厄介だな。


 振り下ろされた左からの大鎌を鎬に当てながら逸らし、そのまま脇腹を切り上げる。

 即座に反転し、切り返した刃を唐竹に振り下ろして背を割った。


「猪口才ナァーーーッ!!」


 しかし、効いているのかいないのか。

 ヤギは一向に膂力衰えずに、振り返りながらなおも大鎌を振り回してくる。

 まともに相手をしていたら、キリがないな。


 残念ながら、ここはゲームの世界。

 現実であれば致命的な一撃も、相手のHPを削らなければ倒せはしない。


 掬い上げる左からの大鎌を後ろに飛んでかわし、薙ぎ払う右からの大鎌に合わせて気流を操作し、空気のバリアで跳ね返す。

 がら空きになったヤギの左半身を袈裟に斬り捨てると、即座に一撃離脱で後ろに飛んだ。


「消シ飛ベェーーーッ!!」


「うお──ッ!」


 いつの間にかヤギの切り返していた左からの大鎌が、横薙ぎに迫っていた。

 しかも、漆黒のエフェクトをまとった特別製。


「くッ──ッ!」


 即座に宙に浮く足元へ階段を作り出すと、後ろ向きに一本、二歩。

 思い切り踏み込んで、バク宙で空を舞う。


「危な……」


 かなり、紙一重だった。

 なんなら右足の先を若干掠めていた。

 見れば、ヤギは片手一本で大鎌を握り、もう一本は肘を掴んでいる。

 ……無理やり引っ張って、武技で強引に放ったって訳か。

 中々、頭は回るらしい。


 というか、さっきの一撃は間違いなく心臓まで刃が届いていたハズだった。

 それでもピンピンしている不気味なヤギ。

 仲間達も気になるし、そろそろ勝負に出るか──


「来てみろよ。狩ってやる」


 いや、狩るのはいいけど……そういえば俺、ヤギの肉は食った事ないな。

 臭いって聞くけど、どうなんだろう。

 でもコイツの肉は……いや、ないな。


「散レェーーーッ!!」


 もはやお決まりのパターンで、ヤギは突貫を仕掛けて大鎌を振るう。

 俺はタイミングを見計らいながら、一撃、また一撃と身を翻す。

 まだ……ここじゃない……次……今だ──


 さっきの攻防と同じようなタイミング。

 掬い上げる左からの大鎌を半身でかわし、右からの大鎌の薙ぎ払いが迫る中、一歩踏み込んで、脇を締めつつ肘をたたんで右手一本での心臓への突き──を放った瞬間、相対するヤギの顔が醜く歪んだ。

 完全に左胸を貫いた刃は、引こうとすれどもぶ厚い胸筋に掴まれたまま、ビクともしない。

 大鎌の長柄を空気の緩衝材で受けるも、ヤギの右腕はゆっくりと後ろに引かれ──


「終ワリダァーーーッ!!」


 お前がな。


「『ピアッシングショット』」


 とうに俺の空いた左手は矢筒に伸びて、一本の矢柄を逆手に掴んでいた。

 右手には、既に打刀と入れ替えで引っ張り出した見慣れた弓を携えながら。


 迸る、赤いエフェクト。

 発動のモーションそのままに、ヤギの額の中心点、深紅に染まった第三の瞳に深々と突き立てる。


「グギャアアァーーーッ!!」


 襲いくる衝撃に、身を備えるも──


《解放クエスト【迷える羊達の狂詩曲】は、達成されました》

《達成者は、キャラクターネーム『レイ』『アーサー』『シトロン』『琥珀』『シルトクレーテ』『麞』『スノウ』です》

《MVPは、キャラクターネーム『レイ』です》


《ランクレベルがアップしました》

《ジョブレベルがアップしました》

《スキルレベルがアップしました》

《称号【天空への敵対者】を獲得しました》

《占有エリアの第一優先権を獲得しました》


 どうやら向こうの戦いも、ちょうど終わっていたようだった。

 というか……トレイン君。

 【欺瞞】が外されて名前晒されてるけど──

 /|_/|

ソΘ Θ つ

(エ_ノヽ メエェーーーッ!!

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