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33. ペアルックは、急転直下

いつもお読みになって頂き、ありがとうございます。

ブクマ、評価、感想お待ちしております!

「なあ、レイ知ってるか? ゲームバランスって言葉」


 生憎、ゲーム用語には疎いんだ。

 知識だって月並み程度にしか知らないな。

 そもそも俺はゲームのルール範囲内でプレイしているだけだ。

 バランスがおかしいのは、俺以外の方じゃないのか?


「アーサー君、無理だよ。だってレイだもん」


 呆れ返ったと言わんばかりに、和希はため息を一つ。

 なんだよ、『零だもん』──って。


「本当に……見てるこっちの方がヒヤヒヤしたよ。まさか本当に鱗竜王『イーヴァル』を一人で倒すだなんてね。むしろこれじゃあ、レイ自体が【法則無視のレイドボス】じゃないか」


「なんだよソレ……」


 なんか分からないけど、とても嫌な台詞を言われた気がする。

 俺は一体、どんな扱いなんだ?


 ……まあいいや。

 気を取り直して、インベントリでも見てみるか。

 さて、今回の戦利品は──



=======================


竜鋼のブーツ 《両足》 【Epic】

防20 STR+5 VIT+10 耐斬+5 耐打+5


=======================



 うん、相変わらず強さについてはノーコメント。

 敵の攻撃を受けるつもりは更々ないから、俺にとって有用なのかも分からないしな。

 それ以外にも角や爪、心臓なんかの素材類は多数。

 いつかは使う時がくるのだろうか。


 早速、装備から入って履いてみる。

 一瞬で切り替わった、もどきボスと同じく濃い灰色の竜鱗でこしらえたであろう膝丈までのブーツ。

 だから、アイツの身体のどこから出てくるんだよ、コレ。


「あ、レイさん。また新しいドロップ品ですか? カッコいいですねー!」


 目をキラキラと輝かせながら、トレイン君はにじり寄ってくる。


「おいおい、出たよ……確率の神様は頭がおかしいんじゃないのか? ──って、俺も持ってたッ!」


 和希のインベントリにも同じドロップが入っていたようで、若干浮かれつつ、すぐさま俺と同じブーツに履き替えていた。

 トントンと足先を慣らし、クルッと一周ターンして。

 はしゃぐ和希の姿は、なんだか懐かしいな……


「ん? レイとクジカちゃんの新しい靴か。おめでとう!」


「クジカと、お揃いか──」


「な、なんだよッ! もしかして……嫌なのか!?」


「いや、幼稚園以来だなー……って、な」


 あれは確か、年長の時のお遊戯会。

 お題目は『不思議の国のアリス』だったな。

 俺と和希は、同じしゃべって歩くウサギの役柄。

 当日着た白いシャツと赤いベストにグレーのズボンが、サイズ以外は完全一致していた。

 互いの母親の策略によって。


「そ、そうだな……覚えて、いたんだな……」


 若干うつむきながら、和希は返答してきた。

 あの日は、和希がテンション上がり過ぎて大変だったんだからな。

 そのまま二人、うちの道場で夕暮れまで掛かり稽古をしたのはいい思い出だ。


「うらやますぃー……」


 そして、トレイン君はうらめしい表情で和希を見つめている。


「トレイン君は、また今度な」


「レイさん! 約束ですよー!」


 なんでそんなに食い付くのか。

 ペアルックとか、正直意識するとかなり恥ずかしいんだけど……


「レイ、そろそろ行こうか。ここさえ抜けてしまえば、バージェの大渓谷はもうすぐそこだよ」


「そうだね。レイ、これなら夕暮れ前には着けると思うよ!」


 それは重畳。

 思えば遠くにきたもんだ。


「そうか。カミラ、よかったな。もうすぐ着くってさ」


「ありがとうございますなのー! これも、レイお兄さん達のおかげなのー! でも本当は、秘密の抜け道を使ってれば、もっと早く着けたのー!」


 とても聞き捨てならない言葉を、カミラが口にした。


「カミラ、もしかして……この怪獣さんと出会わない道があったって事か?」


「そうなの! でも、レイお兄さん強いから、放置したのー」


「カミラちゃん、私……知らないわよ」


「ははは……」


 同じNPCのロザリーでも知らない情報だったらしい。

 まさかこんなオチがあろうとは。


 当のカミラには一切の悪気はないようで、はしゃぐ姿は愛くるしかった。

 本当に、データとしてだけの存在なのかと思ってしまうくらいに。

 そして──、もうすぐお別れの時が近いのかと思えば少し切なくなる。


「そう言う事か……レイ、恐らくこのイーヴァルの巣をやり過ごす事が、難易度Bのポイントだったと思う。皆、後は最後まで油断せず、慎重に進もう!」


 アーサーの掛け声と共に、一同は動き出した。


「えいえいおーなのー!」


 ……無邪気だな。





 なおも山岳地帯を登り続け、道中に出る敵は狩り続け、勾配は段々とキツくなってきた。

 大体の距離感で推し量った感じだと、そろそろ中腹に差し掛かる頃だろうか。


「チッ、また来たか!」


 さっきから、上からキノコが降ってくる。

 坂を転げ落ちるようにバウンドしながら。

 しかも、弓で撃ち落とす度に小規模な爆発を引き起こすんだ。


《スキルレベルがアップしました》


「レイはシューティングまで上手いんだな! スーサイドマイコニドは、クゥアールン山岳の名物だからね」


「コイツら……端から勝つ気はないんだろうな」


 まるで縦スクロールのコンピュータゲームのような。

 キノコの不規則なバウンドと回転に合わせて頭部を狙うんだ。

 中々難しいけど、いい弓の練習にはなる。


 というか、普通はどうやって戦うんだコレ?

 やり合おうと思ったら、痛み分けからのスタートしかないだろう。

 そもそもこのキノコは降ってきた後、まともに戦えるもんなのか。

 想像すると面白いけど……まったくもって、イヤな敵だ。


「レイ、この先右手に折れてすぐ、切り立った崖になってるから気を付けて。その下がバージェの大渓谷の境界だよ」


 後ろから声を掛ける和希の言葉通り、視界の先には岐路が見てとれる。

 なおもハイスコアを叩き出しながら進み、そのまま右手の道へと入った──が、その先の進行方向には道がなく、物の見事に半ばで途絶えていた。

 どう見ても、ただの行き止まりにしか見えない。

 

「レイ、やっと到着だな」


「──ちょっと、見てくるよ」


 一人先行して縁から下を見下ろせば、崖下には急流が走っている。

 ここが本当に指定場所だっていうのか?


「まさかコレ……降りるのか?」


 いや、さすがにそれはないだろう。

 その答えを持ち合わせていない俺は、ひとまず諦めて仲間達の元へと踵を返した。

 まだ到着じゃないのか?

 一体、どうすればクリアになるんだ?

 考えながら歩いていると──


「カミラにお任せなのー!」


「あ──」


 突然、カミラが向こうから駆け出し、俺を追い越した。

 完全に意表を突かれ、その場の誰しもが止めらない。

 俺も慌てて手を伸ばすが、届かない。


「おいッ! カミ──」


 そのままカミラは、崖から身を投げ出した──

ヾ(*≧∇≦)〃 ペアルック♪

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