15. ドミュエーヌ族、なんだそれ
「零、さっきのモンスターなんだけど……」
「ん? 羽ライオン?」
そういえば、トレイン君がマンティコアとか言ってたな。
って事はアレだ。
鬼じゃなくて、蛇が出てきた訳だ。
尻尾とか一切見えなかったけど。
「あれ、ここのエリアボスですよ……ね?」
「エリアボス?」
「そうだよ、零。称号見てみなって!」
なになに?
称号は──、あった、コレか。
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【荒野の支配者】★★
アンダルシア荒野のエリアボス、《老猾なエルダーマンティコア》『ズィール』を撃破した証。
エリア内:与ダメージ+10% 被ダメージ-10%
体力回復速度+10% 魔力回復速度+10%
移動速度+10%
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【黒竜を打倒せし者】★★★
解放クエストのレイドボス、《黒竜》『アーギュスト』を撃破した証。
ドラゴン:与ダメージ+10% 被ダメージ-10%
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【天空への挑戦者】★★★★
ドミュエーヌ族に与する陣営に対して、一定の行為が逆鱗に触れた証。
強運効果アップ 不運効果アップ
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【巨敵喰らい】★★
レベル差20以上の格上相手に単独で勝利した証。
与ダメージ+10% 被ダメージ-10%
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【豪傑】★★
一度の戦闘でレベル10以上上昇した証。
与ダメージ+10% 被ダメージ-10%
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【猛者】★
一度の戦闘でレベル5以上上昇した証。
与ダメージ+5% 被ダメージ-5%
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【彼方よりの解放者】★
地球よりユーフォリアの大地へ降り立った証。
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なんか、それ以上に気になるのがあったな。
「なあ、ドミュエーヌ族ってなんだ?」
そんなヤツ、見た覚えも聞いた覚えも無い。
なんだよ逆鱗に触れたって。
俺、何かした?
「お前……黒幕だよ! このゲームの!」
「公式では、天空に巣食う魔族っていう設定ですね」
二人から説明を受けても、やっぱり知らない。
一体、どこの誰だよ。
「へー。なんか俺、目を付けられてるらしいんだけど」
「はあ!? ……あー、もしかしなくとも、アレか──」
どうやら和希には、アテがあるらしい。
「な、何ですか、一体……」
「解放クエストだよ。つい数時間前の」
「えッ!? あ、レイって……ウソ、本物?」
「大方、討伐MVP用の称号でも貰ってるんじゃないのか?」
「ああ、そういう事か。意味分からんと思った」
それなら納得だな。
俺、やってたわ。
しかし、もっと分かりやすくして欲しいもんだ。
「まあいいや。さっさと行くぞ」
「本っ当に理不尽だな……お前」
「ごーごーなのー!」
ゆっくりと巨岩石に向かって歩き出す。
マップ三つ先って事は、まだ実質半分も来てない訳だからな。
早くしないと日が暮れてしまう。
横に和希が並んで、後ろからトレイン君とカミラが付いてくる。
相変わらず道中は見敵必殺。
巨岩石を右手に見たままぐるりと外周に沿って歩き続けると、徐々に周囲の光景は移り変わってきた。
涸れていた地面には少しずつ潤いが出始め、チョロチョロと小川のせせらぎが聞こえ出す。
これが、マップが変わったって事かな。
けど……そろそろ矢の残数が気になってきた。
俺が持っているのは、ミリュイーヌから貰った初期装備だけなのだから。
「なあ、矢ってどこかで補充出来ないのか?」
「矢? ──って、そうか。お前アンダルテで買ってないんだな。俺は持ってないし……【木工】技能は上げてないから、俺だと作ってもほとんど失敗するな。トレイン君は?」
「僕も矢は多少持ってますよ? と言っても、百本無い位ですけど。【木工】も、材料さえあれば、初級品なら多少は出来るかも知れません」
お?
聞いてみるもんだ。
「さすがはトレイン君だな。是非、売って欲しい!」
「ええ、全然いいですよ。むしろあげますって。レイさんと一緒にいる限り、僕が撃つ事無いでしょうし」
《『トレイル・エクス』からトレードを申請されました》
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蠱毒の矢 《矢》 【Uncommon】
攻12 追加効果:毒 追加効果:混乱
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トレイン君から、一方的に渡されてしまった。
後で何かしらで返そう。
それにしても、なるほど……毒矢か。
扱いには気を付けないとな。
「ありがとう、トレイン君」
「いえ、いいんですって。それに、僕はレイさんに助けられてますからね。これくらいはさせて下さいよ!」
「いやいや、金はいずれ支払うよ。まだこの後もお願いするかも知れないしな」
「そうですか。じゃあ、期待してますね!」
そうこうしている間に、左手には崖が、右手には川が、そして道幅は徐々に狭まってきた──
畄⌒ヾ(・ω-。) アゲマスヨ




