12. トレイン、トレイン
「さて、ショーの始まりだ」
なんてな。
まあ、一種の曲芸に違いない。
ここは『気流操作』のフル稼働だ。
極力早撃ちを意識して、ブレたらスキルでねじ曲げる。
まずは、続けざまに四射。
外す気は更々無いけど、狙いを定める以上に、弓を引く速度に意識を傾けて。
引いては番え、引いては番え、引いては番え、引く──
クソッ、どうやら三射目の矢が致命傷にならなかったみたいだ。
他の矢を曲げてる間に狙いの敵が動き、後ろにいた大柄な熊の獣人の肩口に突き立って、そのまま倒れ込んでいた。
動く的は、なかなか難しいな……
「お前、なにその動き──」
和希が唖然としているみたいだけど、今は構っている暇なんてない。
更に続けて四射。
引いては番えを繰り返す──
よしッ!
今度は全てが中った。
これ、緩急と角度を付けて矢同士が一定距離内にいれば、まとめて動かせるぞ。
集中力ハンパないけど。
新たな発見だ。
残るは、ひい、ふう、みい、よ……後七匹。
「おーーーい!! たーすけてくれーーー!!」
大分向こうとの距離が近付いてきて、こっちに駆け寄るトレイン君が声高に叫んでいる。
ちなみに、彼は今後トレイン君と呼ぶ事に今決めた。
名前知らないし、電車男よりはいいだろう。
それはひとまず置いておいて──
更に四射。
お互いの距離が近付いてきて、この位置からなら狙いはもう絶対に外さない。
相手が視認して、かわすまでの間に矢はもう突き立っているから。
引く、番える、引く、番える、引く、番える、引く──
よしッ!
完全に、想定通り。
残りは足の遅いのと小さくて狙いにくかった三匹、落ち着いて……
「『ピアッシングショット』」
「『スニークアタック』」
「『ヘヴィショット』」
全力でボコる。
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Rayはピアッシングショットを発動。
クリティカル!
致命の一撃が発動。
→Dorad’s Old Treeに、574ダメージ。
Rayは、Dorad’s Old Treeを倒した。
Dorad’s Old Treeは、渇いた林檎を持っていた!
Rayはスニークアタックを発動。
クリティカル!急所判定!
致命の一撃が発動。
→Andalusian bunnyに、9,660ダメージ。
Rayは、Andalusian bunnyを倒した。
Rayはヘヴィショットを発動。
クリティカル!急所判定!
致命の一撃が発動。
→Andalusian bunnyに、4,830ダメージ。
→Andalusian bunnyに、ヘヴィの効果。
Rayは、Andalusian bunnyを倒した。
Andalusian bunnyは、アンダルシアキャロット
を持っていた!
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うーん……スニークアタックって、なんだろう?
明らかに倍率が違うのな。
名前的に、卑怯な……背後からとか、視覚外からって事かな?
後、問題は、人や動物以外のモンスターだな。
頭を狙ったけど、木の急所はどうやら違うようだ。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァー……」
トレイン君はよほど全力で走ってきたのか、浅く連続で呼吸をすると、最後に深く息をついていた。
もう彼の後ろを追い回すモンスターはいない。
あ、そうそう、後一匹忘れてたな。
そりゃ。
《ランクレベルがアップしました》
《スキルレベルがアップしました》
おおう。
戦闘終了で、まとめて一気に来たのかな?
「──ッ! ハァー。あ、あの、すいませんでした! ありがとうございました!」
やっと落ち着いたのか、トレイン君。
中性的でぱっちりした目の、いわゆるかわいい系男子な顔付きで、腰には二振りの短剣を帯びている。
「いや、トレイン君の為って言うか、俺の練習の為? だから、別にお礼は大丈夫だよ」
「えッ!? あのー……とりあえず、トレイン君って、俺の事ですか?」
訳が分からない風な顔をして、トレイン君は俺を見つめる。
「トレイン野郎のトレイン君ね。分かりやすいじゃないか、零」
「えーっと、一応自己紹介しておきますね。僕、トレイルって言います。正式版からなので、今日はじめたばかりの初心者です」
なんたる偶然。
彼の本名は、トレイル君だった。
まあ、もう遅いけどな。
俺の中ではすでに決まっている。
「ぷッ! ククク……零、ニアピンじゃないか」
「ああ、まさか……だな」
「やめてくださいよー!」
イヤイヤと首を振って否定するトレイン君。
その仕草は、本物の女の子なはずの和希よりも、よっぽど女の子らしい。
残念だったな、和希……
「まあいいや。俺は零、こっちはかず……と、クジカ。そしてちびっこは、俺らの依頼人、カミラだ」
「よろしく、トレイン君」
「よろしくなの! トレインお兄さん!」
カミラにまで言われてしまったトレイン君。
効果音が付きそうなほどに意気消沈して、項垂れている。
「もう、トレインでいいです……」
マテオニー
ヘ( ・ω・)ノ
( ┐ノ
ヘ( ・ω・)ノ
≡ ( ┐ノ
ヘ( ・ω・)ノ
≡ ( ┐ノ
ヘ( TД)ノ ウワァァァン
≡ ≡ ( ┐ノ




