11. 片手間な、プレゼント
「それ、間違いなく現行最強クラスの装備だよ。しかも、部位がマントだし、マイナス補正無いし。間違いなく一生モノだって」
「へー、いいモン貰ったな。じゃあ、とりあえず装備しとこうか」
和希は、何かが吹っ切れたみたいだ。
あいかわらず荒野が続くフィールドを、ゆったりとした歩調で歩きながら、ウィンドウを操作する。
メニュー、装備からの、セットと──
おっと。
《スキルレベルがアップしました》
「うーん……変わった?」
実感は、特に無い。
ヒラヒラとマントをはためかせてみるも、よく分からなかった。
「レイお兄さん、いかしてるのー」
この首飾りは……ちょっと趣味じゃないから外しとこう。
性能面はよく分からないけど、禍々しい鎖が巻かれた剣のアミュレットなんて、なんか呪われそうだし。
カミラだって棒読みだよ。
そもそも、イカすって……この子は一体、何歳の設定なんだ?
「和希……この首飾り、いる?」
「く、くれるのか、俺に?」
よっと。
「ああ、あんまりいい趣味じゃ無いけどな」
「ほ、欲しいッ!」
「いいぞ、トレード──、これか」
《『麞』にトレードを申請しました》
「ありがとう──」
「カズキお姉さん、とってもかっこいいのー!」
俺があげた首飾りを早速装備して、和希は自分の胸元に架かる首飾りを掴み、じっと眺めている。
あんまりいい趣味じゃあ無かったのは悪かったけど、喜んでくれるなら、まあいいか。
それにしても、カミラの食い付き方の違いよ。
ほいっと。
《スキルレベルがアップしました》
「それより……これ、俺いらなくないか?」
そいっと。
「え? なにが?」
「それだよ、それッ! さっきからビュンビュン飛ばしてる弓ッ! 敵が全然見えないけどッ!? どうせ、全部一発で仕留めてるんだろッ!」
「ああ、確かに、全部一撃だけどさ。この距離があっての事だし、すぐ近くに出現したらそうもいかないぞ? それに、矢にも限りがあるからな。そらッ!」
また新たに出現したウサギのようなモンスター目掛けて、弓を射る。
遥か遠くで矢が中り、ウサギはそのまま消えていった。
徐々に街から離れるに従って、敵と遭遇する事も増えてきたな。
それにしてもこれ、余りにもリアルな世界観なのに、敵を倒した瞬間に明らかにゲームっぽくなるんだよな。
アイテムとか、勝手にインベントリに入るし。
まあ、しょうがない事なんだろうけど。
「……まあ、そうだろうけどさぁ」
腑に落ちないような顔を浮かべ、和希はそれでも並んで歩く。
「そう言えばさ、お前のランク、きしょうよほうし?って言ったっけ? 何なんだ、ソレ?」
ひゅーん。
《スキルレベルがアップしました》
「ん? ウサギが言うには、『天気予報でも出来るんじゃない?』って事らしいぞ」
「なんだウサギって?」
びゅーん。
「チュートリアルのお嬢様ウサギだよ」
「ああ、お前のはウサギか」
「和希は違うのか?」
「俺の時は熊だったな。アレ、人によって変わるらしいぞ」
「へー」
何パターンもあるのか?
そんなとこ、無駄に作り込まなくてもいいのに。
まあ、【靴磨き士】やら【気象予報士】を作るくらいだからな。
「まあ、実際の所は、【天候操作】と【気流操作】って謎スキルがあるけどな」
「お、おい、そんな重要な情報を喋っていいのかよ
ッ!? この手のゲームは情報命だぞッ!?」
「そうなのか? 初めて知ったし、別に和希にならいいだろ」
ぴゅーん。
《スキルレベルがアップしました》
「お、おう。そうだな……」
まあ、ここにはもう一人ちびっこがいるけど、別に平気だろう。
そもそもプレイヤーじゃないしな。
「ん? あれは──」
遠くに、人影が見える。
いや……あれは、人だけじゃないな。
「なんだ?」
「人がモンスター連れて走り回ってるけど、なんかの遊びか?」
遠くからこちら側へ向かって、一人のプレイヤーが、十数匹の様々なモンスターを引き連れて走り回っていた。
「それは……トレインだな。自分の腕をわきまえていない迷惑な初心者か、MPKを狙ってる悪質なプレイヤーの迷惑行為だな」
……なんだよMPKって?
ゲーム用語はマジで分からないな。
トレイン……電車?
ああ、もしかして敵のなすりつけとかって事か。
「よく分からないけど、連れてるモンスターって、倒してもいいのか?」
釣瓶打ちの練習には、もってこいじゃないか。
「俺は、止めといた方がいいと思うけどな。あんまりいい事ないぞ?」
「うーん……でも、もったいないし、やろう!」
(///Д//) エヘヘ




