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9-6

「シエルさんの話は、時空を曲げるワープか何かにジャックが巻き込まれたと理解していいのよね?」


「そ、そうです」


(ちゃんと私の説明理解してくれてるんだ……)


「息子が小旅行先から持って来たエクスカリバー、あれは空間移動の舵取りをすると聞いた事があるわ。ジャックが使いこなしているかどうかは私には分からない。でも聖剣は自らのマスターを守ろうとする性質があるらしいの。だからもしかすると、ワープに巻き込まれたとしても、希望は捨てなくていいかもしれないわ」


「そんな凄い剣だったんて……」


 アイリーンは長男に続き、次男まで失踪した母とは思えない程、あっけらかんとした調子で説明してくれる。

 この話を信じていいのかどうか、シエルに判断する事は出来ない。

 でもアイリーンが嘘をついているとは到底思えなかった。


「馬鹿らしい。そんな非科学的な性能あってたまるか」



「あの……何故そんなにお詳しいのですか? 聖剣をずっと守ってきたウチの人間ですら知らない事なんです」


「それは私達のルーツに秘密があるのよ」


「ルーツ……ですか」


「ええ。私の実家では言い伝えられている事があるの――『私達の祖先は伝説の古代王アーロン・イングラムだった』と」


「やっぱり……そうなんですね」


 今朝アルマからその話は聞いていたものの、当事者であるジャックの身内から改めて聞くと疑いようのない事のように思えた。


「あのさ、ナンセンスな事言っていいか? ぶっちゃけ、この国の貴族や地方の有力者の中には家のルーツを古代王の系譜と主張する者共がかなりいるぞ」


 ブレアは興ざめしたとばかりに背もたれに寄りかかった。


「確かにルーツの詐称をしている家はあるのかもしれません。でも私はアイリーンさんのお話を信じます。ジャックさんは特別な存在に思えるから……」


「ジャックは脳筋だけど、ヤル気を出したら何でも成し遂げられる男よ」


 シエルは今までジャックを守るとか助けるという事に拘っていた。それはたぶん自分が色んな事に巻き込んでしまって、罪悪感があったからだ。

 だけどジャックはシエルの想像を超えた力を身に着けつつあるのかもしれない。心配し過ぎるのは失礼なくらいに……。


「あ! 忘れるところだったわ。ジャックがあなたに渡した石は持っている?」


 何故かアイリ―ンはジャックがわざとシエルの家に石を忘れて、シエルにあげようとしたと思っているらしい。

 バッグから綺麗な装飾の小箱を取り出し、蓋を開けると、石は相変わらず青白い光を放っていた。


「それはエクスカリバーの鞘に付いた石を取り外したものなの。きっとあなたが石を持ち続ける事で、聖剣の本来の力を発揮しやすくなると思うわ」


「鞘の石……」


 正直なにがなんだか分からない。でもこれを持ち続ける事でジャックが救われる可能性が上がるのなら持ち続けたい。



 アイリーンとこれからの事や、訴訟は起こさない等の確認をとり、シエル達3人はバーデッド子爵家を出てから、大通りに向かって歩みを進める。


「もしかしたら貴女の力になれるかもしれません」


 ブレアの口から放たれた言葉は、道路を走る自動車の騒音にかき消される事なくシエルの耳に届いた。


「力って、何のですか?」


「ジャック氏の救出の話です。さっきのワープの話、ワームホールの事でしょう?」


「え、ええ……」


 アイリーンの話の通じやすさに驚いたが、ブレアも正しく理解している様子だ。

 魔術の専門的な話だと思っていたのだが、意外と一般教養でも習う事なのだろうか?


「俺の仕事関係のツテで、ソッチ系の魔術に詳しい人物に心当たりがあるかもしれません。紹介出来そうならまた連絡します」


「そんな便利なツテが……!」


「あ、迎えが来ましたので、この辺で!」


 詳しく聞きたくてブレアの方を向いたのに、彼は爽やかに挨拶した後、颯爽と大通りを渡って行ってしまった。


「素早い!」

 

「ふ~ん、これはなかなかいい魚が釣れそうですね」


 ルパートは好戦的な笑みを浮かべている。たぶんジャックの事等忘れ始めているに違いない。


「ブレアさんのツテで紹介してもらう人物の事?」


「もしかしたら魔術師協会から秘術を漏洩したかもしれない人物です」


「紹介相手が私だと知ったら、会わないんじゃないかな……」


「時々鋭いですね」


「まぁね……、それよりバーデッド子爵家でヨウム見なかったね」


「居ませんでしたね。どうせどこかで不貞腐れてるだけでしょう」


アーサー王伝説をモチーフにしたいんですが、アーサー王の名前を出しづらくて、オリジナル名付けてます(´・ω・`)

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