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9-3

「ジャックさんが直系の子孫……」

 そう言われてみるとうなづける様な事はあったかもしれない。

 ローズウォールのミッドランド家のカントリーハウス地下にある聖剣の保管場所にはありとあらゆる結界が張られていた。

 あの結界はかなり特殊な仕組みになっており、大きく分けて新しい部分と古い部分で構成されている。複雑に組み合わされた中で、新しい部分は解読しやすいが、古い部分はかなり分かりづらい。

 不必要そうな術式がいくつもかけられ、正規の効果とは別の効果が生まれてしまいそうに見える箇所も見受けられた。

 その様な込み入った仕掛けの結界を魔術が使えないジャックはどの様にくぐり抜けたのか?

 シエルは前から考えてみなかったわけじゃないが、今ならすんなりと答えが出せる。

 旧王朝にしかない特殊要素をキーにして、後世で上書いた部分も含めて無効化されたのだ。

 古い結界を全て消してから、新しい結界を構築しなかったのには何か理由があったのだろうか……?

 

「博物館の非公開エリアの最深部について、わたくしはエリックから少しだけ話を聞いた事があったの。あのエリアだけ古代王朝時代の遺跡をそのまま残していると」


 エリックとは、シエルの祖父の事だ。

 既に他界しているが、博物館設立の発起人だった彼は博物館の各エリアの知識が豊富だったに違いない。


「最深部の魔導具は、どの様な原理で動いていたのか全然分からなかった。ジャックさんをどうやって助けていいのかも思いつかなくて……」


「しょうがないわ……ジャックさんがイレギュラーすぎるのよ。そこに博物館自体の秘密も加わったら、すぐに対処出来なくて当然だわ。シエル、あまり自分を責めたら駄目よ」


「おばあちゃん、私まだ諦めてなんかいないよ。助ける方法があるなら何でもしたい」


「そう……、後で私の執務室の窓側の棚を調べてみて。もしかしたらエリックから引き継いだ博物館関連の資料の中に、魔導具のものもあるかもしれないわ」


「うん! 調べてみる!」


「それとバーデッド子爵家に使いを出さないといけないわね。ジャックさんについて説明をしておいたほうが後々揉めなくて済むと思うの」


 言われてみると、確かに説明すべきかもしれない。

 人が一人消えたのだから、普通に警察沙汰になりそうだ。


「私が説明しに行くよ。巻き込んだのは私だし。それに昨日ジャックさんのお母様とお会いしてるの。顔見知りだからちゃんと会ってお詫びしたい」


「いいわ。ただし、何を言われてもミッドランド家の娘として恥ずかしくない振る舞いをなさい」


「分かった」


 アルマはさっきみたいに情けなく泣くなと言いたいのだろう。




 シエルは朝食を手早く食べ、シャワーを軽くあびて身支度を整えた後、ルパートと共にバーデッド子爵家手前まで来た。

 グレーのシンプルなドレスを選んだのは、謝罪に来るのにあまりに華美なものはふさわしくないと考えたからだ。


 なんて説明しようかと悩み、中々屋敷の中に踏み込めない。



「えーと、シエル様、そろそろ行きませんか?」


 ルパートは中々入ろうとしないシエルを待つのがめんどくさくなったのか、締まりのない表情で頭を掻いている。

 謝罪の事で頭がいっぱいになってて忘れかけていたが、昨日ルパートに易々と捕まったのだ。



「ルパート、昨日はよくも……」


「もう少しお強い方が俺も訓練になるので助かるのですがね」


「くぅ……!」


「お…‥? 向うから歩いて来るのはノースフォール家のご子息様ですよ」


 前方を見ると、細身の少年がこちらに向かって来ていた。歳はシエルより上だろうか?

 シルバーブロンドがかなり目立っている。

 少年はシエル達に気付くと、一度足を止めて値踏みするようにジロジロと見てくる。


「不審者? にしては可愛い……」


 少年はシエルを貶すと同時に褒め、バーデッド子爵家の敷地内に入って行った。


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