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8-9

 扉の向こうはまた通路だった。

 どういう仕組みになっているのか、シエルとジャックが隠しエリアの通路に踏み込むと、通路の壁に備え付けられているライトの様な物が手前から奥に向かって点灯していった。


「水晶の明かりは不要の様ですね。魔導具の一種だと思いますが、充分な明るさです」

 

 シエルは手に持った水晶の光を消し、バッグにしまった。


「進みましょう」


「ああ」


 壁の魔導具に気をとられていたジャックだったが、先を進むシエルに手招きされ、追いかける。

 通路の角を曲がると、巨大な空間が広がっていた。


「わぁ……」


 シエルは、感嘆の声を漏らし、目を輝かせている。


 巨大な部屋の中には種類も様々な機器が詰め込まれていた。

 彼女はジャックの傍を離れ、足の様な物が8つ程備えた機器の下へと走って行った。

 

 ジャックは追いかけるべきか迷ったものの、常に2人でセットになる必要もないだろうと思い、1人自由に見て回る事にした。


 ブラブラとし、まず気になったのは、4輪車に大きな鋼の翼が付いた物だった。


(これがもし空を飛ぶ自動車だったら面白いな。まぁ無理だと思うけど……いや、魔導具なら可能なのか?)


 かなり興味深い。

 そのほかにもミサイルを打つ為の筒の様な物が搭載された4輪車等もあるし、ただの箱にしか見えない装置も有った。魔術を使えないジャックからみても、何が何やらサッパリ分からない。


(シエルに解説してもらいながらの方が楽しめたかもな)


 シエルを目で探すと、大きな機器の間を行ったり来たりしていて、ジャックの事等忘れ去ってしまっているようだった。邪魔しても悪いので、シンプルな箱型の機器の傍に掲げられているプレートの説明文を読んで時間をつぶす事にする。


【千里眼装置(仮) ダニエル・ローサー:装置に嵌め込まれている水晶に魔力を注ぐと、短時間だけ遠距離の景色を映し出す事が可能(ただし、僕が魔方陣を描いておいた場所に限られる)】


 名字がローサーという事は、この装置を発明した方がシエルの父親なのかもしれない。


 この部屋に置かれている装置は全てシエルの父親が発明した物なのだろうか? 30点以上あるように見えるが、20代で亡くなるまでにこれらを全て発明出来たという事なら半端な事ではない。


  

 もしかしたらこの魔導具を利用して、自分に魔力があるかないか、簡単に試す事が出来るんじゃないか? 魔術師協会に出向く事も考えていたが、手っ取り早く分かるなら、そっちの方がいいだろう。


 ジャックは水晶の上に手をかざしてみる。


 正方形の魔導具は何一つ移さないどころか、一切の変化も起きない。

 


(やっぱり俺には魔力が無いんだな)


 妙に落胆する。

 自分にエクスカリバーを使いこなせないのが分かったからか、それともシエルと魔術を通じてもっと分かり合いたいと思っていたからなのか。


 シエルを改めて見てみる。

 彼女との間に、何故か先ほどまでなかった、壁の様な物を感じ取る。


(分かってた事じゃないか。俺はただの平凡な人間だって……、って、あー何か俺らしくない!)


「シエル! 俺は奥の方を見てくる」


 気分を切り替えようと、部屋を出る事にする。


「あ、はい! もう少ししたら私も行きます」


 不思議そうな表情のシエルに手を振り、ジャックは入って来た方とは逆側に歩き、発明品の保管場所を出た。


 思考がマイナスになりそうな時は少しでも体を動かすに限る。

 

 通路を進んで次の部屋に行くと、さっき見た複数の魔導具より時代が古そうな機器が置いてあった。投石機に近い様な機器もあり、かなり時代を感じる。


(奥に行く事ごとに古い物が保管されるという感じなのかな)


 説明文等を適当に読み、ジャックはまた通路に出た。

 3つ目の部屋はさらに原始的な物が置かれていた。


 まず目に入ったのは、光に照らされた巨大なパラサイト隕石だった。

 ここまで大きな物は初めて見るかもしれない。


 琥珀色と武骨な銀が複雑に混ざり合う石に、ジャックはしばし心を奪われる。


(そう言えば、隕石の事をケインズさんが何か言ってたな……)


 先日バーデッド子爵家を訪れたケインズとの会話を思い出し、現実に引き戻される。


(ホープレスプラトゥの件が片付いたら、兄貴の捜索に本腰入れないとだな……)

 

 再び気分が重くなり、さすがにウンザリしてきてため息をつく。


(!?)


 ふいに腕輪が熱を発した様な感覚に、ぞわりとする。


(ここに、魔獣が……?)

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