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8-2

「うわ……、なんなんですか、あの人。たちが悪い」


 ケインズの予想以上に軽い口に驚愕していまう。


「諦めろ、アイツとの良い付き合い方は、どうでもいい情報を餌にして重要な情報を得る事だ。俺がお前の謹慎日の情報を売ったように」


「!?」


 そういえば、ケインズは謹慎の事をパリエロに聞いたと言っていたか。

 どうでもいい情報であるのには同意するが、本人を前にして言うのはどうなのだろう……。


 まぁ、割り切る事も大事だ。ジャックはここに来たメインの目的を優先する事にした。


「ここに来たのは、聖剣の事で副師団長に折り入って頼みたい事があるからです」


「俺に?」


「ええ、ミッドランド伯爵に聞いたのですが、副師団長は大剣の扱いにかなり長けているとか」


「まぁ、実戦で使ったのはかなり前の事だ。今は適当に素振りで使うくらいだ」


「俺に大剣の扱いを教えていただけませんか?」


 ジャックの頼みを聞き、パリエロはポカーンとした顔をした。


「人は変われば変わるもんなんだな。ヤル気の無い男だと聞いていたのに、モス卿の件といい、大剣の件といい」


「最近、自分の無力さにウンザリする事が多いだけです」


 特に最近魔術師達と関わる事になってからは、その圧倒的な力に助けられる事が多く、情けなさを感じていた。

 彼らは特殊な人間だからと割り切るのは簡単だが、くだらないプライドがそれを許さなかった。

 自分で自分の身くらいは守りたい。というか出来たら頼られたい。

 誰に? と自問自答しそうになって、慌ててパリエロの渋い顔を凝視する事で思考を反らした。



「なるほどな! 貴族のボンボンも捨てたもんじゃない。いいぜ。教えてやっても」


「有難うございます!」


「ただし、条件がある」


「何ですか?」


 パリエロは人の良さそうな笑顔を浮かべながら、両腕を広げた。


「この部屋を掃除してくれ。安いもんだろ?」


 ジャックは改めて室内を見渡す。

 物があるべき所にしまわれていないという以外にも、天井のクモの巣や謎のガラス片等、ちょっとアリエナイ。

 陸軍内で役職についたら、世話役がついたと思うのだが、何故その人物に頼まないのか? ジャックは釈然としない物を感じながらも、承諾せざるをえない。


「分かりました。やりますよ」


 ジャックがゲンナリと答えると、パリエロはプッと吹き出した。


「お前のやる気に免じて、前払いで教えてやるよ。掃除は暇な時にでもやればいい」


「いいんですか?」


「エクスカリバーをすぐ出せるか?」


「いえ、自由に出し入れ出来ないんです」


 パリエロは、ジャックの横を通りすぎ、ドアの横の木箱が複数詰みあがった所まで歩いていった。

 彼は木箱の影に腕を突っ込み、二振りの大剣を取り出した。



「ああ、だってお前1週間かそこらでホープレスプラトゥの掃討作戦に向かうんだろ?

だったら早めに訓練を始めた方がいい」


 パリエロは何か分厚い本をジャックに投げて寄越した。


「これは?」


 本のタイトルには『ローズウォール手稿3117b』等と書いてある。


「最古の剣術教本だ。何かの役に立つから貸してやるよ」 


「……有難うございます」


(こんな本があるのか)


 中身を見てみると、意外と読みやすい文体で書いてある。

 古代書を現代的にアレンジしているのかもしれない。


「まだ雨も降ってないし、外に行くぞ」


 

 ジャックはパリエロと二人、庁舎前の駐車スペースにやってきた。

 最近になってから王都の自動車の普及がかなり進み、自動車で庁舎に訪れる者が増えたために整備されたスペースだ。基本的には役職についている者や、外来者専用なので、ジャックはあまり足を踏み入れない。

 駐車スペースには一台の自動車が駐車されている。 


「両手剣の剣術は基本的な『4つの基本的な構え』と『5つの攻撃法』を学ぶ事から始まる。先程嗜み程度には習った事があると言っていたが、この辺りは貴族様は習うものなのか?」


 リュー・パリエロは庶民出身だ。だから若干含みを持たせた言いまわしをするのだろう。


「恐らく基本的な構えのうちの『雄牛の構え』とそれを活かした攻撃は習った程度ですね」


「なるほどな。確かにそれだと嗜み程度だな。しょうがない。一通り教えるか。それと、ジャック、お前は魔術を使えるのか?」


「使えませんが」


「エクスカリバーは所持者の魔力で形成されるもんだと、聞いた事があるんだがな、まぁ俺の記憶違いかもしれない。忘れてくれ」


 そういう言われ方をするとモヤモヤとしてくる。


(もしかして、エクスカリバーを出せないのは俺に魔力がないからなのか? だからシエルがいる時にしか出せないとか?)


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