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7-14

 アルバート王子の依頼は予想以上に危険な事なのかもしれない。断った方がいいのだろうか? 魔物の巣窟に一人で行ったら、亡骸となって帰ってくる未来しか浮かばない。


「私一人じゃ流石にきついかな」


 悲しむべきは一緒に討伐に行ってくれる様な知人の少なさだ。

 自分のもつ人脈の少なさにガッカリしてしまう。


「というかあなたもしかして一人で行くつもりだったの? いくら何でもそんなの許すわけないでしょう」


「じゃあおばあちゃんも一緒に行ってくれるの?」


 アルマの最近の多忙さをよく分かっているので、シエルはダメ元で聞いてみた。


「向こう1か月以上はスケジュールが詰まっているのよね。ルパートを同行させるのは構わないわ」


 ルパートがついて来てくれるなら、多少危険でも大丈夫だろうか?


「でもアルバートが指定してくる魔獣次第だけど、もしホープレスプラトゥの主を指定した場合は隕石は今回は諦めまた方がいいと思うわ」


「さっきから気になってたんだけど、その主ってどういう存在なの?」


「主は数年前の科学実験時に出現した個体ではないの」


「ワームホールから出て来る以外でも魔獣が現れるという事ですか?」


 ジャックの質問に、アルマは首を傾げた。


「そうよ。この国には、磁場的に特殊な数値を表す場所が複数あるの。磁場ポイント別に貴族に領地が当てがわれ、強い磁場ポイントの監視をする。そこで封印されている魔獣もいるの」


「それは初耳ですね」


 この話はシエルがアルマに預けられた時、すぐに教えてもらった話だった。

 だからジャックが知らないというのは少し意外だ。


「ジャックさんは次男なのよね? だから聞いてないのかもしれないわね」


「なるほど、この国には隠された秘密が多そうですね」


「まぁ、そこまで多くはないわ」


「おばあちゃんの『多くない』はあてにならないからな~」


 シエルが頬杖をつき、口を尖らせると、アルマはシエルに肩を竦めてみせた。


「もしかして聖剣みたいに封印された個体がウチの領地にもいるという事ですか?」


「ジャックさん、そういう事よ。察したと思うけど、そうやって封印されている個体は非常に強力なの。一体どこから湧いて出てきたのか……。過去に開いたワームホールから出てきたとも推測出来るし、元々その地に居た可能性もあるし……。ともかくまともに戦って歯が立つわけではないわ」


「なるほど……」


「主だった場合はすっぱり諦める。でもそうではない個体が対象だったら行ってみる事にする」

 

「あくまでも危険が無いよう行動する事を約束出来るならね」


 アルマの口調はやや厳しい。


「もしホープレスプラトゥに行く事が決まったら、俺と一緒に行かないか? 一応俺の家の領地だから案内出来るし、カントリーハウスに宿泊させる事もできる」


「ジャックさんと一緒に!? ジャックさんの家のカントリーハウスに泊まるの!?」


 シエルは思わず椅子を立ち上がった。


「すっごい興味あります!」


 責任だとか義務だとか面倒な事を考え始め、憂鬱になっていた感情はどこかに消え去り、ワクワクとしてきた。


「カントリーハウスの管理人に、俺の友人が来ると伝えないとな」


「はい! 宜しくお願いします!」


「あなたアルバートの依頼云々関係無く、行かないと気が済まなそうね……」


「うん! 私バーデッド子爵領に行ってみたい。絶対に危ない事はしないから!」


「あなたねぇ……、まぁ王位に就いたらあまり自由に外出する事も出来ないから、今のうちは認めた方がいいのかしら」


「有難うおばあちゃん大好き!」


 アルマはひどく疲れた様子だったが、反面シエルはもりもりとエネルギーが湧いてくるのだった。


「そういえば、ジャックさん。さっきの封印の話の流れで思い出したんですけど、エクスカリバーはどうなってますか?」


 ジャックの腕に嵌った腕輪はオレンジ色の光を鈍く反射し、ゴツイながらも美しい。


「それが……、また出せなくなったんだ」


「またですか……」


列車の中でエクスカリバーを出せたのを見て、もう消える事はないんじゃないかと思ったが、そう甘い話ではないようだ。


「一応また魔獣と戦闘になったときにエクスカリバーを使う事も考えて、訓練の一つに素振りも加えてみたけど、独自流だと効果が薄いかもしれないな。王都で誰か大剣の使い手がいたら師事したいけど……」


「あら? 近衛師団にもいるわよ。リュー・パリエロという男に覚えはない?」


「パリエロさんは俺の上司です。あまり関わる事はないですが……。大剣の使い手なんですか?」


「ええ、昔ね。でも教えるくらいは出来ると思うから、頼んでみたらいいわ」


「そうしてみます!」


 ジャックにしては珍しい爽やかな笑顔から目が離せない。


(魔術でも使われたのかな……、なわけないか。だってジャックさんは魔術師じゃないんだから)


 もっと色んな表情を見たいし、色んな話を聞きたい。

 こんなに興味が尽きないのは、食べ物意外なら、おばあちゃんかジャックくらいかもしれない。

 ただ、他と違うのは、シエルの胸のあたりがモヤモヤと変な感覚になるところだ。


 シエルは何となくジャックに対する自分の気持ちの正体が掴めそうな気がした。



第7章ここで終わりです(∩´∀`)∩

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