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7-13

「ワームホールが開いたんじゃないの?」


 シエルはアルマに対し、挑む様に言った。

 アルマはシエルに話していない事がとても多い。それはきっとシエルが抱えきれないだろうと心配からの判断だろうが、把握すべき時はきちんと確認しておかないといけないような気がしていた。


「そうよ」


 アルマのアンバーの瞳はシエルと同色のはずなのに、サロンのオレンジ色のランプに照らされたそれは、ゾクリとするような仄暗さを秘めているようだった。

 その瞳にシエルは少しだけ怯むが、一度深呼吸して気持ちを落ち着かせた。


「この国でそこまでの高等魔術を扱える魔術師は限られてるよね?」


「わたくしを疑うの?」


「違う。信じたい……だから知っている事を話してほしい」


「アルマさん、俺からもお願いします。ブレア・ダグラス氏に当時の事を聞きましたが、出来るだけ多くの事を知りたいんです」


 ジャックは彼の家の領地に起こった事を既に何か掴み始めているようだった。


 アルマは手に持ったティーカップに視線を落とし、口元に薄く笑みを浮かべた。


「前にも言ったはずよ。魔術師協会は関与していないと……。でも数年前、高位の魔法陣の文献が紛失した事があったの。3日後に元の場所に戻されていたのだけど……。その中にワームホールに関しての物も有った」


「魔術師協会内に外部へ情報を漏らしている者がいたという事?」


「そいういう事になるわね」


「検討はついているの?」


「重要文献の保管室はあなたも知っての通り、魔術師協会の上層部しか入れない。入室の権限云々ではなく、入れないように認証系の魔術が仕掛けられているの。だから情報を漏らした人間は魔術師協会の上層部の魔術師か、認証魔術を無効に出来る程の実力の持ち主という事になるわね」


「でもワームホールを開ける程の魔術師なら、認証魔術くらいなら解除できるんじゃないの? だって私も以前……、あ! 何でもない……えへへ」


 シエルはウッカリ以前資料室に潜入した悪事を漏らしそうになり、慌てて誤魔化しの笑みを浮かべた。


シエルは一応魔術師協会の協会員だが、資料室への入室の権限は貰ってはいなかった。

 でも資料室にある資料を見て回ったら、そのほとんどがアルマから伝承されている様な事だったので、肩透かしをくらってしまったのだが。


 シエルはアルマに氷の様な眼差しを投げかけられ、ビクリとした。


「聞き捨てならないわね」


「君って実は色々な悪事をやらかしてそうだよな」


 ジャックも呆れたように呟いた。


(あー言わなければよかった!)


「まぁ、あなたに限って情報を漏らすという事はないでしょうけど、協会員個人のデータ等もあるから、気軽に立ち入ってほしくないのよ」


「ごめんなさい……」


「分かればいいのよ。で、情報を外部に漏らした人物はおおよその目途はついているものの、絞り切れてはいないという事よ。ただハッキリしているのは科学省や『地獄の門』への接触はあったはず。ブレアに聞いても、ルパートを秘密結社に潜入させてみても、魔術師協会を挑発している魔術師が誰なのか明らかにならないのよ」


「一応の目途はついているのね」


「ハッキリしない状況で容疑者の名前を伝えたら、その人の名誉にもかかわるから言わないわ」


「そう……」


 アルマが協会の魔術師達を大事にする気持ちは痛いくらい分かる。今は深く詮索しない方がいいのかもしれない。


「アルバートはホープレスプラトゥでどの魔獣を討伐してこいと言っていたの?」


「ルパートを通して伝えるみたい」


「嫌な予感がするのよね。もし討伐対象がアイツだった場合、かなり厳しい事になるわ」


「アイツ?」


「そう。今、ホープレスプラトゥ鉱山の主とも言える存在じゃないかしら」


「主がいるの? というかおばあちゃんはホープレスプラトゥに行った事あるの?」


「魔獣に対処するのはいつでも魔術師協会の仕事よ。半年程前に長期で家を空けた事があるでしょ? その時に調査兼討伐に行ったの。数はだいたい3分の2程は削れたはずだけど、鉱山をひたすら歩き回る事はしなかったから、まだ多数残っていると思うわ」



 ローズウォールに住んでいた時、アルマは長期で家を空ける事がたびたびあった。

 半年前も確かに泊りがけの任務に行っていたかもしれない。


 それがまさかジャックの家の領地だったとは……。

 しかも状況は近年稀なレベルで酷いようだ。


「そこまで数が多いのね……」


「ブレア・ダグラス氏によると、独自の生態系を作っているらしい」


「ジャックさんが言う通り、半年前からまた数が増えている事も充分あり得るわ」

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