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7-12

 アルマはカウチに深く腰掛けながらシエルに問いかけた。

 シエルは聞かれたくなかった事を話題に振られ、眠気が一気に吹き飛ぶ。


「ええと、土産物屋さ……あ、違った、王子様? に妨害されて持ち帰れなかったの。ごめんなさい……」


「王子ってアルバート様の事か? ていうかこんな時間までやってるオークションってあるんだな」

 


 先ほどのジャックの謎の眼力を思い出し、シエルは彼の方を向きそうになるのをグッとこらえた。挙動不審になるのはもうごめんだ。


「ええと……、おばあちゃん、ジャックさんに話てもいい?」


 秘密結社の事はジャックは知らないはずだが、安易に漏らしていいのか気になる。

 このままアルマと話を続けるべきかどうか判断がしづらく、シエルはアルマの方をチラリと見る。

 アルマは少し考える様なそぶりを見せた。


「ジャックさんは『地獄の門』というクラブをご存知かしら?」


「ええ、俺は1年程前にそのクラブから勧誘された事があります。それに今朝ケインズさんの口からもそのクラブ名を聞きました。パラサイト隕石とかいうのを大量に買い占めているとか……」


「え!?」


 ケインズさんという方は西ヘルジア中央鉄道会社の役員と名乗っていただろうか?

 シエルはあまり付き合いが多くない人物の情報を必死に思い出そうとした。


「ケインズは情報通なのよね。彼がジャックさんにアプローチして来たって事は何かの働きを期待しているのかしら?」


「俺は単に彼の弟さんに会わせたいからウチに来たのかと思いましたけど」


「ああ、なるほどね。ノースフォール公爵家の嫡男に会ってきたと……。あの子はなかなかのクセ者よね」


「何でケインズさんの弟がノースフォール公爵家の嫡男に繋がるの? ちょっとついていけない……」


「ケインズさんは、ノースフォール公爵と彼の愛人との間に出来た子なの。普通ならそういう人って一族と疎遠になるものだけど、公爵夫人の懐が深いのね。家族同然の付き合いをしているのだそうよ」


「そうなのね……、どういう夫婦関係なんだろ?」


「夫の浮気に呆れすぎて、一周まわって博愛主義になったと聞いたわ」


「へぇ……」


 別世界の話すぎてシエルの理解を超えている。


「愛人とか、隠し子とか、今はそんな事はどうでもいいわ。ジャックさんにも通じるようにオークションの顛末を話してちょうだい」


「うん。今日地獄の門主催のオークションがペラム男爵邸で開かれてたんで、参加してきたんです」


「ペラム?」


(あ……、そういえばジャックさんの元恋人ってペラム男爵令嬢だったっけ……)


 今日そのような事を耳に挟んだのを思い出し、シエルはちょっと気まずくなる。

 あなたの元恋人の家ですね! なんて話を振る勇気がないため、微妙な表情をするジャックを放置してシエルは話を続けることにした。


「その秘密結社、魔術師協会として見過ごせない事をしているので、キーになるパラサイト隕石の魔道具をオークションで落札しようとしたんですよ。そうしたら、アルバート王子が妨害してきて、横からかっさらって行ったんです!」


「ふぅん……アルバートも暇人ね」


 アルマは呆れたように溜息をついた。

 まさしく暇人という名にふさわしい! とシエルは力強く頷いた。


「負けて終わるかと思ったんですが、何故か王子に取引を持ち掛けられました。私が隕石の落札金額の1億5千万G分の働きをしたら隕石を譲ってくれるらしくて……」


「その働きというのは?」


「ホープレスプラトゥ鉱山に生息する魔獣を討伐して、出来たら亡骸を秘密結社に渡してほしいと言われました」


「ホープレスプラトゥ鉱山は俺の家が所有している鉱山だ。偶然俺もさっきその場所に関して面倒な依頼を受けたところなんだ」


「ジャックさんも? むむ……」


 この鉱山の事はシエルも聞いた事があった。主に魔獣関連で……だったが。

 確かにバーデッド子爵領という話も聞いていたかもしれない。

 

 王都までの列車の中でのジャックとの話の中で何故ピンとこなかったのか。


(え……ちょっと待って。列車の中でジャックさんは科学実験の失敗で爆発事故が起こった場所を鉱山と言っていたよね? というか何でそこに魔獣がウジャウジャといるの……?)


 頭の中で何か重要な事に思い当たってしまったような気がした。


「ジャックさんの前話してた鉱山での科学実験って、この鉱山で行われた事なんですか?」


「ああ……」


「それがきっかけで、魔獣が現れたとか?」


「流石わたくしの孫ね。察しがいいわ」



 シエルの想像が正しいのなら、ジャックを取り巻く環境は最悪の事態になっているのではないだろうか? シレっと受け答えするアルマが信じられない。



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