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6-7

「嘘……、魔獣はワームホールから出現するんじゃないの?魔術を使えない人にそう易々とワームホールを開けると思えない」

 

 予想を超えるルパートの回答に、シエルの思考は混乱してくる。

 ワームホールを開くなんて事はシエルもアルマも出来ないのだ。

 魔術師としてのプライドが大きく傷つくような思いだ。


「一般人が魔獣を呼び出せるなんて、由々しき事態ですね。国家の安全面の危機ですよ……」


 部屋の中にハドリーの神経質そうな貧乏ゆすりの音が響く。


「2人とも落ち着きなさい。ルパート、もったいぶらずに話すのよ。あなたは魔獣を呼び出すプロセスを見てきたんでしょ?」


「申し訳ありません。皆さんを充分に驚かせてから話したくなって……」


 ルパートは悪びれずに、ヘラヘラとした笑いを浮かべた。


「お三方はパラサイト隕石をご存知ですか?」


「ええ、知っているわ」


「一応本で学んだ事があるよ」


「アストロブレームの繁栄の資金源になった鉱物なので、勿論知っています」


 三者三葉に返事をすると、ルパートは満足そうに頷いた。


「流石皆さん博識でいらっしゃいますね。そのパラサイト隕石なんですけど、魔術的な利用価値の高いようです」


「水晶で似たような事が出来たけど、隕石は自分の魔力を起爆剤とする必要がないということ?」


「そうです。これを見てください」


 ルパートはポケットから拳で握れるサイズの隕石を取り出した。


「!」


「随分小さいサイズね」


「俺の一か月の給料で買える限界なので」


 ルパートは隕石をハドリーに握らせた。


「あの……これは……?」


 ハドリーは腕を伸ばして隕石を出来るだけ顔から放している。何が起こるか分からないから怖いのだろう。

「魔術使えませんよね?向うの壁に思いっきり投げつけてください」


「確かに使えませんが、アルマ様の壁に石ころを投げつけるなんて出来ません……」


「外でやる?」


 動揺するハドリーにシエルは助け船を出した。


「ここでやってみなさい。ハドリー。何が起こってもこちらで対処できるわ。たぶん」



 アルマはたぶん外に出るのがめんどくさいだけなのだ。

 もうちょっと気を遣えばいいのに、とシエルは思わなくもない。


「ハドリーさん頑張ってください……」


「了解いたしました。ご命令に従い、アルマ様の部屋の壁に石ころをぶん投げさせていただきますね!」


 ハドリーは大きく振りかぶるとさっきの謙虚ぶりは何だったのかと思えるほどの勢いで壁に隕石を投げつけた。

 隕石は見事に割れ、部屋にバリリと耳障りな音と共に閃光が走った。


 小さな隕石のわりになかなかの威力のようだ。


「今、私は魔術を使ったような感じなんですか?」


「あなたの魔力を使用したわけじゃないし、爆弾を使ったようなものよ。でも様々な種類の効果を持たせた隕石があれば、会員としてはそれで充分なんでしょうね」


 ハドリーの震え声にアルマは冷静に答えた。

 自分の室内でスパークが起きた事等、アルマにとってはどうという事もないようだ。


「おそらくこの魔道技術は東から持ち込まれたと思います。西と東とでは魔術師同士は分断されてましたから、このような技術が発達していると知りませんでしたが、向うでは盛んに開発を行っていたんじゃないかと……。秘密結社ではここ数年頻繁に東との交流を行っているみたいでしたから」

 

 東の技術はこんなに進んでいるのかと、シエルは悔しい気持ちになる。

 西ではもう隕石は採りつくしており、手に入りずらい為、シエルは王都に来てから初めてみたくらいだった。

 

 自分の魔力を起爆剤にしなくてもいいのは、もしかしたら鉱物の性質なのかもしれないが、どちらにしても興味はわいてくる。


「これだけだったら、一回使用するだけで終わりですけど、これが一般人が行う召喚に使われることが問題なんです」


「詳しく話してちょうだい」




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