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6-5

「ローズウォールに住んでいた魔術師達はあとどのくらいでアストロブレームに移ってくるの? 」


 シエルがローズウォールに住んでいた時、魔術師協会に所属する者達は家族の様なものだった。アストロブレームでの知人が少ないシエルにとっては、今すぐにでも会いたいくらいだ。

 ちなみにシエルがアストロブレームに移動してくる列車に同行してきた魔術師達はモス卿に睡眠薬を盛られたようだったが、幸いな事に命に別状はなく、ミッドランド家に滞在し、アルマの仕事を手伝っている。


「もう1,2週間でアストロブレームに移住出来るみたいよ。王都の魔術師協会支部は建物が小さめだから、アースラメント宮殿近くの建物を買い取って、魔術師協会の本部の体裁を整えないといけないわ」



「王都と魔術の機能を一極集中させるのは一大業務ですね……。そういえば、魔術で思い出していたのですが、最近王都では魔力を持たずとも魔術を使える者達がいるという噂がありますよ」

 

「なにそれ!?」


 魔術師としては聞き捨てならない話なので、シエルはハドリーの方に身を乗り出した。


「王都のとある秘密結社に入会している者達の事でしょ?」


「ええ」


「秘密結社……?」


「アストロブレームにある地獄の門という団体です。最近になって貴族を中心に急に会員が増えています」


 秘密結社という単語はあまり聞く事はない。

 夜中にこっそり集まり髑髏を祭壇に捧げたり、魔法陣を書いたりする怪しげな人達を想像するが、なんとなく魔術師協会と似たような感じにも思え、シエルは内心おや? と首を傾げた。


「ローズウォールに居る時ですら悪評が聞こえてきていたわよ。クラブの会員が破産寸前まで追い詰められたり、精神を病んでしまったり、忽然と姿が消えたり……。不穏な存在よね」


「王都の若者の中には魔術に対して憧れを抱く者が少なくないと聞きます。社会学者等は、急速な社会の発展の中で、自らの無力感を思い知らされる事が多いため、超自然的な力を求めるようになっていると分析しているようですね。つまり特別な存在になりたい人間が多くなっているのです」


 王都の人間は、魔力を体内に取り込める能力が有る者はだいたいはローズウォールに送られ、魔術学校で魔術を学び、その後それぞれの人生を歩む。

 魔力を使える事で親元を引き離される事が幸せだとはけして言えないと思うが、魔力を持たない者も自分の能力の限界に嘆くのか。

 ハドリーの話を聞きながらシエルは「魔術を使えない側」の考えを初めて知った。


「地獄の門クラブはそのような心の隙間に付け入ったのね。これが魔術的な事と一切関係がないのなら、好きにしたらいいと放置出来るのだけど、一般人には魔術師が悪事をやらかしているように見える事が問題なの」

 


「魔術師の印象が悪くなるから?」


「そうよ。ローズウォールから大量の魔術師がアストロブレームに移り住むというこのタイミングで、、魔術師の悪評が立つのは少しまずいわ」

 

 魔術師に対しての偏見が満ちた都市の中では、ローズウォールからやってきた魔術師達が差別に合い、何等かの事件が発生してしまうかもしれない。


「おばあちゃん、その秘密結社を調べよう!皆がここに移住してくる前に」


「そうね。魔術師達がアストロブレームに来て早々苦境に立たされる様じゃ先が思いやられるもの。不安要素を調べ上げて、まずいようなら対処しないといけないわ」 


「私はまだ現王朝のお世話等をしなければなりませんが、出来る限り助力いたします」


「ハドリー、あなたの仕事はあくまでも王朝の世話をする事なのだから、気負う必要はないわよ」


「お気遣い有難うございます。アルマ様」


  


「それにしても、秘密結社の内部を調べるってどうするの?」


「実はもうルパートを潜入させているのよ。上京してきたヘルジア大学の学生として私達が王都に移住する前から入会してもらってたの」




 アルマはメイドにルパートを呼ぶように言った。


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