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「おばあちゃんを迎えに行ってもいいですか?ここにはもう守るべき一般人も生きている魔獣もいないですよね?おばあちゃんは大丈夫だと分かっていても、じっとしてられなくて」
蒸気機関車は結局2号車以降の車両から1km~2kmは離れて停車した。
孫が様子の見えない祖母を心配する気持ちは十分共感出来る。
「行こう。お互い生きてる姿を確かめ合った方がいいだろう」
「その必要はなさそうですよ」
「え?」
ルパートが指し示す方を見ると、1台の馬車が線路沿いの小道をこちらに向かって走って来ていた。
御者台にはケインズの姿が見える。
ボックスタイプの座席をよく見るとアルマがさっき別れる前と変わらぬ優雅な姿で、こちらに向かい、小さく手を振っていた。
「おばあちゃん!!」
シエルは2人を待っていられないとばかりに走り寄って行った。
「シエル、無事でいてくれてよかったわ」
キャリッジから降りて来たアルマがシエルを優しく抱きしめた。
「おばあちゃんは無事なの?まさか怪我をした?」
「わたくしはどこも怪我なんてしてないわよ。通りがかりの駅でケインズさんが待っていてくださったから、彼の好意に甘えたの」
「ケインズさん、祖母が無理言ってすいません!」
「無理だなんて、とんでもないです!私はアルマ様を背に乗せ、四つん這いで王都を目指してもいいくらいだったのですが、アルマ様が馬車での移動を希望されたんです!なんと心優しい……」
恍惚とした表情をするケインズのMっぷりに戦慄を覚える。
絶対にこういう30代にはなるまいとジャックは密かに決意を固めた。
「皆さん馬車に乗ってちょうだい。ここから王都まで距離にして60km~70kmはあるのよ。馬車で4時間以上かかるわね。狭苦しいけど、歩くよりはましだと思って我慢してね」
「4時間もあるの!? お腹空いたよ!」
「飴あげるから我慢しなさい」
シエルとアルマの平和なやり取りを聞きながら、ジャックは漸く現実味を感じられてきた。
上司とのあり得ないやり取りや、魔獣との戦闘でだいぶすり減っていたかもしれない。
王都まで何も現れなければいいと思わずにはいられない。
ローズウォールに来て、当初の想像以上の収穫があった。
だけど失ったものもあった。
ジャックはもしかしたら明日からニートかもしれない。
(まぁ、それならそれで……)
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