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15-1

「ジャック様、お忙しい所申し訳ございません」


 作戦3日目の夜の全体会議を終え、カントリーハウスの自室に戻ろうとしたジャックを呼び止めたのは、バーデッド家の執事だった。


「どうした?」


 執事の表情は常の穏やかさからは考えられない程、当惑している様に見える。


「少しこちらへ」


 誘導する執事付いて行くと、廊下の端で止まった。


「実はですね。使用人の中にブライアン様を見かけたと言い出した者がいるのでございます」


「え……? 到底信じられないけど」


 ジャックはローズウォールでブライアンに会った事を思い出す。

 その時の彼の普通ではない様子と、過去から戻って来た後にシエルから伝え聞いた状況を合わせて考え、執事の話に眉を寄せた。


「いつ? どこで?」


「今日の夕方でございます。ホープレスプラトゥ駅の改札付近で見かけたと……」


「見間違いじゃないのか?」


「それは私には分かりかねます」


 執事の言葉にジャックは頷き、窓の外を見る。

 既にもう陽は暮れ、暗闇が広がっている。


「自分で確認するしかないか……」


 ジャックはエントランスに向かって駆けだす。


「ジャック様!?」


「パリエロ副師団長に、ホープレスプラトゥ駅に行くと伝えてくれ!」


「かしこまりました。ジャック様……どうかお気を付けて」


 執事はもの言いたげな顔をしたが、ジャックを止めはしなかった。


 ジャックは馬小屋から馬を外に出し、鞍を付けてまたがる。

 魔獣の掃討はだいぶ進んでいるとはいえ、こんな夜中に出かけるなんて危険極まりない行為だ。


 目撃されたのは夕方だからもう居ないかもしれない。それなのにジャックははやる気持ちを抑えられない。


(兄貴今度こそ……!)

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