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14-13

「大昔も行われた方法よ。ヘルジアの地においてアースラメントに敵対した魔術師の命を使い、神獣を封じる力とするの」


「敵対って……」


「東ヘルジアの有力な魔術師は……術に供するに足る程の者は確認できているだけで8人はいるはずよ。その者達を生け捕りにしない手はないわ」


 アルマの話の中の東ヘルジアの魔術師という言葉を聞き、シエルの心臓は騒がしく音を立てる。


「マ……ママは対象じゃないよね……?」


 シエルの母は東ヘルジアの有力な魔術師の一人だと聞いた事があった。

 随分幼い時に離別した彼女は、記憶の中でいつも優しく微笑む。

 母に会いたいという焦がれる様な思いは、誰にも言えないまま、シエルの胸の内に小さくしまい込まれている。


「それを知ってどうするの?」


「もしそうなら、おばあちゃんを止めるんだよっ。私はママを――」


「あの女のせいでダニエルは、貴女の父は死んだのよ。……まぁ、そんな事は置いておくにしても、国と貴女を守る為に役立つなら、貴女の母だろうと利用する。それだけよ」


「人の命を使った術が禁忌だって……! そう教えてくれたのはおばあちゃんだったよね!? だからお願い、他の方法を私と一緒に考えてよ!」


 何故こんなに母の事を巻き込みたくないと思うのだろうか? ほとんど記憶がないというのに……。

 アルマと過ごした時間の方が長いのに、彼女との関係が壊れるかもしれない事を考えても、シエルはアルマの計画を止めたいと思うのだ。


「200年前に東西が分裂した時から西側の魔術師の長期的なスパンの方針で決まっていた事なの。東があるからこちら側の魔術師の命を多く残す事が出来る。割り切りなさいシエル」


「そんなのおかしいよ……」


「東の魔術師達を生贄に捧げた結果、両国で戦争が起こる。結構な事じゃない。いい機会だからこの地を統合するのよ。今からもう500年も経てば、神獣に対抗できる程に科学技術は進歩しているでしょう。今だけ……同胞を犠牲にして耐えればいいの」


 アルマはとうの昔に覚悟を決めてしまっている。

 そして今日この日までの間にも、シエルが今更どうこう出来ない程に深く手を加えているのだろう。

 彼女を止めたいのに、止めてしまったらどこかに不具合が起きるのかもしれないと思えば、シエルはもう何も言えなくなった。


「疲れているでしょうに、こんな話を聞かせて悪かったわ。貴女は明日も一日式典で忙しいのだから早く休むのよ」


 アルマはシエルに優しく微笑み、彼女の執務室に入って行った。


 その後姿が無性に悲しかった。


 弱さを見せないアルマはシエルを守る為にいつでも壁を作る。

 アルマの事が大好きなのに、血がつながっているのに、こんなにも遠い。


もう5分以内にもう一話投稿します!

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