12-6
ブレアとの少し早めの夕食をとった後、シエルは自室で外出の準備をする。
ストライプ模様のワンピースドレスの上から腰にホルスターを装着し、魔導銃を装備する。
さらに、コートを羽織って物騒な銃を隠した。
ポシェットの中に呼びの弾倉を3つと、魔力を供給しておいた水晶を2つ入れ、ジャックから預かった青い石はコートのポケットに突っ込んでおく。
壁に立てかけておいた杖をコート背面の固定具に括り付けて準備完了だ。
シエルは自室を出てエントランスに行く。
待ち受けていたかのように執事が扉に手をかけ、開けてくれる。
「帰りは少し遅くなると思う。おばあちゃんには博物館に行くと言っておいてもらえる?」
「かしこまりました。どうかご無事で……」
執事の表情から心から心配する思いを汲み取り、シエルはカラリと笑ってみせた。
たぶん射撃訓練の様子を見て何かに勘付いているのだろう。
外に出ると既に自動車が前庭に停められていて、中でルパートとブレアが待っていた。
シエルが乗り込むと、ルパートが振り返る。
「出発しても?」
「うん、お願い」
自動車はやや粗い運転で走り出す。
2人とも何も話そうとしないので、シエルはブレアに気になっている事を聞く。
「ブレアさんはブライアンさんと関わった事があるんですか?」
「そうですね。ブライアンとアルバートは大学時代に俺の後輩でした」
「んん?」
ブレアはどう見ても話にあげられた2人よりも若く見えるため、混乱する。
「あ~、俺は飛び級しているので」
「ブレアさんは随分優秀なんですね」
「まぁ勉強だけは得意だっただけです。柔軟な発想力とかの面ではブライアンの方が優れていたかもしれません」
プライドの高そうなブレアにここまで言わせているのだから、ブライアンはかなり出来がいい人間の様だ。
「ブライアンは変な奴ですけど、性格はいいと思います。話し合う事が出来たら、ジャックさんは弟でもあるし、すぐ強力してくれるはずです」
「簡単にいくならいいんですけど、伝説の武器に意識が乗っ取られている時間が多いようで……、今回うまくいくかどうかは賭けになるかもしれません」
「そういう非科学的な現象について、何も言ってあげられないんですよね。言葉で聞くだけではどのような状況なのか想像が難しい」
「私は一度、エクスカリバーの人格の様な存在と対した事があります。意思疎通は……割といけるんじゃないかと想像してます。でも話し合う事が無理でも力ずくで身柄を確保しようと思ってます。今回無理でも次のチャンスを得やすくなりますからね。それに、子爵家にとってもいい事だと思うんです。ジャックさんにもしもの事があった時のためにも……」
冷たい言い方になってしまったかもしれない。
ブレアのもの言いたげな視線が突き刺さる。
「諦めたわけじゃないんです。可能性の話をしているだけです」
「分かってますよ。このままだとシエルさんの心が死んでしまいそ……ゲホッゲホッ。いえ何でもないです。全力を尽くしましょう」
「はい!」
人通りの多い大通りを抜け、自動車は博物館前の広場の駐車スペースに着く。
時刻は19時50分
待ち合わせまで10分程余裕がある。
シエルがルパート、ブレアと共に博物館に向かうと、神殿を模した博物館入口付近に明かりが1つ灯っていた。
この時間、博物館は消灯されているはずなので、明かりの主はエレインに違いない。
シエルがいる場所から入り口まではそこそこの距離があるが、うっすらと4人いるように見えた。
(エレインさんと、侍女……、他2人は誰だろ?)
15分以内にもう1話投稿します!




