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2人の会話が終わるのを待つわけもなく、ジャックに対して斧が振り下ろされる。
それを危なっかしく避ける。
地面にめり込んだ斧をタローンは易々と抜き取り、ブンッと空気を切り裂く思い音とともに、斜めに振られるので、身を低くする事で躱す。
(奴の足元に潜りこめないか……?)
ジャックはタローンと斧の動きのパターンを観察する。
再びとんでもないスピードで振られた斧を転がるように避け、そのまま足元にダッシュした。
「食らえ!」
ありったけの力を込めてタローンの足にエクスカリバーを刺す。
――グゥゥ……!
足を貫通させ、地面に縫い留める事は叶わなかったが、タローンの堅い金属で出来た足には凹みが出来ている。
タローンが足を振り上げるので、ジャックは股を潜って後ろ側に回り、膝裏に刀身を叩きつけた。
――小賢しい真似を!
タローンの身体はガクリと揺らいだ。
(このまま奴の身体を地面に引き倒せないか!?)
思いのほか上手くいったため、もう一度同じところに打とうとするが、後方にブン回された斧を慌てて避けるのに、体制を崩した。
「ジャック! 避けろ!」
ハーディングの怒鳴り声を聞き、咄嗟に横に転がると、今までいた所に斧の刃が縦に突き刺さった。
すぐに起き上がろうとしたジャックの身体は、容赦なくタローンに蹴り飛ばされる。
「ぐあぁ……!」
足や胸に激痛が走る。
(半端なく痛てぇ……。これ、骨が折れたんじゃ?)
あまりの痛みに逃げる事も出来ず、タローンに胴を掴まれ、そのまま巨人の顔の位置まで持ち上げられる。
「ジャック!!」
――エクスカリバーは王に返してもらう。石ころはどうした?
「……だから、石ころって何なんだよ……、ゲホッ」
呼吸もままならない状態の中、ジャックはタローンに問いかけた。
――鞘の石だ。青く光る……返せ。
『光る石』
その言葉にハッとした。
「シエル……」
(コイツが言っているのは、シエルにあげた石の事か!)
思わず名前を呟いてしまった事に後悔する。
知られたら、ターゲットがそちらに向く可能性がある事に思い至ったのだ。
――シエル……その人物が持つのか。お前を殺し、その人物も殺す……。
「出来るわけない! この時代にいないんだからな!」
ジャックは口から血を流しながら、タローンを睨んだ。
――貴様、未来から転移してきたな……、なるほど、我はその時代に再び目覚めよう……
時代が違う事から、タローンの脅威はシエルには及ばないと考えるのが普通だ。
だが、1400年経ってもターゲットであり続けたらどうだろうか?
(あの子を危険に晒すわけにはいかない……)
「お前はここで倒す!」
エクスカリバーは強く青い光を発した。




