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10-5

「それ……、裏があるわけじゃないよね?」


 オークションの時に出会ったアルバートの様子を思い出し、一応疑ってみる。

 そんな簡単に隕石を譲ってくれるとは正直思えない。


「どうでしょうね……。普通の人間にとって、魔獣はかなり弱い個体ですらも脅威になりますから」


「まぁ、そうなんだろうけどさ……」


 魔力が無いアルバートにとっては、魔獣のランクは特に意識しないという事なんだろうか? 単に『主』の存在を知らないとう事もあり得るかもしれないが……。


「というか、改めて聞きますけど、ジャックさん抜きでホープレスプラトゥに行きます?

 一緒に行くのを楽しみにしてましたよね?」


 オレンジ頭の男性の話を振られた事で、少し動揺する。


「行くよ。別に遠足が目的だったわけじゃないの。主目的を果たすよ」


「了解いたしました。では魔術師協会に人員を割いてもらえないか問い合わせてみますね。俺とシエル様だけでも何とかなるかもしれませんが、現地で何が起こるか分かりませんので念の為……です」


 いつも飄々としている自信家のこの男も不安に思う事があるらしい。

 ホープレスプラトゥがそれだけ危険地帯になっているからなのかもしれない。


「分かった。じゃあお願い」


「はい。では俺はこれから用事を足してきますので、これで」


「いってらっしゃい」


 ルパートを見送ると、様子を見計らっていたらしい執事が近づいてきて、用がないかと聞いてくる。

 シエルは問題ないと伝え、2階にある自室に引き上げる事にした。

 ここに長居していては、無駄に心配をかけるだけなのだ。


 自室のドアを開けると、開きっぱなしにしていた窓から強い風が吹いてきて、飛ばされてしまった紙の資料が何枚か足元に落ちた。

 口を尖らせながらそれらを拾い集め、デスクまで持って行く。


 窓の外はすっかり薄暗くなっていた。

 王都の夕方は夕焼けを見れる事が少なく、一日があっという間に終わってしまうような感覚になる。


 窓を閉め、シエルは一つため息をついた。


(ジャックさんのお母様は無事なんじゃないかって言ってたけど……、それなら今頃どんな状況なんだろ? お腹空かせてないといいな……)


 ジャックが消えてしまう事件があってから、シエルは全然食欲が無くなってしまった。

 ジャックが辛い目にあってるかもしれないのに、自分だけ楽しむ事に抵抗を感じていた。


(ブレアさんは、何か宛てがあるって言ってたけど、しょせん他人だし、任せっぱなしに出来ないよね)


 今日同じ会合にブレアの姿もあったが、特に話しかけてくるという事も無かったので、昨日の彼の申し出は聞き間違いとして忘れた方がいいのかもしれない。


 やはり自分で何とかしなければならない。

 シエルはデスクのライトを灯した。


 昨日バーデッド子爵家から帰って来てから、シエルはアルマの部屋から博物館の資料を借りずっと品目を調べていた。

 博物館には祖父の時代には既に数百万点も保管していたため、対象物を探すのは難航した。だが普通の目録に書いてあるわけがないと思い至ってからは、結構すぐ見つかった。


 シエルはデスクの上に置いたままにしていた日記帳を手に取った。

 几帳面だった祖父は博物館設立に至ったまでの過程や、この建物が建てられる前にこの土地に建てられていた建造物等について詳細に書き残していてくれていた。


 栞のページを開くと、古びて変色した写真が貼り付けられている。

 現在の神殿風の外観とは大きく異なり、ここに以前たてられていたのは、大昔にアストロブレームの地を治めていた歴代の領主たちが住んだ石造りの古城だったようだ。

 写真はその解体現場を撮影した物だった。


 この古城の中には幾つか移動させる事を躊躇う代物があったようで、それらの品々の説明が後のページで記されていた。


 日記帳を数ページ捲ると、件の魔導具の写真が貼られているパージがあった。

 エリックは羊皮紙に書かれた古文書等を調べ、この魔導具の由来や用途を調べた様だった。


 古王朝であるイングラム家からシエルの先祖、アースラメント家が略奪してきたものであり、用途としては、召喚の儀式に使われていたらしい。

 イングラム家の魔術師は恐ろしい事に、そこから魔獣を呼び出していたとも記されている。その事実の発覚からアースラメント家と対立が深まったらしい。


(たぶんこれは、勝った側を良く見せようとするためにこじつけられた理由、って側面もあるかもね)


 肝心な起動方法は、古王朝の血族の特殊な力でのみ可能と記されているので、素直に読めばシエルが再び起動する事は不可能そうだ。


 ――でも……。


(許されるのかな……? 私……)


 シエルは一つの方法を思いついていた。





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