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-絞首台の執行人- 第一章

 ご観閲ありがとうございます。


 こちらは、ヒューマンドラマ的ミステリー小説です。

 それぞれのキャラクターの生い立ちや性格をしっかり分析し、何度も書き直して出来上がった物です。


 天才…が数人出てきますので作者本人の知能が追いつかない部分もあります。後半になってくると、ヒューマンドラマ要素が高くなってきます。

 前半は事件の検証が主なので、少し退屈かもしれませんが、宜しければおつきあい下さいませ。



※ネット小説用に改行をし、分かりやすく表示している部分があります。



 都内の高等学校で、女子生徒の絞首死体が発見された。

 校舎に向かって左側。

 正門に足を踏み入れる際、誰もが目にするであろう桜の木の幹に、少女は吊る下がったままで息絶えていた。


――第一発見者はこの学校の教頭。


 彼は毎日、誰よりも早くこの学校に出勤し、門の鍵を開けている。この日もいつもの様に、正門の鍵を開けた。

 正門の入り口には樹齢四十年程の大きな桜の木が、左右に三本ずつ並んでいる。入学式を済ませたばかりのこの時期は、桜の花が満開を迎えていた。

 教頭は桜の花を愛でようと門に一番近い桜の木に接近し、死体に気が付いた。


――通報を受け、駆けつけた所轄警察官の所見。


 女子生徒は木の幹に電源延長コードを結びつけ、膝をついた姿勢で首を吊っており、手首も切っていた。側には血のついたカッターナイフとウイスキーのボトル、グラスが転がっていた。

 首を吊る前に酒を飲み、手首を切ったと思われる。

 他殺の形跡が無い為、自殺と判断した。


挿絵(By みてみん)




 代夜来しろやらいは、ワイヤレスイヤホンの音量を下げながら歩いていた。わざわざスマートフォンを出して操作せずに済むのは、ワイヤレスの良い所だと思う。

 友人の勧めで聴いているこのアーティストのアルバムは、何処が良いのかさっぱり分からない。だが感想を聞かれた時の為に、どんな音楽も一通りは聴く事にしている。

 それが人間関係を円滑に保つ、一つの手段であるからだ。


 桜の花弁が渦を巻いて舞い上がったかと思うと、急にこちらに吹き付けてきた。強い南風だ。

 花弁の襲撃に思わず身を竦めながら、随分と暖かくなった、と老人の様に沁しみ沁じみした。

――まだ十六歳なのに。人より早く歳を取っている気がする。

 ふいに周りに目をやると、同じ制服を着た人間だらけになっていた。学校は目前だ。


 それにしても日本のこの制服という制度は、ありがたい制度だと来は思う。

 男なのか女なのか、一目瞭然なのが良い。

 小柄で生まれつき色素が薄い来は、昔からよく女の子に間違えられてきた。

 染めなくても髪が栗毛色で、目もくりくりと大きいものだから、私服では女の子に見えるらしい。

 昨今、日本の若者の中性化は『草食系』だとか『ジェンダーレス男子』などとよく取り上げられるが、当事者にしてみたら迷惑な話なのである。

 遺伝子の問題だろう――来は考えながら信号が青になるのを待った。


 横断歩道を渡って、右に曲がると正門が見える。

――いつもなら。

 しかし、今日の私立K高等学校の正門は、非日常的光景が繰り広げられていた。

 混乱している。人ごみで前が見えない。

 何事だろうか。人だかりを掻き分けようと前に出てみたが、叫び声に行く手を阻まれた。


「生徒達は裏門に移動して!」

 若い女性の甲高い声が響いた。名前も顔も知らないが、多分教師なのだろう。

 傍で二人の男性教師が生徒達を誘導している。

 来も生徒として、それに従わざるを得なかった。


 裏門に誘導されながら後ろを振り返って見ると、パトカーらしき物が見える。

 フェンス越しに校庭と校舎の様子を伺う。

 生徒の姿は無い。

 朝早くに生徒達に見せたく無い、何らかの事件が起こったらしい。

 携帯に連絡が無い事を考えると、恐らく誰かが自殺したのだろう。


 校舎に入っても、廊下の至る所に教師がいる。随分と厳重な警備だな、来は感心しながら廊下を歩く。

 複数の監視で正門の様子を伺い知る事は不可能だったが、教師達の隠せぬ動揺から自殺という仮説は確信に変わっていった。


 誘導は体育館へと続き、体育館に辿り着くとクラス毎に整列させられた。

 やがて始業のベルが鳴り、校長の口から予想通りの『異常事態』の真相が明かされた。


 自殺した女子生徒の名前は上野麻季うえのまき。

 二年C組のごく普通の女の子だった。


――その子の事は知っている。


 昨年の秋、英語スピーチコンテストの校内予選が行われ、彼女は一学年代表としてそれに参加していた。

 全校生徒の前で、堂々と英語で演説をしていた。綺麗な発音だったから、彼女の事は覚えている。

 成績は優秀だった。

 決して目立つ方では無かったが、友達は多い様に見えた。

 いじめを受けている風でも無かった。


――どうして彼女が自殺をしなくてはならなかったのか。少しだけ気になった。



第二章に続く…

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