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そのろく

家から持っていくものは、クマのぬいぐるみである。


人が枕が変わると眠れないように…クマを抱いていないと眠れないのだ。


(あれ?…俺の部屋、

電気ついてる)


ガチャ


「…ったく。

ゲームぐらい自分の部屋でやれよ幸一」


いつものように、注意するが

…弟は何がなんだか分からないような顔をしていた。

「えっと…キミ誰?」


…あ、

俺が女の子になってから会ってなかったな…

(少しからかってやるか)


「圭一さんの彼女の圭織です。

…弟さんですよね?」


「そうだけど…

聞き間違い…かな。

兄貴に彼女なんて…」


(けっこう動揺してるぞ…もっとだ)

「聞き間違いじゃないですよ。


私たちは生涯を共に過ごすことを約束しました…

でも圭一さんは女の子に…

今、圭一さんは何処に?」


「兄貴は…悪いけど、

どこに行ったのかは知らないんだ」


(コイツ…いつもと態度がぜんぜん違うな)


「…もしも、目の前にいる人物があなたのお兄さんだとしたら?」


「えっと…何を言って…

あなたは圭織さんだろ?」


「ええ、まだ仮の名前ですけどね。

私の本当の名は前山圭一

…つまりあなたの兄」


「へっ?

…兄貴…なのか?」


「ああ、驚いたか?」

(おもしれー)


「驚いたよ…

全然分かんなかった。


彼女ってのは冗談だよな?」


「ああ、彼女なんて居ないし…

でも、俺が圭織って名のってるのはホントだ」


「しかし、本当に女の子なんだな…そんな服着てさ…」


「ああコレ。

ゆり姉のやつ…似合うかな?」


そう言ってイスに座った。


…なんだか幸一にジーっと見られてるような、

顔真っ赤だし…


「なぁ、なに見てんだ?」


「あのさ、今、やっと兄貴だなぁって思ったわ…。

今までそんなに大股な女の子見たことない…」


(ん?…しまった!)


慌てて、足を閉じる


「見た目はアレでも

中身はやっぱ兄貴だわ…」


(悪かったな…まだ慣れてねーんだよ)

「あのなあ…

まだ初日だし、慣れてないんだよ」


「てゆーかさ、

いきなりスカートは…」


「コレはキュロットスカートって言って、

半ズボンみたいなやつ。

…下着が見えなかったろ?」



「そういえば…って、

まさか下着も女の子の…」


(オイ、胸元をジーっと見るなよ…)

「ああ、ブラ着けてるよ。

もちろん下もな」


「兄貴ってさ、

身体は女の子だろ。

…じゃあ中身はどうなんだ?」


「どうなんだろうな、

まぁ俺は俺だし…アレ?」


俺は、初めて気づかされた…この先どう生きて行くのか。


女の子として男と付き合うのだろうか?


そしていずれは子供を授かり…


それはまだ想像もしたくない。


…だって中身は男の俺なのだから…

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