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第二十一話 救出。

 時は戻って、ほんの少し前。

 大海原に浮かぶ小島をみつけ、徐々に高度を下げていくリーダたち。

 リーダはアミライルにお願いして、小島の上空でホバリングしてもらう。

 ある程度低い位置を浮かんでいるので、イリスもイエッタも、恐る恐るだが目を開けられたようだ。

 四人で四方を探索しながら、どこへ降りるか考えていた。


「リーダさん。あれ、何かしら?」


 リーダが振り向き、イエッタの指し示す方向を見た。

 すると、船着き場のような、人工的に整備されていると思われる場所を発見する。

 よく見るとそこは、海の中へ続く、スロープのような傾斜が見られるのだ。

 その先には、コバルトブルーの海より更に深く、落ち込んだ先に暗い色の大穴が見える。

 見える、・・・・・・のだが、何かおかしい。

 深く、暗い藍色の穴の中央を、浅黒く不気味な色合いをした、〝何か〟がうねるように動いているではないか。

 その〝何か〟は、船着き場の大きさから考えても、かなり巨大なもののようだ。


「フェルリーダ様、大穴の縁のところ。あれ、人のように、見えませんか?」


 アミライルが示す先には、小さな何かが二つ見える。

 リーダよりアミライルの方が視力が良いのだろうか?

 この場所からは、『何かがある』としか確認できない。


「アミライルちゃん、急いで高度を下げてちょうだい」

「はいっ」


 リーダに言われたとおり、アミライルは降下を始める。

 高度が下がるにつれ、米粒サイズに見えたそれは人影だった。


 人の形がはっきりと見えてくると、海に浮かぶ女性の姿。

 もう一人は今、深紅の翼を広げ、大きく羽ばたいて空に浮かんでいる。

 その形、色は忘れもしない、リーダの家族の一人でもあり、ルードの侍女であるキャメリアのものだ。

 彼女は頭上で腕を交差させて、炎を作り上げていた。


「ルード様っ、今――」


 必死なキャメリアの声が聞こえる。

 その声の通りであれば、間違いなく彼女が見る先には、ルードがいる。

 イエッタが先程、的確に指差すことができたのは、彼女がキャメリアの〝瞳〟を通して見たからだろうか?

 それとも、もう一人の女性のものだったのか?


 どちらにしても、キャメリア視線の先にあるのは、泡立つ海面から浮かび上がる、魔獣と思われる不気味な丸い物体。

 その触手のようなものに捕らわれた、純白の毛を持つその姿。

 そこにルードの姿があるからこそ、キャメリアが炎を打ち込むのに躊躇しているのだろう。


「リーダさん、ルードちゃんが――」


 イエッタが、そう言おうとしたときだった。


『みつけた・・・・・・。わ、たし、の、ルード・・・・・・』


 爆発的に膨れ上がる、目の前に漏れ出した浅黄色の魔力の光。

 自分の前に座っていたはずのリーダの姿。

 魔力の渦の中から、鮮やかな緑色のふさふさの毛が膨れ上がる。

 光が収束したところには、フェンリラになった、リーダの姿。

 真紅のドレスの破片を残して、イエッタの目の前からリーダが飛び降りていく。

 リーダがいた場所に、破裂したような深紅のドレスだったものが、ふわりと落ちていく。


『わたしのルードをっ、離せぇえええええっ!』


 ▼


 残されたイエッタとイリス。

 イエッタは状況がやっと把握できただろう。


「アミライルちゃん。もう少し高度を下げてちょうだい」

「はいっ」


 そんな言葉を交わした後すぐ、背後から濃い魔力膨れ上がる感じを覚える。

 後ろを振り向いた瞬間、イリスの詠唱する声が聞こえてくる。


『祖の衣よ闇へと姿を変えよ』


 瞬時に暗闇が消え、フェンリラ姿のイリスが視界に入る。


「イリスさん」

「はいっ、今、フェルリーダ様のサポートに――」

「イリスさん。こんなときだからこそ、落ちつきなさい」


 その声と一緒に、イリスの身体は引き戻される。

 今飛びだそうとしていたイリスの背中を、イエッタは素手で掴んで離さない。

 そのか細い腕に、フェンリラを制止させるほどの力があるのだろうか?


「・・・・・・はい」


 イリスは少々頭に血が上りそうになっていた。

 それはそうだろう。

 敬愛するルードが、あのような目にあっているのだから。

 そんなイリスを冷静にさせたのは、イエッタの声と、彼女の示した力に対する驚きだったのかもしれない。


「イリスさん。ルードちゃんはきっと大丈夫です。なので、リーダさんがもし、あの魔獣を壊してしまいそうになったらね、伝えてちょうだい。『壊したら駄目よ』って。そんなことになってしまったら、きっと、ルードちゃんが悲しんでしまうわ」

「えっ? それってどういう?」

「それだけですよ。我もあとからいきます。ほら、いってらっしゃいな」

「は、・・・・・・はい」



 アミライルの背を蹴って、リーダはルードの元へ。

 自由落下しながら速度を上げていくと、ルードとの距離が徐々に詰まる。

 この魔獣が、リーダからルードを奪ったのだ。

 全部この魔獣のせいだ。

 今この瞬間にも、沸騰しそうな、爆発しそうな、寂しさ、悔しさ、怒りで頭がどうにかなってしまいそうだった。


 だが、リーダは息子の姿を見て安心したせいか、ふと、我に返る。

 あの魔獣を駆除(どうにか)することよりも、ルードを救出することが最優先。

 そう思えるようになっていくと、少しだけ冷静になれたような気がする。

 いつものリーダであれば、魔獣に全力で雷撃を撃ち込んでいただろう。

 だが、ここにはルードがいる。

 怒りにまかせて、雷撃を撃ってしまえば、ルードごと爆発四散してしまう。

 ルードを助けてしまえば、あとは魔獣だけ。

 八つ当たりは後からでもできるのだから。

 ここまでは、ほんの数瞬。


 海面から見える、こぶのようになっている、魔獣の足だと思われるものを蹴る。

 少しでも魔獣に自分の姿を見せつけ、ルードから関心を削ごうと思った。

 同時に、リーダは軌道修正をして、ルードからあまり離れていない場所へ、大きな水柱を立てて着水する。


「待ってて、今、助けるから、ね」


 ルードの身体に、巻き付いている魔獣の足に牙をたてる。

 魔獣の足は、リーダの牙を押し戻すほどの弾力を持ち、その表皮の発する粘液が、獣の肉であればあっさりと斬り割いてしまう鋭さを、滑らせるように抵抗するほど厄介なもの。

 それでもその切っ先は、僅かな抵抗の後、ずぶずぶと沈んでいく。

 獣の皮膚を切り裂いたときに滲んでくる血は、この魔獣には存在しないのか?

 そのせいか、表面のぬめりはあまり気持ちの良いものではないが、獣の足の弾力というか、噛みごたえというか、歯ごたえというか。

 このような状況下でなければ、快感に近い心地の良いものだっただろう。


 ・・・・・・が、瞬間我に返り、何度も牙をたて、対象の繊維を断っていく。

 ぶつりという感じの最後の抵抗感を残して、魔獣の足はリーダの牙に負ける。

 魔獣の足には吸盤があり、断ち切ったはずのその部分は再生をするわけではないが、吸盤同士が僅かに張り付いて、ルードの身体から離れようとしない。

 そのとき、海中からもう一本の足が伸びてきて、噛み切ろうとしているリーダを襲う。

 巻き付かれたリーダは、ある感覚に襲われる。


「(この虚脱感。力が徐々に抜けていく感じがあるわね。わたしを締め付けて、壊そうとしている強さには感じないわ。魔力を吸収しているのかもしれないわ。もし、そうだとしたら。まだ幼いルードなら、魔力が枯渇して気を失ったとしても仕方ないわ。わたしたちならこの程度、さほど苦しくはないのですから、ね)」


 ルードは幼少のころ、リーダが教えた魔法が楽しくて仕方がない状況があった。

 行使しては尻もちをつき、枯渇させてはひっくり返るなんてことは、それこそ日常茶飯事。

 ルードの身体から感じられる生命の鼓動を確認してあるから、魔力の枯渇だけなら慌てる必要はないと思ったのだろう。


 魔獣に吸われ続ける魔力の感じ、リーダにとってはそれほど苦に思わない。

 それもそのはず。

 リーダの魔力総量は、曾祖母フェリスには劣るが、ルードに比べたら底なしに近い。

 多少吸われたとしても、気にする程のことにはならない。


 フェンリラ、フェンリルとして、ルードとは違うのは、成長成熟した年月の差。

 ルードはまだ、生を受けて十四年。

 それに対して、リーダは四百年以上生きている。

 十倍どころではない長い間、成熟したフェンリラとしての存在は、未だに成長し続けている、いわゆる化け物に近い獣人種なのだから。


 ルードの兄が生前、あのように命を散らしてしまったのも、生まれたばかりのフェンリルは、魔力も体力も、人種の子供とそう違いはない。

 成長していないフェンリルは、何の能力も持ち合わせてはいない。

 歳を重ねて、成長して初めて、個としての強さが備わるということなのだろう。


「あぁん、もうっ。めんどくさいっ」


 ルードが無事だと認識し、絡みつく足を噛み切ったのはいいが、吸盤同士が張り付いてうまく離れてくれやしない。

 仕方なく、ルードに絡まる根元のあたりから、少し離れた部分を一気に噛み切った。

 するとなんとか、魔獣から切り離すことに成功する。

 自分の身体に巻き付いているものも、可能な範囲で噛み切る。

 反射行動なのか、リーダのことを危険と判断したのかはわからない。

 ・・・・・・が、更なる足での攻撃はしてこないようだ。


 その隙に、どぷんとリーダは海中へ潜る。

 ルードの下に入り込むと、そのまま浮上して背中に乗せる。

 犬かき状態で立ち泳ぎをしつつ、匂いを嗅いで周りの状況を再度確認。

 後ろを向くと、そこに嗅ぎ慣れた匂いがあるのがわかる。


 そこには、足下から冷気を漂わせ、四つの足で踏ん張るイリスの姿。

 船着き場からはちょうど反対に位置する場所で、先程までキャメリアがいたはず。

 魔獣から五十メートルほど離れており、冷気が立ち上る足場ができあがっていた。

 イリスから少し離れたところで、ぽかんとした表情で驚きながら、ぽつんと立ち尽くすキャメリアの姿。

 どっこいしょ、という感じに、さも慣れたような仕草で、今までなかったはずの、足場を登り始める。


 キャメリアが驚くのも無理はない。

 今まで海面しかなかった場所に、突然足場が発生したのだ。

 足場というのは、氷の塊。

 海面から数十センチほど浮いた状態の、薄い氷山のようなもの。

 薄いとはいっても、下に沈むのはかなりの量のはず。

 リーダたちが乗っても、ひっくり返ることがないほどの安定感がある場所になっていた。

 立ち尽くすキャメリアの傍にルードを降ろした。


「キャメリアちゃん、ルードをお願いね」


 そう言うとリーダは、ゆっくりと魔獣へ足を進めていく。

 ルードたちへ影響がないと思われる場所まで来ると、魔獣へ視線を戻す。

 前足を低くし、後ろ足に力を入れ、浅黄色の魔力がリーダの身体を覆い始める。

 パチパチと弾けるような音がしはじめ、全身に雷を纏う彼女は、今にも魔獣に飛びかかりそうにしていた。

 そんなリーダの背中にイリスが声をかける。


「フェルリーダ様、お待ちください。〝あれ〟を壊してしまうと、ルード様が悲しまれてしまうと、イエッタ様より伝言がありまして・・・・・・」


 ぷしゅぅ、と、音を立ててしまうような具合に、濃密だった魔力が霧散していく。

 イリスを振り返ると、首をかしげて、不思議そうな瞳を向けた。


「何よそれ?」


 リーダはそう、ちょっと気の抜けた声を出すのだった。


 ▼


「改めてお疲れ様です。このような姿で申し訳ございません。フェルリーダ様。現在、能力を行使しております。安定するまで、もう少々お待ちくださいませ」


 『このような姿』というのは、フェンリラの姿でいることであり、執事の仕事を全うできないことへの、申し訳なさなのだろう。


「わかってるわ。イリスエーラ、ありがとう」


 イリスが下がると、唖然としていたキャメリアが復活していた。

 ルードの世話をしようとするのだが、うねうねと動く足の残骸に難色を示しているようだ。


「キャメリアちゃん、お久しぶりね。早々に悪いのだけれど、できたらこの足みたいなもの、隠してもらえるかしら?」


 落ちついたリーダの声を聞き、それを理解して、ルードの身体に張り付く、うねうねとまだ動いている魔獣の足に触れて魔力を流す。


「・・・・・・申し訳ございません。まだ生命活動を終えていないようで、私の魔術が弾かれてしまうようです。それ故に、隠すことは叶わないようです」


 キャメリアは、『生き物は隠すことができない』ということを言っているのだろう。


「あ、そういうこと、結構しぶといのね。そうねぇ、・・・・・・イリスエーラ」

「はい。フェルリーダ様」


 フェンリラの姿のままの、イリスがリーダの傍へ歩いてくる。


「この、うねうねしたもの、どうにかできるかしら?」

「かしこまりました。キャメリアさん、それに触れないよう、お願いしますね」


 イリスはキャメリアに注意を促すと、リーダの指示通り、前足の肉球あたりで、ルードの身体に巻き付いているものを触る。

 浅葱色の魔力がイリスの身体からにじみ出てきたかと思うと、目の前にあったちぎれた魔獣の足は瞬時に凍りつき、足下へと音を立てて落ちてしまう。

 同じように、リーダの身体に巻き付くものも、凍られて落としてしまった。


「キャメリアちゃん、これなら隠せるでしょう? 何やらイエッタさんが、これを粗末に扱わないで欲しいって。ルードが悲しむからって、言ってたらしくて、ね?」


 意味がわからず、再度ぽかんとする、キャメリア。

 魔獣の足の一部、それを粗末に扱うと、ルードが悲しんでしまうと言われた。

 その上、イリスが行使した能力は、彼女が知る魔術、こちらでいう魔法ではない方法。

 触れて魔力を流したと思った瞬間、魔獣の足を凍結してしまったのだから。


 そういえば、ルードが魔法ではない能力を行使するときに、同じように白い魔力を纏う。

 イリスが今まで能力を行使したのを見たのは、初めてだった。

 以前ルードから聞いた、フェンリル、フェンリラの生まれ持った能力のこと。

 ルードの白、リーダの浅黄色、イリスの浅葱色。

 色の違いがわかったとき、キャメリアは合点がいったようだ。


「イリス、さん。今のは、あなたのフェンリラとしてのものでしょうか?」

「えぇ。ルード様やフェルリーダ様のお能力(ルビ:ちから)とは違いまして、恥ずかしながら微調整が効きません。わたくしのこれは、常に全力の行使になってしまいます。使いどころが難しいというか、使い道がないというか・・・・・・。それ故にわたくしは、あまり使わないようにしていたのです」


 イリスが言うには、対象が凍り付くまでを全力と表現しているのだろう。


「イリスエーラの能力は、風と氷。確かにわたしも、最後に見たのは、いつのことだったかしら?」


 ルードから、フェンリル、フェンリラとしての生まれついて持つ固有の能力のことは聞かされていた。

 魔法ではないので、放出する際の調整が難しいものだと。

 ルードの使う、支配の能力も、地道な鍛錬の結果、ある程度使いこなすことができるようになったのはルード本人や、イリスからも聞いていた。


 キャメリアは、冷凍された魔獣の足を隠すと、その場に虚空から敷布を取り出し、その場に敷く。


「リーダ様、失礼致します」


 ルードの身体の下に両手を差し入れ、ひょいと持ち上げてしまう。


「あら? ルード様から聞いてはいましたが、同じ重さなんですね」


 ルードの今の身体は、倍近い大きさになっているが、そもそもの重量が同じだと聞いていたのだ。

 キャメリアは、敷布の上にそっとルードをうつ伏せに寝かせる。


「ありがとう、キャメリアちゃん」


 リーダもルードの頭の近くに、身体を伏せる。

 魔力の回復がなされていないせいか、気を失ってはいるが、ルードの呼吸はそこまで乱れてはいないようで、キャメリアはほっとした表情を見せる。


「わたしたちの化身は、事細かく検証されていないので、わたしも詳しいことはわからないのだけれど、昔からそう言われているのだけは知っていたわね。そうだわ、イリスエーラ」

「はい」

「ルードの今の状況、魔力の枯渇で気を失ってるだけだと思うのだけれど。あなたはどう思うかしら?」

「そうでございますね。・・・・・・ルード様の今の状況は、フェルリーダ様の仰る通りだと、わたくしもそう、思います。外傷はないようですので、ご安心しても大丈夫かと」


 イリスの言葉で、リーダは自分の判断が間違っていなかったと思ったのだろう。

 その場に伏せるようにして、少し能力を抜く。

 ひとつ深く呼吸をした後、目を開けてイリスを振り向く。


「・・・・・・あ、そうそう。あの魔獣。魔力を吸収する能力を持っているようね。わたしやイリスエーラなら大丈夫でしょう。けれどね、子供のルードだと、一瞬で気を失うのも仕方がないと思うのよね。わたしも魔獣は何度か見たことがあるのだけれど、少々厄介なもののようだわ・・・・・・」


 リーダはまだフェンリラ姿の化身を解除していない。

 まだ、ルードを奪われていたことに対する、八つ当たりを終えていないのだ。


「そうでしたか。ルード様は、こんな小さな身体で、ご無理をされてしまったのですね・・・・・・」


 ルードが起きていたら、『僕、小さくないよ?』と、文句を言ってくるだろう。

 イリスやキャメリアと言葉を交わしていると、背後から足音が聞こえてくる。


「リーダさん。ルードちゃんはどうかしら?」


 足音の主は、イエッタとアミライル。

 上空に残った彼女らは、先程この場に降りてきたのだろう。

 イエッタはルードに近寄ると、その場にひざまずく。


「・・・・・・よかった。気を失っているだけのようですね。時間はかかるでしょうけど、そのうち目を覚ますと思います」


 イエッタはそう言うと、ルードの背中を愛おしそうに撫でる。


「ありがとうございます、イエッタさん。それを聞いて安心しました・・・・・・」


 背後から、アミライルが姿を現す。


「ルード様、よかったです・・・・・・。キャメリアお嬢様。ご無事で何よりです」

「あのねぇ、アミライル。私はもう、ルード様の侍女なのです。ですからその、〝お嬢様〟はやめて欲しいのですが・・・・・・」

「いえ、私にとって、キャメリアお嬢様は、キャメリアお嬢様ですから」

「お嬢様って、・・・・・・あ、そうだったのね。キャメリアちゃんは、けだまちゃんのお従姉(ねえ)ちゃんで、シルヴィネさんは、エミリアーナさんの・・・・・・」

「はい。そうだった、というだけで、あくまでも過去の話になるのです。今の私は、ルード様の侍女。それ以上でも、それ以下でもございません。・・・・・・それに、マリアーヌ様は、私には結構、冷たいんです、よね」


 キャメリアは、思い出すように苦笑する。


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