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おきつねさまと食べ歩き  作者: 八代将門
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おきつねさまと神使の嫁たち

はじめにお詫び申し上げます。

エピローグを書きあげた以上、完結まで頑張りたいと思います。が、

しかしながら本話は思った通りの出来にならず、皆様に批判されても当然な仕上がりになってしまいました。整合性がつかず、本当に申しわけありません。

多分、修正するとは思いますが、何より完結を目指すべきと、友人に言われましたので、無理やりとは思いましが、投稿いたしました。

皆様に愉快な思いをしていただくべき投稿が私の力不足で不愉快な思いをさせてしまったのなら申し訳ありません。

今後とも、皆様の感想ご指導を参考にして精進してまいりますのでよろしくお願い致します。


荒野丸こうやまるよ、ちと悪ふざけが過ぎなんだ。将門公とは、すでに話が付いているはずじゃ。主神の命にそむき、我を通さず、わが神使に手を出そうとはの」

 

 玉藻がまなじりを上げ、俺を庇うようにずいっと歩み出る。九本の尾が広がり、玉藻から神力があふれ出す。頼もしい姿だ。尻尾のところどころが焦げていなければだが。


 あれ、睦月は一緒じゃないのか。


「玉藻前様におかれましては、我が主人がよしなにと、そして、約定を違えることなくと申しておりました」

 荒野丸が二本足で器用に立つと、軽く一礼する。あれ、なんかこの光景どっかで見たような気が・・・。


 十二単姿の玉藻、九本の尻尾が優雅に廻っている。

 いや、玉藻、この威圧感をスルーできるのか?

 約定って俺を貸し出すことか?


「ほほう、だからと言って我がいない内に、直接交渉か」

 ちょっと芝居がかってないか? それに登場のタイミング良すぎない?

 俺の心に疑念が渦巻く。


「いやいや、玉藻様は浅草の地において具現化し現世の美味を堪能したとか、我が主人はそれを聞いて、約定はいつ果たされるのか気もそぞろのよう。神使たる身としては、主人の心配事を取り除くのが役目かと」

 荒野丸もそれに合わせるかのように芝居掛かって言う。

 さっき若雷がどうとか言ってたよね。何、急に俗な話題になってるのよ。


「我は神使たる八代将門を守る責がある。たとえ、平将門公といえども我の前に立ちはだかるのなら、容赦はせぬぞ、荒野丸覚悟はよいか」


 言ってること立派だけど、会話噛み合ってなくね?

 なに、この三文芝居。


 荒野丸を見ると何やら顔の表情を目まぐるしく変えて、玉藻にアイコンタクトを取っている。


「ふむ、将門、桔梗、睦月よ、われの主神たる威光をとくと・・・・・あ~、味わうがよい・・?」

 玉藻が目線で荒野丸に確認を取る。


「・・・・・・・・・」

 桔梗の蔑むような冷たい視線。


「・・・・・・・・・」

 荒野丸の生暖かい視線。


「・・・・・・・・・」

 俺の確信に満ちた視線。



「睦月いないけどな・・・。んで、玉藻。台詞せりふと段取り、両方間違えたわけだ」

 俺は無情に宣告する。

 

 弛緩した空気が俺たちの間に流れる。


 玉藻の九本の尻尾が一瞬にして垂れる。


 荒野丸が二本足で立ったまま固まる。先ほどまでの威圧感と妖気、絶望を感じさせる空気が一気に霧散している。まあ、おどろおどろしい姿はそのままだが。

 今までの威圧感に、ちょっぴり粗相した俺の尊厳はどこに。


「此度は失礼した。玉藻前さ・・・・」

 早口で喋り、きびすを返そうとする荒野丸を玉藻が遮る。


「いやいやいや、ちょっ・・・」

 玉藻が慌てて、荒野丸にすがりつく。おおう、よくあんなのに触れるな。

 千冬でもあんなのモフるのは嫌がるだろう。


「てめえが台詞せりふ間違えたんだろう。それに聞いてねえぞ、こいつ獅子王の存在に気づき、入手方法まで考えやがった。それにあの神使の女、神功皇后の加護持ちでやがる、獅子王を手に入れられて本気出されたらこっちが危ないわ。だいたい主人(将門公)でさえあれ(獅子王)は手に入れることなどできないと言い切ったんだぞ・・・。てめえの神使は化け物か」

 化け物に化け物扱いされるとは。


「おま、ここで帰られたら我が威厳取り戻せなんだ。少しは我の身になって考えろ。神田の食べ歩き諦めるのか?」

 玉藻、必死だな。だが、荒野丸が残ろうと残らなかろうと玉藻の威厳なぞもうどこにもありゃしないわ。 

「お前の威厳なぞ知るか、いくら昔の誼みとはいえ、こんな茶番のるんじゃなかった。くそっ、他神のお社に乗り込んだ上、神使を脅したなんて、主神はともかくあいつ(・・・)にばれたとあっては、こっちの身が危ないわ・・・・。まさかお前の神使、あいつ呼びに行ったんじゃねえだろうな?」

 荒野丸があわてふためく。




 途端、一陣の風が吹き俺たちの前に巫女服姿の睦月が現れる。


 そして隣にたたずむ同じく巫女服姿の一人の女性。


 伊香保神社で見たネズミの神使のごとく、某レジャーランドで見られるカチューシャのごときねずみの耳だ。まるで、ミ・・・・げふん。小柄で身長は140センチほどだ。だが顔つきから子供ではなく成人だというのがうかがえる。まあ、胸からもだが。なにこの合法ロリ巨乳! 


「旦那様!」

 睦月が叫びながら俺に抱きつく。

 おおう 先ほどのふらちな想いを読まれないように心の奥深くに沈める。


「旦那様」

 同じ言葉とは思えないほど暗く、低い声とともにネズミの耳をした女性が、荒野丸に歩み寄る。


「いや。これは、そのう」

 荒野丸がみるみる縮んでいき、1mほどになる。なにこのミニュチュア鵺は。

 ひょっとして、妖力で大きく見せてただけなのか。


「まだこの女狐めぎつねとつるんでいるのですか?」

 いまだ、玉藻はみっともなく小さくなった荒野丸にしがみついている。

 

「いや・・・・・・その・・・」

 荒野丸の赤らんだサル顔がみるみる青くなっていく。

 すがりつく玉藻とネズミ耳の女性の間で視線がさまよう。


「やはりあのころから・・・・、つながっていたのですね」

 ずいぶん露骨な表現だ。さすが傾国の美女、人間だけでなくこんな姿の妖怪まで守備範囲だったとは。


「いやいやないから、全くないから。玉藻は鳥羽上皇一筋で俺は三位頼政と戦いの真っ只中だったから」

 荒野丸がぶんぶんと頭をふる。あっ、玉藻にぶち当たり、玉藻が飛ばされる。


「信じてくれ、俺、瑞穂みずほひと筋だから」

 どうやらネズミ耳の女性の名前らしい。

 今度は荒野丸が、女性にしがみついて許しを請うている。

 先ほどまで、絶望を振りまいていた荒野丸だが、いまや、違う意味で絶望を振りまいている。

 いや、泣くほどか?


「それでななぜこのような真似を」

 瑞穂みずほと呼ばれた女性が、ため息をつきながら荒野丸に問う。


「いや、玉藻にの、最近『われの主神たる威厳が神使につたわっておらぬ』と相談を受けての。俺が神使をちょろっと脅かし、こやつがそれを救い威厳を見せるという筋書きを考えたのだが・・・」


「玉藻様の芋芝居のおかげで台無しになったと」

 桔梗が後を引き取る。


「こいつとは大陸にいたときからの知り合いでな、三位頼政に俺が斬られたとき、かくまってくれたのが玉藻でな、おかげで頭が上がらんのだ。脅すようなまねをしてすまん」

 荒野丸が頭を下げる。


 女性が俺と桔梗に向かい合うと深く頭を下げ、謝罪する。

「神田明神は二之宮が祭神、少名毘古那すくなびこな様の第一神使たる瑞穂みずほと申します。此度はわが愚夫ぐふがとんだ所業を・・・、お詫びの言葉もありません」

 鵺を旦那にするって、すげえ豪胆というか、なんという趣味というか・・・・。

 俺も睦月もそうだが、神使同士で夫婦というのは多いのだろうか。本山の小薄をすすき阿古山あこやまも夫婦だったな。


 それに原因は玉藻だから謝ることないがな。

 玉藻を見やると参道の上で目をまわしている。あとでお仕置きだな、飯菓子抜き一ヶ月ぐらいしないと応えないか。

 それにしても、愚夫ぐふってなんか微妙な響だ。


「旦那様、そのような姿であやまっても、神使殿がおびえるだけです。変化をお解きください」

 瑞穂が荒野丸を促す。


 おい、鵺の姿って変化なのかよ。


「ああ、そうだな」

 荒野丸が軽く手を一振りすると、そこには鵺とは似ても似つかぬ動物が二本足で直立していた。

 

「「レッサーパンダ!」」

 俺と桔梗の声がはもる。


 鵺の正体が明らかになった瞬間だった。



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