表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おきつねさまと食べ歩き  作者: 八代将門
39/66

おきつねさまと大掃除

 結局、俺が完全に回復するには、二日かかった。

 起きられるようになって、睦月に支えられてお社脇のクスノキはと見てみると地上部分2mほどを残して、その上は木っ端微塵になっていた。あたりには細かく粉砕された、木片が散らばっている。

 おい、俺よく生きていたな。

 今更ながらに血の気が引く。


「われの加護と睦月が最後の最後で手加減できたおかげじゃ。後もう少し神楽鈴かぐらすずにこめる神力が強ければ、おぬしもこのようになっていたのじゃぞ」

 いや、だから、元はといえば玉藻のせいだよね。

 むかつくからその恩着せがましい物言い止めてくれない?

 ああ、あと睦月ありがとうな。

 よく頑張った!

 俺は左に寄り添い立つ睦月の頭をなでる。

 

「ぐっ、悔しいが、将門が正しいだけに何も言えん。なんじゃ、この屈辱感は」

 いや、いろいろ言ってるし。


 玉藻によると俺の全身の痛みは、落雷時に賀茂別雷命かもわけいかづちのみこと由来の神力をくらったせいらしい。打ち身でも骨折でもないのは幸いだったのだが、この痛みがひくまでが一苦労だった。

 神力による物だけあって、痛み止めの薬も効かないし、医者にかかるわけにもいかない。対処法は睦月が俺に神力を流し、賀茂別雷命かもわけいかづちのみこと由来の神力を打ち消していくという物だった。

 七日もたてば自然に神力が抜けていくと玉藻は言ったがが、やはり痛いものは痛いし、そんなに我慢できるわけない。結局、睦月にお願いした。

 おかげで、この二日間は睦月とべったりだった。まあ、男の矜持のため風呂とトイレは当然別だが。

 ただ閉口したのは、睦月が神力を俺に流すのに接触する方法だった。

 従姉妹たちの入れ知恵なのか、指を絡めて手を繋ぐ恋人つなぎを提案してきたのだ。満面の笑みを浮かべる睦月の申出を断ることなど出来ないため、あえなく従姉妹たちにからかいのネタを提供することとなった。

 まあ、俺は腹いせに玉藻をいじるがな。


「んで、上と下とを間違えてしまう残念なわがあるじ様、ちと話をお伺いしたいのですが」

 慇懃無礼に玉藻に問う。 


「上と下とを間違えたわけではない。上賀茂神社かみがもじんじゃでも神楽鈴を賜ったことをちぃと忘れておっただけじゃ」

 俺は玉藻への禁止食材に茗荷ミョウガを追加した。こんな大事なことを忘れる奴に茗荷ミョウガなんぞ喰わせたら痴呆でも発症しかねん。


 睦月の神力が神楽鈴かぐらすずを通して、賀茂別雷命かもわけいかづちのみことの加護である若雷に変換されて、一族とお屋敷どころか、ここら辺一体の穢れを祓いまくったらしい。あげく、睦月の力では抑えきれなくて暴走したというのがことの顛末だ。

 睦月によれば、ここら一体八里(32キロメートル)四方の穢れが、全て祓われたらしい。

 もうここまでくると鈴なんてかわいらしい物じゃない、立派な戦術兵器だ。


「ここら一帯の土地神どもが感謝しておろう」

 玉藻が言うが気休めにもならない。ご近所付き合いは大事だが、命の方がもっと大事だ。


「玉藻、神楽鈴かぐらすず上賀茂神社かみがもじんじゃにお返しするぞ、いいな」

 有無を言わせない。睦月を傷つけるものなど置いておけるか。


「おお、なら、ついでに都へ行けるな」

 無駄にポジティブだな、わがあるじよ。

 だが、甘い、そんなご褒美くれてやるわけない。


「いや、神使に取りに来てもらおう。確か八咫烏ヤタガラスだったよな、睦月、本山を通して繋ぎを頼めるか?」

 睦月に問う。視線の端で、玉藻が絶望の表情を浮かべているが、自業自得だ。

 言葉で逆らうぐらいなら神使の縛りにはとらわれないらしい。思いっきりうさを晴らさせてもらおう。

 まあ、過ちとはいえ、賀茂別雷命かもわけいかづちのみことに許可も取らず加護である若雷を行使したんだ。睦月が謝りに行くのが筋なんだろうが、玉藻のせいで睦月に頭を下げさせるなんぞ絶対にさせない。取りに来た神使に事情を話し、俺がよく謝っておこう。


 「はい。早速行ってまいります。その、なるべく早く戻ってきます・・・・旦那様」

 言い終わった後、かすかに俯く睦月。

 ぐはっ、だんだん睦月の言動の破壊力が増してきている。いや、物理的な意味じゃなくて、精神的にだ。

 これが、玉藻の講習による結果ならば、多少は許してやってもいいかもしれない。

 

 

 今回の神楽鈴かぐらすずのように、神の加護を与えることができるものを神器じんぎと呼ぶらしい。

 ああ、三種の神器って言うもんな。


「玉藻も持っているのか?」


「あるぞ、ほれこれじゃ。これがあれば、商売繁盛、金運上昇間違いなしじゃ」

 玉藻の右手のひらに輝く小さな玉が現れ、くるくる回りはじめる。

 

稲荷神いなりのかみ様だと、玉の他にも鍵、巻物、稲穂を神器としています」

 睦月が説明してくれる。

 稲穂って腐ったりしないのかよ。

 

「稲穂は五穀豊穣を約束していただけるのです」

 なるほどな、あんな戦術兵器まがいの神器ばかりってわけでもないのか。

 

 これだけトラブルメーカーな玉藻は、さしずめ、戦略兵器といったところか。

 ああ、玉藻、まさかこんなものがうちのお社にごろごろしてるなんてことないよな?



「・・・・・・・・・・・・・・」

 沈黙は雄弁なり。


「してるのかよ!!!」 

 こうして、年末を待たずして、お社内の大掃除が決定した。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ