おきつねさまと誓詞奏上(せいしそうじょう)
俺の差し出した手に睦月の指が絡みつく。
睦月の想いが伝わって来る。
そのまま睦月の手を取り、俺が右、睦月は左に、玉藻と宇迦之御魂大神の間に立つ。
睦月の眼を見つめると、睦月がうなづき返す。
俺と睦月は宇迦之御魂大神に対し揃って礼をすると互いに向き合う。
「玉藻前様の第一神使たる八代将門は宇迦之御魂大神様と玉藻前様の前でここに誓う。玉藻前様の眷属にして神使たる睦月と命ある限り、寄り添い、助け合い、励ましあってともに歩まんことを・・・」
本山の神使たちが慌てたかのように立ち上がる。その瞬間、玉藻が手のひらを合わせてパンと鳴らすとともに、桔梗が俺たちの前に飛び出て、神使達を牽制するかのように構える。
ついぞ感じたことのない覇気が、桔梗の体から吹き出すと神使たちの動きが一瞬止まる。
これって八幡大神の加護か。
「玉藻前様の神使たる睦月が誓いまする。この命ある限り、玉藻前様に仕え、将門様とともにあらんことを」
騒ぎなど目に入っていない睦月が誓うとともに光に包まれる。
俺は思わず目を閉じる。
だが、今回の俺は違う。
何人たりとも睦月の着替えシーンは見せない。心の中で強く念じる。
宇迦之御魂大神と玉藻の笑い声が聞こえる。
目を開けるとそこには牡丹柄の黒引き振袖姿に、尾が5本になった睦月と、口を開けたまままあっけにとられている神使たちの姿が目に入った。
「ひ、ひ、ひっ、人の身で在りながら、妖狐を娶り、あまつさえ、われの前で誓詞奏上するとは」
装束が乱れるのも気にせず御座の上で、バンバンと床を叩き、涙を流しながら笑いまくる稲荷神こと宇迦之御魂大神。
「く、く、くっ、空狐くうこ。く、く、くっ、黒引き振袖とは。しかも牡丹柄! 渋い! 渋すぎる」
笑いすぎで呼吸困難に陥りつつも、同じくバンバンと床を叩いている玉藻。
「ふむ、将門なら白無垢角隠しだと思っていたのに・・・」
平常運転の幼馴染。
いや、絶対こいつらに白無垢姿の睦月は見せねえから。白無垢見せるならじっちゃんばっちゃん、母ちゃん父ちゃんだから・・・。
いや桔梗、顔真っ赤にしてるけど、一番恥ずかしいの俺だから・・・・・。
と思っていると俺の衣を真っ赤になった睦月が引っ張っている。
その上目遣い、反則!!!。
雄叫び、怒りに満ちた神使たちを無視して睦月を抱きしめた俺を誰も責められまい。
 




