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おきつねさまと食べ歩き  作者: 八代将門
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おきつねさまと稲荷詣で

 

 玉藻の加護は我が屋敷とお社内に限定されることから、玉藻の命により、その晩、桔梗は我が家に泊まっていくこととなった。桔梗が連絡したらしく、家族とともに夕食をとっていると桔梗の母が翌日の着替え一式を持ってきた。もっとも、桔梗は昔から度々、我が家に泊まっており、なぜか浴衣を含むお泊りセットは我が家に常備してある。

 

 ひとっ風呂浴びて夕食を終えると、桔梗が俺の部屋に来て土産(グアム旅行)話を始めた。しかし、話を聞いてても可愛げのないことおびただしい。ビーチに行ったのは初日だけで、あとはシューティングレンジに入り浸っていたらしい。剣の次は銃、あれ、体術やってなかったっけ。


「合気やってるわよ」


 我が幼馴染はどこへ向かおうとしているのか。

 射撃って18歳で銃撃てるのかよ?


「16歳から同伴なしでいけるわよ。それより将門、免許取ったんでしょ。やりぃ、これで買い物楽になる」

 我が故郷は公共交通が発達しておらず、まず車を持っていないと生活できない。神使の仕事に加え専属ドライバー(荷物運び)の仕事が決まった瞬間だった。

 

 夜中を回ってもまだ話したりなげな桔梗を客間に追い返すと、俺は布団に潜り込んだ。

 


 翌朝、朝食時に母が言った。

「桔梗ちゃん、今日、あなたの衣装のサイズ測るからよろしくね」

 俺と桔梗は顔を見合わせる。どうやら昨晩、俺と桔梗が話している間、玉藻は家族にことの顛末を説明していたらしい。どうりで顔を見せなかったわけだ。

 家族にとって桔梗がうちのお社の巫女を務めることは既定路線らしい。

 

 その後風呂に入り、装束に着替え、お供えを持ちお社へ。段々とこの暮らしに慣れてきたが、果たして夏休み明けに大学生活にすんなり戻れるか多分に不安なところだ。

 先ほど玄関で、呉服屋の主人を見かけたから、今頃、桔梗は衣装あわせだろう。桔梗の巫女服姿も思い浮かべようとしたのに、浮かんだのは睦月の姿だった。なぜに・・・・。


 さすがに夏休みでも月曜となると人は少ない。午前中の説明見学コースは希望者がおらず、俺はお社の清掃に励んだ。しばらくすると、玉藻と桔梗が連れ立ってやってきた。ふむ、姿を見ないと思えば、桔梗の採寸に付き合っていたのか。


「将門、話はついたぞ」

 玉藻が開口一番に言う。


「睦月が宇佐うさ八幡大神ヤハタノオオカミと話をつけた。立場的には桔梗はわれの仮の神使だが、宇佐の三柱みはしらが後見となる」

 まさか後見までしてくれるとは・・・、どれだけ、ビックな後見だよ。八幡神社の数って確か日本一だよな。

「八代が神格化したからの。代わりの神使ということで桔梗をねじ込んだ」

 桔梗は黙って聞いている。こういう時のこいつは何も理解していないということだ。


「桔梗、八幡様に感謝しておけ、お祈りする時は八幡様他お二方と、後、鳩は大切にな。とりあえずそれだけ覚えておけ」

 俺は要点だけまとめて伝える。八幡大神ヤハタノオオカミ比売大神ヒメノオオカミ神功皇后じんぐうこうごうと言っても、桔梗は覚えまい。

 

「了解〜」

 慣れたもんだ。まあ、覚えられないんじゃなくて、覚える気がないというのが救いだ。こう言うフォローも幼馴染の仕事だ、後で八幡神社に参っておこう。宇佐は遠いから鶴岡あたりか。


「おぬしら、大概じゃのう。ここまで、神使いが荒いとは・・・。もはや不敬を通り越して何も言えんわ」

 玉藻が呆れたように言う。

 元の原因は誰だと思ってるんだ。

 玉藻が視線をそらす。


「玉藻が睦月に渡したあの面何なんだ?」

 

「われの名代たる証じゃ。普通なら使者としての立場で十分じゃが、八幡大神ヤハタノオオカミにあのような頼みごとをするのじゃ、われが行けない以上、最上の敬意を払ったまでじゃ」

 なるほどな。


「本山に寄っている睦月が戻り次第、われは将門公に会いに行く そこで釘を刺して事は解決じゃ」

 それでじゃ、玉藻がずずいと前に出る。

 おおう、俺はおもわず一歩引く。


「将門には、本山に行って、稲荷神と神使どもに会ってもらう。それが本山が改めて出した条件じゃ。もちろん桔梗もじゃ」

 


 初午はつうまでもないのに稲荷詣いなりもうでが決まった瞬間だった。




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