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異形の怪物

 なんとか、今回は更新できました。


 やあ、俺の名は赫羽甲児(あかば こうじ)。君と同じ、何の代わりも無い普通の少年だ。


 俺の19歳の誕生日の前日、幼馴染や妹と三人、異世界転移に巻き込まれ、謎の騎士団に連れられて法王様のところに連れて行かれた。そこで、他にも大勢の日本人が連れ去られて来ていたのだが、その中の一人が、突然法王を襲いだした。


 結局、謎の【蛇】とかに操られていた彼をプロレスラーの嶋源一郎さんと共に撃退して、さぁ、ようやく事情説明を受けられる、と、なった所でなんと、新たな敵が登場! え? ま、魔王だって!


 いきなりラスボスとか、これ、何て無理ゲー!?




◆◇◆◇





「ずいぶんと大暴れしたようだな。今回の【勇者】とやらは。だが、我等を抜きに始めてしまうとは、約定違反ではないのか? 人の王共よ」


 いかにも青筋立てて怒りを表しているといった風情の一際巨大な男が、法王様に対して肩を組みながら話しかけた。なんか、ヤのつく職業の人が相手を威嚇するときに使う常套手段って感じだが、それをしているのが、2mを超える大男で、しかも、青い肌で角まで生えている、となると、是非ご遠慮申し上げたい感じであるが。


 なんか、仮称「角デスラー」って感じの魔王は、威圧感満載の、部下とお揃いの軍服と、部下たちの着ていないマントの威圧感の所為で、完全に法王様をいぢめている「悪」の軍団といった趣だ。


「俺達は今からその説明を受けようとしていた所なのだがな」


 嶋さんが、恐れ知らずにも【魔王】に説教をしようとしている。非常に頼もしい。本当にあれで六十代とは思えないが、


「王同士の話だ。少し黙ってろ! 劣等種」




 とりつく島も無い断言に沈黙させられてしまう。流石に王族同士の間に割って入る程空気が読めない訳でもないか。


「それにしても、随分と数を揃えたものだな。法王よ」


「此度の災厄はそれ程の物なのだ。卿も、このような悪ふざけは止めて、是非協力頂きたいものなのだがな」


「ふん! それを求めるならば力を示せ! 以前にも言ったと思うがな」


 そうして、俺達の方を値ぶみするように見渡すと、


「まあ、良かろう。10人でも20人でもいい。我らが戦士たちと闘って生き残った勇者であれば、貴様等の戯言でも、聞く耳を持てようというものだ! どうだ!? 我らが戦士と勝ち抜き戦を行い、勝った者だけが発言権を持てるというのは?」


 嘆息する法王その人は、何やら仕方なしかと、諦めたのか、


「この場を修めるには止む無しですか。勇者殿方、不本意ではありますが、最早彼らの言う通りに場面を展開しなければ収まりが付かないようです。誠に勝手ないい分ではありますが、どうか、魔王達との決闘、受けて下され」


 と、言われても。無駄に強そうな化け物相手に決闘っすか? 最初のイベントとしては、無茶というものだ。


「ならば、俺様の出番かな?」


 そう言いながら立ち上がった偉丈夫は、


「和久彼方だ! 武器は、この大剣。魔王の軍勢なんぞひとひねりしてやるよ!」


 そう言いながら立ち上がった雄姿は、なかなかにカッコいい。


「ふむ、ならば、こちらは巨人【一つ目オーガ】を出してやろう」


 そう言って出現した身長5m程の巨人族を見ると、


 完全に硬直(フリーズ)して見入っていた。




◇◆◇◆ 


 結論から言うと、どうやら彼自身は、今頃になって震えていらっしゃる程度には普通の感性の持ち主だったらしい。その点、鞭矢少年よりは常識的ではあるが、この場では役立たずとも言える。


「グゥオォォォォォォォォッ!!」


 吠える怪物相手を買って出たのはいいが、既に腰がひけている。それでも、何とか剣を当てようと振り回しているが、当たっても、ガキン、と皮膚に跳ね返されているありさま。決定打はおろか、有効打にも程遠い。


「くっ、くっそーっ! 何でこんなっ!」


 あてが外れたというべきか、まぁ、LV1で竜王の城に入りこんだようなものだしな。


 一分もしないうちに和久氏のスタミナは完全にエンプティーである。そこを狙って


「グゥオォォォォォォッ!」


 一つ目の化け物は和久氏を捕え、胴体をねじり伐ろうとする。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 憐れにも、和久氏は胴を引き裂かれ絶命した。


 女性陣の中には、余りの残酷シーンに皆顔色を無くし、中には気絶する人もいる。

 うちの女性陣? シロはともかく、さやかもオバケならともかくスプラッタ耐性は強い方でとりあえず正気は保っていた。SAN値は削れていると思うが、と、いうか、削れてて欲しい。人として。


「なら、二番手はこの俺、田賀 豊が相手だ!」


 誰?


「あの人、うちの事務所の先輩ですよ。演歌歌手なんですけどね」


 そう言ったのは、さやかの友達、紺 ヨーコちゃんだ。


「歌手なのか? 知らない人なんだけど」


「まぁ、『限りなく一般人に近い歌手』ってのが売りなんですけどね。少なくとも、テレビ出演はしたこと無い筈ですよ。それよりも、お兄さんならどう対処します?」


 うわ。この子ヤル気だよ。


「俺なら、あのでかい図体に乗っかって急所にピンポイント攻撃か、罠を使って身動き取れない状態でやっぱ急所に一撃、かな?」


「やっぱ、それしか無いですよねぇ。さやかちゃんはどう?」


「え? どうしよう? 甲児くん?」


「って、さやかちゃんなら勝てるよねぇ? あの程度。どう勝つかだけじゃないの?」


 あらら、完全にばれてるな。


 そうこう言ってるうちにその「売れない歌手さん」が、巨人の顔めがけて歌を歌った。


 ぶばっ! と、目や耳から血を流して巨人がふらつく。音による攻撃なのか? 

 かなりのダメージを受けていると思う。だが、そのダメージを受けてからのスタミナは、それの乏しい人間達とは一線を画している。ぐらつきながらも踏ん張って倒れることなく踏みとどまり、巨大な腕を振り回す。パースが違いすぎる所為でよけきれず、田賀某氏は吹っ飛ばされ壁に激突! カートゥーンみたいに人型の穴が壁に開くと、顔の潰れた死体が壁から落下してきた。グロい。


 ん? 後ろから近づいている人がいるが、あれは、さっきの傭兵の人か?


「とったーっ!」


 後ろから首にしがみ付き大きなナイフで首筋に突き立てんとする傭兵さん。しかし、


 ぽきん!


 ナイフは突き刺さらずあっさりと折れた。


「そ、そんなバカなっ! ぐぎゃっ!」


 あっさりと振りほどかれ、地面に転落すると、そのまま巨人がジャンプして踏み潰す。


 ぶちっ!


 内臓ごと潰された傭兵さんはあっさりと絶命した。


 何も出来ないまま3人も続けてやられるとは…… 


「ふん。ちょっとはやるかと思えば怒らせただけであったな。誰か【一つ目オーガ】を倒せる者はいないのか? 法王よ。どうやら此度の召喚ははずれだったようだな」


「む、むむ。せめて、僅かばかりでも経験を積む時間があれば……」


 魔王と法王の会話がこちらに漏れ聞こえる。


「俺が行く」


 嶋さんが苦虫を噛みしめたような顔で打って出ようとする。だが、さやかの治療を受けたとはいえ、まだ腕を繋げたばかり、疲労も色濃く、とても戦えるような状態じゃない。さやかも思いとどまる様説得しているが、これは俺が出張るしかないか?


(あいつに勝つにはどうしたら早い?)


『その心配は無用だろう。既に勝つつもりの者が出てきている』


 見ると、俺と同じ位の身長の男が、ミニスカートをはためかせ、巨人の前に立ちはだかっていた。


「まったく、見ちゃいられないわねぃ! ここは、あちしに任せて怪我人は大人しくしてなさいな」


 キックボクサーのMAKADOである。(読みはマカドー)


 中量級世界最強の魔裟斗の後を継ぎ、同階級最強の座をいつの間にかせしめていたおカマとして、強烈なキャラをアピールしている選手である。だが、その実力は本格派という枠を超えて他の選手が可哀想になる位のチート実力者だ。


 彼の武器は、明らかに異様と言える程の反応速度と、複雑怪奇な試合の組み立てで、更には身体能力の恩恵もあって、相手の心が折れるまで無数の連撃を撃ちながら相手を罠に落とすというえげつない方法で過去、自身は無傷のまま勝利を重ねてきた。


「さあ、憐れな巨大生物(お肉)をミンチにし立て上げるわよ~」


 背中(せな)に刻まれた「おかま(ウエイ)」の筆文字が何とも頼もしい。


 【一つ目オーガ】は無造作にMAKADOのフィールドに足を踏み入れた。が、それが間違いであった。照準の中に自ら入り込んだ愚かな獲物にMAKADOは一切の躊躇無しにローを叩き込む。


 パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパン!


 無数のローキックが叩きこまれると、堪らず【一つ目オーガ】は腕を振り回し応戦しようとする。しかし、振り上げた時には既に安全圏に逃げ込んでいるMAKADOは、再度踏み込むと、更にキックのスピードを上げる。見ると、【一つ目オーガ】のふくらはぎは、既に刀で斬りつけられた様に無数の傷だらけ、更には内出血により肌が黒く変色している。


「飛ばすわよ~」


 パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパン!


 更にスピードを上げるローの威力に遂に【一つ目オーガ】は膝を付く。まるで巨人の兵士が女王に膝を就くが如し。まぁ、相手はおカマであるが。


 MAKADOは、その就いた膝に飛び乗ると、【一つ目オーガ】の首筋に向けてキックを放つ。先程はナイフで傷付けるどころか、ナイフをへし折った異形の怪物だったが、キックによって裂かれた空気が、真空状態を作るや、その首筋が赤に染まった。


「結局、あちしの敵になる程強くはなかったわねぃ」


 そう独り言ちると、後ろで【一つ目オーガ】だった遺骸はドッシーン! と、大きな音を立てて崩れ落ちた。



 

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