始まり、始まり
この作品は不定期更新の極みです。
ちらっと見て行くだけでもありがたいです。
ある日、七人の少年少女が鼓動の音を聞いた。
トクン、トクン、というその音は、この世界の鼓動。
その日より、彼らは人ならざる力を発揮し始める。
ーーーーー異能。
各国の首脳部が結集した会議で、異能の少年少女たちはヨーロッパのとある研究所に隔離されることとなる。
そこでは「異能」の研究が進められた。そして、明らかな異端である彼らは「平和」を謳うヒトの手によってその小さな生命を断たれようとしていた。
結果。
ヒトは、ヨーロッパという大きな社会的有機体を失った。
ーーーーー異能による戦争。
七人の「異端者」による虐殺は、ヒトの予想に反して起きることは無かった。ただ、ヒトはヨーロッパという重要な身体の一部を犠牲にして「異能」の欠片を掴んだ。
どの国も競って異能の研究を推し進めた。様々な国家規模の思惑が錯綜する中で、「異端者」は忽然とその姿を消した。
ヒトはそれを軽視した。我々は既にチカラを手にしようとしている。そう、ヒトが人で無くなる程のチカラを。だから、軽視した。
目の前を覆う「暗幕」に気づくことなく、軽視したと思い込んだ。
某国が先陣を切ってヒトに異能を授ける手術を施した。それは、数年前まで「禁忌」とされた所業。「道徳」を騙るヒトによって禁じられた一つの手段。
人体実験。
各国が幾つもの命を犠牲にした末に、ようやく果実が生った。真っ赤な果実。
悪しき蛇によって導かれた先に実る、楽園の果実。
この日より、ヒトが人を超えるための計画が始まった。
ーーーーミュータント・プラン。
ヒトはそれを喜んで迎え入れた。
ヒトは、美しい花園に立つ一本の木から、次々に果実を捥ぎ取った。
そして、「人」の住む世界を離れた彼らはこう言う。
ーーーこれが、新たな世界か。
ヒトは自らの意思で果実を口にしては花園から去って行く。皆、「新たな世界」だけを見ていた。
「平和」を謳うヒトも、「道徳」を騙るヒトも、そこにはいない。
いるのは、ユメ見るヒト。
二度とは覚めない、「ユメ」を見る「ヒト」。
かつては異端と呼ばれた存在が世界に溢れかえった。
誰もが「暗幕」に気づくことなくユメを見ては嗤っている。
楽園に、ひっそりと一本の木が立っている。その枝には、たった一つだけ果実が生っている。
ーーーーー真っ赤な『果実』。
失楽園に気づかぬ「ヒト」が「ユメ」から覚めるのは、いつ?
「暗幕」に気づくとき?
新たな「ユメ」を見るとき?
それとも………
ーーーーー熟れた『果実』が、地に落ちるとき?