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とべないしょうねん。
とぶ、とぶ。
たかくとぶ。
音も景色も、色も速さもおいていく。
とぶ、とぶ。
たかくとぶ。
心も体も、想いも絆もすてていく。
何ももたずに、ひたすらとんで。
総てをすてて、ただとんで。
何もじゃまするものはない。
だからもっとたかくとべるはず。
何もおもたいものはない。
だからもっとたかくとべるはず。
でもどうしてだろう。
ボクのあしはじめんについたまま。
ちっともとんでなんかいない。
何がたりない?何がよけい?
もっとすてて、もっとおいて。
かるくなればとべるはず。
すてる、おいてく、すてる、おいてく。
何でもかんでもおきざりに。
何でもかんでもすてていって、ボクにはもう、なんにもない。
おもたいものは、なにもない。
でもどうして?やっぱりとべない。
わからなくって、わからなくって。
うつむき、みあげ、ふりむいて。
そして、きづいた。
ああ、そうか。
はねをすてたら、とべないや。
ただとびたかったしょうねんのお話。
しょうねんは少し、捨て過ぎてしまった。